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【特集】令和6年度診療報酬改定  「医療DX」

2023.08.28

8月2日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では「医療DX」についての議論が行われました。まず、62日に医療DX推進本部でまとめられた「医療DXの推進に関する工程表」が示され、説明が行われました。

【目次】

  1. 全国医療情報プラットフォーム
  2. 診療報酬改定DX
  3. 診療報酬改定の施行時期の変更
  4. 後ろ倒しは6月1日、経過措置は9月末で調整

1.全国医療情報プラットフォーム

同工程表において「全国医療情報プラットフォーム」に関し、2024年度中の電子処方箋の普及に努めるとともに、電子カルテ情報共有サービス (仮称)を構築し、共有する情報を拡大するとしています。

また、オンライン資格確認の今後の範囲拡大として、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療、地方単独の医療費助成などの情報を順次マイナンバーカードと紐付けを行っていくとともに、次の感染症危機に対しても対応を進めるとしています。

 

2.診療報酬改定DX

「診療報酬改定DX」については、まず2024年度に医療機関等の電子カルテやレセコンの共通言語となるマスタ及びそれを活用した「電子点数表」を改善・提供して共通コストを削減していくとしています。次に、2026年度には、「共通算定モジュール」を本格的に提供し、共通算定モジュール等を実装した「標準型レセコン」や「標準型電子カルテ」の提供により、医療機関等のシステムを抜本的に改革し、医療機関等の間接コストを極小化するとしています。

同工程表によると、わが国の情報共有基盤として、「全国医療情報プラットフォーム」の構築が進められ、情報の標準化、効率化のために「標準型レセコン」や「標準型電子カルテ」を提供していくことが想定されています。

 

3.診療報酬改定の施行時期の変更

また、診療報酬改定の期間が短いために改定作業の負担が大きいことが課題として挙げられており、「施行時期の後ろ倒し」について、実施年度及び施行時期に関して中医協で議論が進められています。

これまでの診療報酬改定のスケジュールでは、2月初旬に答申が行われ、3月初旬に告示、4月に施行、5月に初回請求とされてきました。そのため、改定期間は実質2カ月~3カ月と短く、電子カルテやレセコンベンダの改定作業並びに、医療機関・薬局等の改定作業が逼迫し、大きな負担がかかっているとされています。

そこで、今後は「施行の時期を後ろ倒し」と「共通算定モジュールの導入」により、業務負担の平準化や効率化が図れるのではないかと考えられているのです。

 この日の論点としては、以下の2つの内容が示されています。

(1)   診療報酬改定DXの推進に向け、医療機関・薬局等やベンダの集中的な業務負荷を平準化するため、令和6年度診療報酬改定より施行時期を61日施行とすることとしてはどうか。

(2)   薬価改定の施行に関しては例年通り41日に改定とすることとしてはどうか。

 

出典:中央社会保険医療協議会総会(2023.8.2,厚労省)

 

4.後ろ倒しは61日、経過措置は9月末で調整

 「診療報酬改定DX」を進める上で、従来は電子カルテやレセコンベンダが担ってきた業務を、2026年ごろに政府が共通算定モジュールとして提供する形に変更することが検討されています。そこで、その前にまずは十分な改定期間(開発更新期間)を確保するために、2024年度改定で、施行時期の変更を行おうと考えています。現時点では、61日と2カ月の後ろ倒しが想定されていますが、「6月施行の場合、経過措置は9月末を基本とし、年度内の検証調査が実施可能」とさらに後ろ倒しする可能性が含まれています。どちらにしても、改定時期の変更が2024年度改定よりスタートすることは、今後の医療DXの工程を鑑み、順調に課題をクリアしていくためにも必須と考えます。

 一方、薬価改定については、「医療現場において、改定後半年程度の価格交渉期間が必要であり、毎年薬価調査を実施し、翌年度に薬価改定を行うサイクルを前提とすれば、4月に施行しなければ、薬価制度の根幹を揺るがすことになりかねない」と診療報酬と薬価は別々に改定する必要性があるとしています。また、そもそも薬価収載はほぼ毎月行われており、「4月改定を動かせば、全体のバランスも崩れる懸念がある」としています。薬価のシステム改修は、4月施行でも十分対応が可能であると考えられているのです。