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「医療クラークを活用した効率的な電子カルテ入力」

2023.07.03

医師の電子カルテ入力の負担を軽減する取組として、「医療クラーク」の配置に注目が集まっています。現在は約1/3の病院で配置されており、クリニックでも配置されるケースが増えてきました。そこで、今回は医療クラークを活用した効率的な電子カルテ入力について考えます。

【目次】

  1. 電子カルテの構造
  2. 開業時と患者増加時の違い
  3. 紙カルテとの大きな違い
  4. 役割分担の見直し
  5. 医療クラークの導入
  6. クラークによる算定業務の効率化


1.電子カルテの構造

クリニック向けの電子カルテは、基本的に電子カルテとレセコンが一体となって導入されます。紙カルテのように、医師が記載したカルテをもとに、医療事務が診療報酬に変換する作業が発生しないことを目指しています。

紙カルテの時代は医師と医療事務の間で明確な役割分担が存在していました。しかしながら、電子カルテは、経過欄(記事)とオーダー欄(コスト)に分かれ、オーダー欄に正しく入力しなければ、レセプトには正しく反映されません。紙カルテのころと比べて入力を負担に感じるのは、ここに原因があるのです。

医師は紙カルテのころは医療事務が担ってきた業務を電子カルテでは自らが行っているのです。つまり、カルテを書きながら頭の中で診療報酬点数に変換し、記録を行うという高度なことを行っているのです。

 

2.開業時と患者増加時の違い

開業当初は、患者もそれほど多くなく、電子カルテを入力する時間が十分に取れるため、それほど電子カルテの操作を負担には感じません。しかしながら、時間の経過とともに患者が増えるにつれて、十分に時間が取れなくなると、電子カルテの操作を負担に感じるようになるのです。

患者の少ないうちは、患者と患者の間の隙間時間が存在するため、この間にカルテ記載を行えば良かったのですが、患者数が増えれば隙間時間がほとんどなくなり、診察時間内にカルテ作成を終える必要が出てきます。このことが、電子カルテの入力を負担に感じる原因なのです。

 

3.紙カルテとの大きな違い

 診察をしながら電子カルテを入力する業務は、「診察」と「カルテ記載」の2つの業務を同時に行っているため、頭をとても使う作業です。また、電子カルテは「診療報酬の算定」という業務が加わり、3つの業務を同時に行う必要が生まれます。一方で、紙カルテは、「ながら作業」に向いており、診察とカルテ記載の2つの業務をこなすことができましたし、後で医療事務が診療報酬の算定業務を補っていることによって3つの作業を同時にこなすことができたのです。

 

4.役割分担の見直し

電子カルテは医師に負担が集中しがちです。そこで、2008年の厚労省通知「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」において、医師以外のスタッフによる電子カルテの代行入力が正式に認められました。その後、病院では「医師事務作業補助体制加算」という点数が新設され、医療クラークの配置が評価されるようになったのです。現在では、実に1/3の病院で配置が進められています。(無床診療では現時点では点数はつきません)

医師の指示のもと、看護師、医療事務など、医師以外のスタッフが電子カルテの操作を分担すれば、医師の負担は減少していくのです。

 

5.医療クラークの導入

 しかしながら、医療クラークは医師に代わって電子カルテ入力を担うため、一定のトレーニングが必要です。また、パソコンスキルも高くなければなりません。そこで、まずは問診内容や再診時の変化(残薬、前回との変化など)の入力、検査結果の転記、診療報酬上必要なコメント(医学管理料等)を依頼することから始めてはどうでしょうか。

医療クラークは、医師の隣で診療をサポートすることで、診療の流れを理解していき、薬や検査などを覚えるチャンスが得られます。その際、根気強く疾患や薬、検査の関係などを説明していくことで、医療クラークが成長していきます。徐々に慣れてきたら、カルテ作成、書類の作成と範囲を広げていけば良いのです。

結果として、医師は診察とカルテ記載という2つの業務を同時に行う必要がなくなり、診察に専念できる環境が作り出せるのです。

 

6.クラークによる算定業務の効率化

 病院では専門にトレーニングされたスタッフが業務を担うのですが、クリニックの場合はもともと医事業務を担当していたスタッフの配置転換が多く、診療報酬事務の知識を持っているという特性があります。この特性を生かすことで、レセプト点検を「診察中」または「診察終了直後」に行えるようになるのです。これは医師の隣で点検業務を行っているようなもので、算定ミスや算定漏れを減らすことが可能になるのです。

また、会計時にも受付スタッフによる会計前点検が行われるため、クラークと受付スタッフによる「2重チェック」の効果もあります。

診療報酬事務に詳しいスタッフが、電子カルテを代行入力するからこそできる運用です。実際にレセプト点検を診察時に実施することで、「病名漏れ」や「算定漏れ」が大幅になくなるという効果があり、月末月初のレセプト点検がほとんどなくなるという効果があります。