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会議の生産性アップ~会議ファシリテーションとは~

2023.07.10

 会社組織にいると必ずある“アレ”。特に管理職以上の階層になると、アレに割かれる時間のなんと多いことか。アレに途方もない時間を費やしたのに、結局実行されなかったり、鶴の一声でひっくり返されたり、決まったことに後から文句を言ったり、それ以前に遅刻したり、内職したり・・・。

ホントにアレって必要なんですか?と誰もが心の中で思ったことがあるはず。「会して議せず、議して決せず、決して行わず、行ってその責を取らず」と揶揄されるアレとは、そう、会議のことです。

 

「また、会議かぁ」と言いながら、一日にいくつもの会議をはしごして仕事をした気になっているそこの部長さん!(課長でも社長でもいいのですが)

御社の会議、本当に会議と呼べるものになっていますか?

 

今回は、会議の生産性を高めるためのコツと会議ファシリテーションについてお話しします。

【目次】

  1. 会議中は利益を生み出さない
  2. 生産性の高い会議
  3. 会議ファシリテーション
  4. ファシリテーターがいることのメリット
  5. ファシリテーションは特殊能力!?


1.会議中は利益を生み出さない

当たり前のことですが、会議は生産的活動ではないので、利益を生み出しません。むしろコストが発生しています。役職の高い人たちが数人集まって、1時間の会議をしたら、その労務費はいくらでしょうか?

重要な意思決定を行う、アイデアを出し合う、ルールを作る、交渉するなど、会議の果たす役目はとても重要です。しかし、それは会議が会議としてまっとうに機能してこそです。

生産性の低い会議はコストでしかありません。また、参加者の時間を奪う行為です。本来その時間で生み出されるほかの価値を奪っているわけです。

 

2.生産性の高い会議

2005年に「すごい会議」というタイトルの本が出版されたことを思い出しますが、会議のやり方を指南する書籍はいくつか存在するものの、そもそも会議のやり方を改めてみようという想いに至る人が少ないのか、生産性の高い会議に出くわす頻度は思いのほか低いというのが私の実感です。

では、生産性の高い良い会議とはどういう会議をいうのか?会議のあるべき姿がわかれば、自社との比較ができますし、そのあるべき姿を目指すことができますので、まずは良い会議とは何かから見ていきましょう。

 

・遅刻せず始まり、予定通りに終わる。

・あらかじめレジメが用意され、会議の目的、目標、議案が共有されている。

・必要最低限の参加者で構成されている。

・参加者の役割が明確になっている。

・進行役(ファシリテーター)がいる。

・議論がその場で可視化されている。

・決定したいのか、アイデアがほしいのか、確認したいのかなど、議案の目的が明確になっている。

・誰もが安心して発言できている。発言の平等性が確保されている。

・予定調和ではなく、議論の結果に基づいて実行することが担保されている。

 

こういった条件がそろっていると会議の生産性を高めることができます。

では、具体的にどう実行すれば会議の生産性を高められるのか?今回は会議ファシリテーションについて重点的にお話しします。

 

3.会議ファシリテーション

ファシリテーションとは「促進する」という意味です。会議や話し合いの場でファシリテーションする人のことをファシリテーターと呼びます。

すなわち司会進行役です。ただし、意思決定者ではありません。したがって会議は、意思決定者(リーダー)、司会(ファシリテーター)、参加者というメンバーで構成されます。

ファシリテーターは話し合いのプロセスを管理する人であり、持論を展開したり、話し合いの結果を保証したり、A案かB案かを決定したりするわけではありません。私は長年会議ファシリテーションの仕事をしてきましたが、自分の意見を言いたいのを堪える忍耐力が身に付きました()

 

会議ファシリテーターには以下のような役割があります。

会議のデザイン

・会議の目的、目標の確認

・適切なメンバー選定の支援

・議案の選定と各議案のゴール設定

・時間配分の検討

会議の準備

・メンバーとの日程調整、場所の確保

・レジメ作成、タイムテーブル作成

・メンバーへの事前通達

・休憩時のお茶菓子の用意

会議の当日

・司会進行

・アイスブレイク

・板書(議論の可視化)

・議論を円滑に進めるためのフレークワークの提供

・タイムマネジメント

会議終了後

・議事録の作成

・メンバーのアクションや宿題の提示、進捗確認

・次回に向けた作戦会議

 

4.ファシリテーターがいることのメリット

上述したような役目を担ってくれるファシリテーターがいる会議といない会議を想像したら、メリットは容易に思いつくと思います。

特に重要なのが「デザイン」と「準備」です。何事も準備が8割(6割でしたっけ?)といわれるように、ファシリテーターが会議を設計し、段取りしてくれることで当日がとてもスムーズに進行します。

レジメに沿って進行し、議論を可視化してくれるので、議論が迷子になることもなく、短時間で進みます。

また、ファシリテーターが発言の機会を与えてくれるので、平等に安心して発言することができます。時には声の大きなメンバーから発言者を守ってくれることがあります(ファシリテーターが審判のような役目を果たします)。

 

5.ファシリテーションは特殊能力!?

特殊能力と言ってしまうと身も蓋もありません。もちろん向き不向きはありますが、誰もが訓練次第ではファシリテーターになれると思います。

ファシリテーションを学ぶにはビジネス書やセミナー、Eラーニングなどがありますので、誰でも訓練は気軽に始められます。お勧めの書籍は、「ザ・ファシリテーター」、お勧めのセミナーは「日本ファシリテーション協会」です。

 

【おまけ】

前述したファシリテーターの役割の中で「板書(議論の可視化)」がありますが、ホワイトボードに文字を書くだけではなく、イラストなどを駆使してグラフィカルに表現することがあります。それを“ファシリテーショングラフィック(略してファシグラ)”と言っています。

絵心に自信のある方はグラフィッカーとして、ファシリテーションに挑戦してみてください。

 

“会議を仕切る”のをすすんでやりたい人はあまりいないでしょう。だからこそ、逆に言えばチャンスです。営業、製造、研究、人事、経理、広報などの縦割りの専門スキルではなく、ファシリテーションというどの職種でも活用できる横串のスキルを身につけることで、自身のキャリアも広がるでしょう。

 

 

今回は会議ファシリテーションについてお話をしました。

やり方次第では会議の生産性を高められるんだ、という気づきが得られましたでしょうか。少し勇気を出して、ホワイトボードの前に立って、みんなの発言を書き留めるところから始めてみてください。たったそれだけでも普段当たり前にやっている会議やミーティングが違った景色に見えてくると思います。

 

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私が担当する1年間のコラム連載がこれにて終了となります。ご高覧いただきありがとうございました。多岐にわたるテーマで広く浅くお届けしましたが、コラムを読んですぐに実践とまで行かなくても、皆様の行動変容のきっかけになれば幸いです。話の続きを聞きたい、もっと深く知りたい、改善の手伝いをしてほしいといったご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

著者紹介

富澤 崇 株式会社ツールポックス代表取締役

1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士) 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。2017年に株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。北里大学客員准教授兼務。