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リーダーシップと心理的安全性

2023.06.12

多くの人がリーダーポジションに就くための訓練を受けずに、薬局長や主任・係長といった任を受け、その任に就いてからリーダーシップの必要性に気づくけど、いったいどう立ち振る舞うのがいいか、どうチームを引っ張っていけばいいか、そんな悩みを抱えている方が多いと思います。

今回は、リーダーシップについての理解を深め、チームのパフォーマンスを最大化するための大事な要素である心理的安全性について考えてみたいと思います。

【目次】

  1. リーダーとは
  2. 誰でもリーダーになる可能性がある
  3. リーダーシップを発揮するために
  4. 心理的安全性とは
  5. 心理的安全性を高めるために

リーダーとは

リーダーとは「ゴールにコミットする人」です。組織やプロジェクトのゴールビジョンを描き、方針を決定して時にはリスクを抱えつつもチームをゴールに導くのが役目です。

マネジャーという言葉も良く使われますが、マネジャーは「プロセスにコミットする人」です。ヒト、モノ、カネといったリソースを活用し、リスクを回避しながら、ゴールに進む舵取りをするのが役目です。

組織の中で、マネジャー職(管理職)の多くがリーダーの役目を担うので、実質的にはリーダーもプロセス管理を行いますが、ゴールへのコミットメントに責任を持ち、重要な意思決定を下すのがリーダーなのです。

 

誰でもリーダーになる可能性がある

身近な様々なところにリーダーは存在します。店舗のシフト管理だったり、大学の授業のグループワークの司会だったり、自治会の班長だったり、家族旅行で行き先を決めたり、食事をする場所を決めたりするのだってリーダーです。

リーダー的立場に就く機会は意外と多いので、職歴が浅いから、管理職向きじゃないから、リーダーなんてやったことないし・・・と思っている人でも無縁の話ではありません。

しかし、ほとんどの場合リーダーになるための訓練や準備が十分でないままにリーダーの任に就きます。そして自分が想像しているよりもそのタイミングが早いことがほとんどです。

 

リーダーシップを発揮するために

では、リーダーシップをどのようにはぐくみ、発揮したらよいのでしょうか?

まずはリーダーに要求される職務や責任範囲を明確にすることから始めてみてください。社内に職務分掌や権限規定などがあればそれを参照します。リーダーとしてどんな業務を担当し、どこまでの責任が発生し、どんな権限が与えられているかを確認するということです。

次に、あるべき姿を明確にすることです。リーダーに求められている役割、能力、経験、行動などを知ることが大事です。社内の人事評価制度などで定められている場合はそれを参照します。定められていない場合は、リーダーポジションに求められる人材像を社内で議論してみてください。

そしてここから先は、人それぞれ異なる要素になってきます。すなわちあなたのキャラクターによるということです。先頭に立ってみんなを引っ張る指示命令型リーダーシップかみんなを後ろから支えるサーバントリーダーシップか、自分の性格に合わせてリーダーシップのスタイルを選ぶことになります。

そのためにも“自分を知る”必要があります。トライ&エラーも必要でしょう。時間をかけて模索しながら自分らしいリーダーシップスタイルを確立していきます。

 

 

心理的安全性とは

組織行動学を研究するエドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義されています。この言葉を有名にしたのがGoogleです。同社は、社内でより成果をあげるチームに共通する要因が「心理的安全性」であることを突き止めました。自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発信できる環境を作ることができているチームほど、より良い成果をあげているということです。

 

心理的安全性を高めるために

一人一人の能力向上も大事ですが、チームワークを高めることで生産性・売上向上、リスク回避、離職防止などを期待できます。心理的安全性はチームワークを高める要因の一つです。リーダーが職場の心理的安全性を高めることで、リーダー自身がそのメリットを享受することができます。

 

心理的安全性を高めるためには以下のことに取り組むとよいとされています。

 

1)質問・相談しやすい環境作り

・「ほう・れん・そう」の機会を設定する。
・マニュアルを用意する(いろいろ聞いて申し訳ないという気持ちにさせない)。

2)発言の機会を均等に

・司会がメンバー全員に話を振る。
・最初/最後に一言ずつ発言する。

3)業務以外での会話

・他者に関心をもって、会話を増やす。
・飲み会や食事会を催す。

4)感謝を伝える

・発言してくれたことに感謝を伝える。
・サンクスカード、会議中での拍手など。

5)ミッションを明確に

・何のために心理的安全性を高めるのか・意思疎通を図るのか、その目的/ミッションを伝える。

 

表の内容を見てみると、特別な技術を要するものではなく、割と“ベタ”なことだとお感じになると思います。わざわざやるほどのことでもないという意識があるのか、この普通のことができていない職場がいかに多いかということです。

率先垂範でリーダーがまずは取り組んでみて、職場への浸透を図りましょう。この些細な取り組みの継続が心理的安全性を高め、みんなが気持ちよく働き、互いに貢献し合い、良いサービスを提供することで顧客から感謝され、仲間から感謝され、そしてもっとがんばろうと思う、そうした好循環を生み出すためにリーダーがやるべきことは、そんなに難易度の高い取り組みではないはずです。

 

 

今回はリーダーシップと心理的安全性についてお話をしました。

誰でも思いがけないタイミングでリーダーとなり、リーダーシップの発揮に悩み、自分がなんとかしなくてはとプレッシャーを感じて孤軍奮闘していたとしたら、このコラムがブレイクスルーのきっかけになってほしいと思います。

 

著者紹介

富澤 崇 株式会社ツールポックス代表取締役

1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士) 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。2017年に株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。北里大学客員准教授兼務。