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医師の「働き方改革」の影響

2023.08.28

2019年からわが国では「働き方改革関連法」が順次施行され、時間外労働の上限規制や、5日間の有給休暇の取得、適切なインターバルの確保などに対応する必要があり、労働環境が劇的な変化しています。また、働き方改革が順調に進んだ背景として、新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅ワークが推奨されたことも大きく影響していると思われます。

そして、20244月からは、これまで働き方改革の対象から除外されていた「医師に対する時間外労働の上限規制」の適用が開始されます。

【目次】

  1. 医師の時間外労働の上限規制とは?
  2. 健康管理措置
  3. 医療従事者の働き方改革に係る取組への評価
  4. タスクシェア・タスクシフトに対する評価
  5. 令和6年度改定に向けての論点


1.医師の時間外労働の上限規制とは? 

 「医師に対する時間外労働の上限規制」については、状況に応じて、A水準、B水準、C水準と3つの水準に分けられています。

 

A水準… 診療従事勤務医に2024年度以降適用される水準。年960時間以下/月100時間未満(休日労働含む)。

B水準【地域医療暫定特例水準】…救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関。年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)

C水準【集中的技能向上水準】…初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師。年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)。

 

B水準およびC水準は、都道府県知事の指定が必要となりますので、事前に申請を行わなくはなりません。また、これらの措置は暫定的なものであり、2035年までにはさらなる残業時間の短縮が必要になります。

 

2.健康管理措置

また、令和3(2021)年改正医療法において、長時間労働の医師に対し医療機関が講ずべき健康確保措置の整備等が定められ、2024年4月1日に向け段階的に施行されています。具体的には、やむを得ず上限規制を超える場合は、医療機関の管理者による健康管理のための面接指導が必要となるのです。面接対象は、「1か月の時間外・休日労働が100 時間以上」となることが見込まれる医師です。実施時期としては、BC水準であれば、基準に達するまでの間に実施。A水準であれば、疲労の蓄積が認められない場合は100時間以上となった後に実施することで構わないとされています。

 

3.医療従事者の働き方改革に係る取組への評価

 医療従事者の働き方改革に関してはこれまでの診療報酬上の評価が行われています。

平成302018)年度の診療報酬改定で、病院勤務の医療従事者の勤務環境改善の取組がさらに進むよう、「総合入院体制加算」の要件となっている病院勤務医の負担軽減等の体制について、対象を病院に勤務する医療従事者全体に拡大し、取組内容が整理されました。

また、令和2(2020)年度の診療報酬改定で、地域医療の確保を図る観点から、過酷な勤務環境となっている地域の救急医療体制において一定の実績を有する医療機関について、適切な労務管理等を実施することを前提に、入院医療の提供を評価した「地域医療体制確保加算」が新設されています。令和4(2022)年度改定においては施設基準の見直しが行われています。厚生労働省の調査によると、同加算を算定している医療機関では、時間外労働の時間が月155時間(年1,860時間相当)以上の医師はごくわずかであるものの、時間外労働時間が月80時間(年960時間相当)以上の医師の割合は、2020年から2022年にかけて増加しているとしています。

 

4.タスクシェア・タスクシフトに対する評価

 医師の事務作業の負担を軽減する観点から、タスクシフトが有効であるとし、医療クラークの配置する病院の評価として、平成202008)年度改定において、「医師事務作業補助体制加算」が新設され、その後順次評価の拡大・充実が図られています。

また、特定行為研修修了者である看護師の配置及び活用の評価についても充実が図られています。

さらに、看護師の負担軽減を図るため、平成222010)年度改定から、看護補助者の配置や夜間の看護体制を充実することに対して評価が行われています。

 

5.令和6年度改定に向けての論点

 令和62024)年度改定に向けては、614日の中央社会保険医療協議会総会で議論が始まっており、以下の論点が示されています。

2024年4月から医師についての時間外労働の上限規制が適用され、働き方改革に向けた継続的な取り組みが求められる中、これまでの医師をはじめとした医療従事者の働き方改革の取組や、これまでの診療報酬上の対応を踏まえ、働き方改革の推進に対する診療報酬の評価の在り方について、どのように考えるか。

 20244月から始まる医師の「時間外労働の上限規制」により、病院および診療所は、勤務医の労働時間の短縮の取組を行っていく必要があり、医師の勤怠管理体制の整備やICTを活用した業務の効率化、他業種へのタスクシフトなどを進める必要があるのです。

(出典)中央社会保険医療協議会 総会(6/14,厚労省)