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「クリニックにおけるレセプトチェックと個別指導」(後編)

2023.04.28

レセプトの審査は、レセプトのみで判断されますが、個別指導ではカルテとレセプトの整合性が確認されます。コロナ禍においては、指導は感染対策の観点から自粛されていましたが、アフターコロナを迎える今、例年並みの指導になることが予想されます。

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 【目次】

  1. レセプト審査の流れ
  2. レセプト点検のチェックポイント
  3. 個別指導はカルテとレセプトの整合性が確認される
  4. 指導・監査等の実施状況
  5. 個別指導の対策


1.レセプト審査の流れ

 クリニックができるだけ返戻・査定のないレセプトを作るために毎月、「レセプト点検」が行われています。この点検については、審査支払機関のチェックにおいて「問題ない」と判断してもらうためにも、審査支払機関がチェックするポイントに合わせて行う方法が効率的です。

 審査支払機関では、医療機関からのレセプト提出時に、受付・事務点検チェックを行い、正しい形式のレセプトかどうかを確認します。第1次チェックとしては、「コンピュータによるチェック」が行われ、診療報酬に関する告示や通知等の内容に合致しているかが確認されます。次に「職員による事前確認」が行われ、コンピュータチェックの結果やコンピュータでは確認できない点について審査委員に判断を求めるかどうかを目視で確認されます。そして、最終的に「審査委員による審査」で、医学的妥当性が個別に確認される流れとなります。近年、コンピュータチェックの比率が高まっており、最終的には9割に達する予定です。

クリニックも、その流れを踏まえるならば、1次点検を「レセプト点検ソフト」で行い、そこで指摘された内容をスタッフが目視でチェックをし、最終的に医師が確認するという形式をとる方法が効率的であると考えます。

2.レセプト点検のチェックポイント

 点検を効率的に進めるために、レセプトのどの部分が主にチェックされるのかを理解しておく必要があります。例えば、初診・再診料については、初診料を算定するルールに則って適切に算定されるかが確認されるため、病名の転記との関係が確認されることになります。また、医学管理料については、「月に〇回」といったルールに対して、適切な算定回数であるかのチェックが行われます。さらに、投薬については、適応症が適切か、過剰投与がないか、重複投与がないか、増量時の症状詳記があるかといった点がチェックされることになります。以下に項目ごとに主にチェックされる内容についてまとめましたので参考になさってください。

3.個別指導はカルテとレセプトの整合性が確認される

 レセプト審査は、レセプトのみのチェックのため、カルテとの確認は行われません。しかしながら、「個別指導」ではカルテとレセプトの整合性が確認されるため、カルテの記載もしっかりと行っていく必要があります。

 個別指導について、「保険医療機関は、保険診療に関して厚生労働大臣又は都道府県知事の指導を受けることが義務付けられています。指導とは、行政庁(地方厚生局など)が行うもので、あくまで保険診療の取扱い、診療報酬請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とした行政指導のこと」と定義されています。

 個別指導が行われる条件としては、新規にクリニックを立ち上げるか、承継した場合は、開業後概ね6ヶ月を経過して時点で行われます。

 既存のクリニックの場合は、患者や保険者・審査機関からの情報提供②高点数(1枚当たり平均点数)③前回再指導とされた医療機関が対象となります。

個別指導の結果は「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4区分で、請求に誤りがあれば「改善報告書の提出」や「自主返還」が求められることになります。また、正当な理由なく拒否した場合は「監査」となります。

 

4.指導・監査等の実施状況

厚労省の「令和3年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について」によると、個別指導が1,050件(対前年度比747件減)、新規個別指導が4,453件(対前年度比1,538件増)、適時調査が33件(対前年度比28件増)、監査が51件(対前年度比5件増)となっています。

今回の指導監査の傾向として、「令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から実施を見合わせていた新規個別指導については、十分な感染防止対策を講じた上で令和2年度の未実施分も含めて実施することとしたため実施件数は増加しているが、個別指導については、一部の指導が実施できなかったため実施件数は減少している」とされています。

今後は新型コロナが5類になり、収束に向かっている現状では、個別指導の件数は通常レベルまで増加することが予想されます。

 

5.個別指導の対策

 個別指導や新規指導についてクリニックが対策を行う際に参考となるのが、厚労省の「保険診療の理解のために(医科)令和四年版」です。この資料は、個別指導においてチェックするポイントをまとめたマニュアルのようなものです。

その中で、「診療録(カルテ)は、診療経過の記録であると同時に、診療報酬請求の根拠でもある。診療事実に基づいて必要事項を適切に記載していなければ、不正請求の疑いを招くおそれがある」と書かれています。カルテの記載がなくレセプトにのっている項目について重点的に確認されることになります。

また、「病名」についても、「診断の都度、医学的に妥当適切な傷病名を、診療録に記載する。いわゆるレセプト病名を付けるのではなく、必要があれば症状詳記等で説明を補うようにする」としており、レセプトを通すことを目的に付けられた病名が重点的に確認されることになります。

さらに、「医学管理料」については、「指導内容、治療計画等の診療録への記載など、算定要件を満たしていなければ算定できない」とされており、診療報酬点数をさんていするための要件として、カルテの記載を求めている項目が確認されることになります。

 これ以外の項目についても、詳細にカルテの記載について書かれているため、必ず事前に目を通していただきたい資料です。指導・審査の担当官がカルテを見て、意図のわかるカルテ記載を心がける必要があるのです。

 

参考資料:保険診療の理解のために(医科)令和四年版(厚労省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000962383.pdf