• 調剤
  • #薬局経営
  • #薬局DX

薬局における機械化・DX化と薬剤師業務

2023.09.11

講演採録「薬局における機械化・DX化と薬剤師業務」

10回コミュニティファーマシーフォーラム「未来薬局×ロボット調剤」より

一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会(吉岡ゆうこ代表理事)が主催する第10回コミュニティファーマシーフォーラム(723日開催)で行なわれた演題の中から、本稿では、イイジマ薬局・木町薬局 開設者 飯島裕也氏による基調講演「薬局における機械化・DX化と薬剤師業務」を紹介する。

【目次】

  1. かかりつけ薬局を持つのが当たり前という地域
  2. 2021年にロボットの導入
  3. 機械化とともに薬局の機能を高めた
  4. 誕生から終末期すべてのライフステージに関わることができる薬剤師の在り方
  5. 社会的価値のある薬局・薬剤師を目指して


1.かかりつけ薬局を持つのが当たり前という地域

 

イイジマ薬局は高齢化が進む長野県上田市の薬局で、170以上の医療機関から処方箋を受け付けている。かかりつけ薬局を持つという意識が根付いている地域であり、住民は「自分たちに何を提供してくれるのか」という観点で薬局を選択している。上田市のほぼすべての薬局が処方箋調剤の他に、一般用医薬品、衛生材料、雑貨を取り扱っている。受け付けている医療機関の数に伴って約3,000品目の医療用医薬品を取り扱う必要があるため機械化を検討した。

 

2.2021年にロボットの導入

 

イイジマ薬局では2021年に2つのソリューションを導入した。1つが自動払出機のVmax、もう1つがVmaxの拡張機能であるディスプレイのVmotion(いずれも日本ベクトンディッキンソン社製)。

VmaxOTC医薬品・医療用医薬品の自動払出が24時間可能で、ロットや期限、在庫の管理も行えるロボットである。管理業務のデジタル化により、非薬剤師でも可能な業務はタスクシフトしている。Vmaxで管理することで医薬品にほこりがつかない、箱が日焼けして色落ちしないなどのメリットもあり、さらに今後は地域住民が購入したOTC医薬品の追跡も行い一元管理につなげたいと展望を述べた。

Vmotionは薬局の相談カウンターに設置しており、OTC医薬品の効能・効果・成分の視覚的な説明が可能で、2枚のディスプレイを並べることで比較も容易となった。外国の薬局では吸入デバイスの使用方法をVmotionで説明しているという例も紹介した。

 

3.機械化とともに薬局の機能を高めた

 

機械化と同時に、無菌室・ハザード室・個室を設置したり、災害時に備えて非常電源を用意して冷所保管や電子薬歴に緊急時も対応できるようにしたりと薬局の機能を向上させた。

また、カメラとマイク内蔵でWeb会議も可能なスマートグラスを業務に活用している。導入のきっかけは、コロナ禍で県外に住む家族と会うのが困難になったという患者の声を聞き、スマートグラスを使って会話できる機会を設けたことだという。現在は在宅訪問時に薬剤師がスマートグラスを装着して、その場で他職種のスタッフから指示を受けたり、申し送りをしたりと活用している。その他にも、非薬剤師スタッフが患者宅へ薬のお届けに伺った際に専門的な相談を受けた場合でも、スマートグラスで薬局と繋ぎすぐに解決できている。

 

4.誕生から終末期すべてのライフステージに関わることができる薬剤師の在り方

 

薬局は医療保険や介護保険の範囲内でサービスや物品を提供しているが、今後は一般用医薬品・衛生用品・ヘルスケア用品・食品・生活雑貨など保険外のサービス提供も重要であり、どんなサービスを提供して、どのように収益化するかが課題となる。

そして、ライフステージによってかかりつけの医師は変わっていくが、かかりつけの薬局は誕生から終末期までずっと変わらないとして、そんな薬剤師だからこそできることは何かを考える必要がある。一般的には、患者は医療機関を受診した後に処方箋を持って薬局に来局する。ところがイイジマ薬局ではまず薬局へ相談に来て、薬剤師が一般用医薬品で治療可能か、受診勧奨かを判断して患者に伝えるルートが確立している。今後地域住民の早期発見・早期治療につなげるためにこの流れが重要であるとした。

医薬分業推進の流れの中で、薬剤師が町の科学者から調剤偏重に変わってしまい、OTCの知識や相談対応力の低下が副作用として起こってしまった。また対応力はあっても、処方箋が無いと入りづらい雰囲気の薬局であれば、患者や地域住民のファーストアクセスが薬局になることは難しい。

 

5.社会的価値のある薬局・薬剤師を目指して

 

イイジマ薬局では、機械化やDX化により生まれた時間を相談対応や地域住民への貢献の時間に充てている。

薬剤師が相談対応し、一般用医薬品に関与することの重要性として以下の4つを挙げた。

・個人輸入や偽造医薬品等による有害事象を防ぐ

・潜在的疾患を早期発見・早期治療、重症化予防、服用薬の一元管理による情報共有

・地域住民のアクセス

・カウンセリングによる生活習慣の改善を提案、他職種連携で栄養士やPTにつなげる

地域住民向けのサロン活動では、減塩食を作り試食する会を開催して、その後の食事のモニタリング、薬物治療に関与させるなどの取り組みを行っている。また薬局のかかりつけ患者限定で、行政ではケアが難しい部分を埋めるサービスを展開しており、衣食住や生活で困っていることを介護職員や管理栄養士がサポートする体制を整えている。

薬局は「地域」「住民」が何を必要としているのか、「誰が」「何を」「どうやって」提供してくれるのかを分析し、地域のニーズや環境の変化に合わせた物やサービスを提供することが大切である。その取り組みを積み重ねることが「なくてはならない薬局」・「いつもいてほしい薬剤師」と地域住民に思ってもらえることにつながると飯島氏は述べ、講演を締めくくった。

 

筆者:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部


 今回ご紹介したイイジマ薬局様の事例は、地域住民のための顧客志向を突き詰めた経営を行なう、理想的な姿を提示していると思います。

この記事に示されている通り、これからの薬局はこれまで以上に患者様のライフステージに寄り添うような対応が求められることになります。

 

EMシステムズでも今後、世の中の変化に対応した薬局ステムを開発して参ります。

202212月、新たにリリースした「MAPfor PHARMACY DX」は、薬局の“DX”による患者サービスを中心とした薬局経営の支援を目的としております。

お客様に合わせてご提案させていただきますので、ぜひご相談下さい。

https://service.emsystems.co.jp/maps_series/for_pharmacy_dx/

EM-AVALON編集部より)