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「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」の解説

2023.08.14

【目次】


意見交換会の設置の背景

令和6年(2024)度は、6年に1度の診療報酬および介護報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定になります。また、翌2025年には団塊の世代が75歳以上となるため、医療介護総合確保方針、医療計画、介護保険事業(支援)計画、医療保険制度改革など様々な政策の目標年とされてきました。医療と介護に関わる関連制度の一体改革にとって大きな節目であることから、今後の医療および介護サービスの提供体制の確保に向け、様々な視点からの検討が重要と考えられています。

 そこで、診療報酬を担当する「中央社会保険医療協議会総会」と介護報酬を担当する「社会保障審議会介護給付費分科会」において、診療報酬と介護報酬等との連携・調整をより一層進める観点から、両会議の委員のうち、検討項目に主に関係する委員で意見交換を行う場である「令和6年度の同時改定に向けた意見交換会」を設けられることになりました。

改定の具体的な検討に入る前に、地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携リハビリテーション・口腔・栄養要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療高齢者施設・障害者施設等における医療認知症人生の最終段階における医療・介護訪問看護薬剤管理その他について3回に渡り検討が行われています。

 

地域包括ケアのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携

「地域包括ケアのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携」では、あるべき連携の姿とは、必要な情報の一方向的な提供や閲覧だけでなく、相互のコミュニケーションを深め、現状、課題、目標、計画などを共有しながら、患者/利用者、家族とも同じ方向に向かい、より質の高い医療・介護の実現につなげることとされました。また、情報提供の仕組みとして、ホームヘルパーから介護支援専門員、主治医へ報告する仕組みはできているものの、主治医からも発信できるようにすることで双方向に行っていく必要があるとしています。さらに、医療において「生活」に配慮した質の高い医療の視点が足りておらず、生活機能の情報収集が少ないのではないかとの指摘がありました。

医療・介護のDX(デジタル・トランスフォーメーション)についても、DXの目的は業務や費用負担軽減のためでもあり、現場の負担が増大し支障を来すようでは本末転倒とし、DXの推進が目的ではなく、サービスの質の向上や最適化・効率化のツールとしてDXを活用することが重要との意見がありました。また、介護DXは、医療DXの後をついていくのではなく同時に検討を進めるべきとの指摘がありました。

障害福祉サービスにおいても医療ニーズが非常に高まっているとし、体制整備も含め医療と福祉の連携は喫緊の課題であり、口腔健康管理や歯科医療の提供、薬剤管理も同様に医療と障害福祉サービスの連携が必要とされました。具体的な評価については、既に共同指導や情報提供の評価は多数あるため、一つ一つの連携を評価するというよりも、全体の枠組みとしてどのように連携を担保するのかが重要と、評価の在り方に言及しています。

 「主治医と介護支援専門員の連携」については、介護支援専門員は既に利用者の様々な情報を持っており、その情報に医療の情報等を適切に活かすことで、より合理的なケアマネジメントができるとしています。情報伝達には、ICTの活用は有効であり、多忙ななか連携を促すためには、医療機関側は「連携室」が窓口になるとスムーズに進むのではないかとしています。ケアマネジャーの資質についても、医療的な知識を持つことは大切だが、それよりも主治医との連携をするほうがさらに重要と指摘。具体的には、主治医意見書で医学的管理の必要性の項目にチェックをしても、ケアプランに反映されていないという意見も多く、特にリハビリテーションの重要性は、もう少し認識を高める必要があるとしています。

 

リハビリテーション・口腔・栄養

 「リハビリテーション・口腔・栄養」は多職種が連携し、的確に対象者を把握し、速やかに評価や介入を行える体制を構築することが重要であるため、患者の経過や全身状態を継続的に観察している看護職がアセスメントした情報を多職種と共有し、早期の対応につなげるという体制構築が重要としています。

令和3(2021)年度介護報酬改定で示されたリハビリ、口腔管理、栄養管理に係る一体的な計画書は、医療でも活用が可能だとし、多職種による計画作成を後押しする仕組みが必要としています。また多職種連携のために、目標を共有することは理解できるが、誰が中心となって全体の進捗を管理するのか明確にすることも重要と指摘されました。

「リハビリテーション」については、急性期・回復期と生活期の円滑な移行について、フェーズに応じてプログラム内容を変化させていくための仕組みが必要とし、医療機関で完結するのではなく、生活期でさらなるQOL向上を目指すために、急性期・回復期では何をするべきかという視点が医療側に求められると指摘。医療側のリハビリ計画が、介護事業者と十分に情報共有されていないことは問題であり、計画書を介護事業者に提供した場合の評価が診療報酬としては存在しているものの、情報提供を評価するという方法では改善が難しいのではないかとしています。

「栄養」については、潜在的な低栄養の高齢者が多いことが課題であり、踏み込んだ対策が必要とし、医療機関や介護保険施設では管理栄養士や多職種による栄養管理が行われているが、退院・退所後および在宅での栄養・食生活支援を行う際の栄養士のサポートが必要としています。

 

認知症

 「認知症」については、必要な医療が受けられないことはあってはならず、その人を支える尊厳あるケアを普及していくべきとし、早期の気づき、早期対応、重度化予防には多職種連携による連携が重要としています。また、「認知症初期集中支援」が機能的に働くためには、患者の生活背景まで知っている「かかりつけ医の対応」が重要とし、研修修了者やサポート医は連携し、積極的に地域で役割を果たすべきとしています。

 

訪問看護

 「訪問看護」については、安定した24時間のサービス提供体制の構築・強化が急務であり、退院後早期や医療ニーズが高い方の居宅での療養を支援の対応力と入院前後の医療機関との連携体制の強化、情報共有の基盤整備も重要としています。24時間の対応は負担が大きいことから、夜間等対応のさらなる評価や複数事業所が連携し24時間対応体制を確保するための方策の検討を求めています。

 医療と介護の制度上の問題として、ターミナル期などで保険の適用が介護保険から医療保険に移行したことで加算の要件を満たさなくなる場合や、事業所の体制に関して介護保険と医療保険で要件が異なる場合があると指摘。重度者の医療ニーズ対応や看取りを実施する事業所に対する評価に関し、同時改定に向けて整理・検討が必要としています。

 

まとめ

 意見交換会では、医療と介護の同時改定に向けて、医療・介護のスムーズな情報連携、協力関係を進めるための評価を求める声が多くありました。情報連携については、一方通行ではなく双方向で行うことが重要であり、その方法についてもICTなどの活用が重要とされました。特に介護DXについては、医療DXの後追いではなく、同時並行で進めるべきとの指摘がありました。

また、医療保険と介護保険の制度上の問題点などについても改善を求める声があり、今後は中央社会保険医療協議会総会と社会保障審議会介護給付費分科会のそれぞれの会議で検討が行われることになります。