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自動精算機の活用による精算業務効率化

2023.07.10

わが国の「少子高齢化」並びに「働き方改革」の影響から、クリニックでも自動精算機の導入が注目されています。自動精算機の活用によって精算業務は効率化できるのでしょうか。

【目次】

  1. 労働環境の変化の背景
  2. 生産性向上のためのDX
  3. クリニックでも自動精算機を導入する時代
  4. 会計・精算業務
  5. 自動精算機とセミセルフレジの違い
  6. 自動精算機による業務効率化
  7. 自動精算機の導入の注意点


1.労働環境の変化の背景

わが国で急速に進む「少子高齢化」の影響から、クリニックでも人手不足が深刻な問題になっています。また、2019年ごろから政府主導のもと「働き方改革関連法」が順次施行されており、残業時間の上限規定や有給休暇の年間5日間の取得、適切なインターバルの確保、非正規社員と正規社員の待遇差の是正などへの対応が必要になっています。いまわが国の労働環境は大きく変わろうとしているのです。

 

2.生産性向上のためのDX

そのような中、クリニックでも生産性向上が重要になってきています。「生産性」とは、アウトプット(売上)をインプット(費用)で割った値で表され、その値が高いほど生産性が高いことになります。高い生産性を得るためには売上を増やすか、費用を減らすかを検討する必要があり、売上がなかなか上げにくい現状では、費用を減らすしかなく、業務効率化をしてコストダウンを図ろうとする考えが医療の世界でも浸透しています。

クリニックのコスト構造を見ると、人件費が5割~6割を占めており、この人件費を下げることが最も手っ取り早く生産性を向上させる方法と考えられ、業務効率化の検討が進められてきたわけです。効率化の具体的な方法としては、DX(デジタルツールを活用した業務変革)に取り組むクリニックが増えているのです。

 

3.クリニックでも自動精算機を導入する時代

近年、人手不足や働き方改革の影響から、スーパーやコンビニエンスストア、ホテル、飲食店など様々な業種で自動精算機やセミセルフレジの導入が進んでいます。この流れは医療界にも来ており、大規模病院では当然のこと、中小規模病院やクリニックにも及ぼうとしています。クリニックでも導入検討が始まっている理由は、機械の小型化が進み、価格も下がってきていることで、クリニックでも導入できる環境がそろったことが大きいと考えます。

 

4.会計・精算業務

クリニックにおける会計・精算業務は、電子カルテあるいはレセコンで診療報酬を計算し、「自己負担金」を患者から徴収する業務となります。長らくこの業務は電子カルテから印刷された領収書をもとに、レジや電卓で釣銭の計算が行われていました。この精算業務は、アナログな時代はレジの打ち間違いや釣銭の渡し間違い、レジ内の合計額の間違いなどが度々発生していました。これらの業務が「自動精算機」や「セミセルフレジ」を導入することで、効率化が実現できると考えられているのです。

 

5.自動精算機とセミセルフレジの違い

精算業務の効率化を検討する際、まず整理しておくべきは、「自動精算機」と「セミセルフレジ」の違いを理解することです。ちなみに、「セルフレジ」は患者自らが精算業務を完結する意味で使用されており、「自動精算機」と「セルフレジ」は同様の意味で使用されていると考えて良いと思います。

「自動精算機」は、スタッフの配置は不要となります。それに対して、「セミセルフレジ」は、スタッフが一部サポートを必要とすることから、「セミ」という言葉がついているのです。精算業務において、スタッフの配置なく患者自身で完結させたいと考えるならば「自動精算機」を選び、スタッフを配置し、患者と一緒に精算業務を行う場合は、「セミセルフレジ」を選ぶことになります。セミセルフレジは人員配置が必要である一方で、自動精算機に比べて安価であり、スタッフを配置することで、物販や返金・未収金の対応が柔軟に行えるという利点があります。つまり、完全自動化を目指すのか、スタッフを配置し柔軟な体制を目指すのかが違いとなります。

 

6.自動精算機による業務効率化

自動精算機を導入することで、クリニックは3つの業務効率化を実現することが可能です。1つ目は金銭の受け渡しが自動化されることにより釣銭の私間違いがなくなります。2つ目は、精算業務に係るスタッフの削減が図れます。3つ目は、レジの打ち間違いがなくなり、締め作業がほぼ自動化され、残業時間が大幅に短縮されるのです。人による精算業務によってミスがたびたび発生していたものが、自動精算機によって自動化されることでミスの削減と時間短縮が実現するのです。

以下にレジと自動精算機の業務の違いをまとめておきましたので参考になさってください。

7.自動精算機の導入の注意点

しかしながら、自動精算機の導入で業務効率化が上手くいかないケースもあります。それは自動精算機の操作に慣れない患者によって、長蛇の列ができてしまうケースや、精算せずに帰ってしまう患者がいたり、操作を間違えて二重に支払ってしまったりするケースがあるのです。

これらの問題は、自動精算機やセミセルフレジがメーカーごとに機能が異なることや、設置場所が適切でなかったりすることで発生しています。結局、人員を新たに配置したり、防犯カメラを設置しなくてはならなかったり、と新たな出費が必要になることもあるので製品選びは慎重に行う必要があります。