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クリニックDX化の事例から学ぶ~成功例・失敗例①

2023.09.19

クリニックがDXDegital Transformation)の取り組みが成功した状態とは、「デジタルツールを導入して、業務効率化が進み、生産性が向上し、現場改革が進んだ」ことになります。具体的には、「待ち時間が減少した」「残業時間が減った」「診察スピードが上がった」ことなどによって、患者満足度やスタッフ満足度が向上することが成果としては必要となります。今回はクリニックDXについて、いくつかの事例に基づき成功・失敗の要因を探っていきたいと思います。

【目次】

  1. 待ち時間を減らすための「Web」予約の導入
  2. 患者が順番通り来ないと効果が発揮できない
  3. システムの見直し
  4. 残業時間を減らすための「自動精算機」の導入
  5. 自動精算機を導入してもレジが合わない


1.待ち時間を減らすための「Web」予約の導入

 あるクリニックが、患者が多く「患者の待ち時間」を課題として感じているとしましょう。そのクリニックでは、待ち時間が長く、例えば2時間を超えるようなことがあり、それは患者の不満に繋がっていきました。そのため、「待ち時間の短縮」の検討が必要になったのです。

一般的に待ち時間の原因を考えると「患者集中」が挙げられます。朝の時間帯と夕方の時間帯に患者が集中することで、待ち時間が発生するのです。そこで、患者が集中する時間帯を分散することができれば、待ち時間は減少するのではないかという仮説が立てられます。

患者集中の分散に有効なシステムとしては、「順番管理システム」を導入するケースが多くあります。現在、順番管理システムは、数多くのメーカーがあり、当然比較検討して、現場の運用に合いそうなメーカーを選ぶ必要があります。

 

2.患者が順番通り来ないと効果が発揮できない

順番管理システムが導入されると、患者は来院前にWebなど(Webからとるのが難しい方は院内あるいは電話)で診察順が記載された番号を取り、自分の番号が来てから来院するという新しい流れが作られるようになります。つまり、番号を取って院外で待つという流れが作り出されるのです。

しかしながら、順番管理システムは番号通り患者が来院して、初めて効果を発揮するシステムから、患者が自分の番号が来ても来院しなかったり、番号が進んでいる中で、若い番号の患者が来院して横入りをしたり、番号が呼ばれる前に来院して待合室で待っていたり、というケースがあっては、上手く機能しないのです。

 

3.システムの見直し

そのクリニックは、導入したシステムが現場にフィットしていないと感じたため、「時間帯予約システム」に変更することが案として出されました。時間帯予約システムは、順番管理と時間予約の中間的なシステムで、一定の時間枠に複数の患者が順番を取ることになります。この結果、時間という目安があることで、患者がスムーズに来院するようになったのです。順番が呼ばれず、早く来てしまう患者が減り、遅れてやってくる患者も減っていったのです。その結果、待ち時間は大幅に短縮し、患者の不満もほとんどなくなりました。

 

4.残業時間を減らすための「自動精算機」の導入

 あるクリニックが、残業時間が毎日1時間から2時間あり、長い残業時間がスタッフの不満となっていました。そこで、「残業時間の短縮」が課題として挙がりました。

 一般的に、残業の原因は、「診察終了間際に来院する患者がいる」「診察終了後に行う作業が多い」といった2つの問題に分けることができます。

「診察終了間際に来院する患者」の対策として、受付終了時間を繰り上げることが検討されました。具体的には、「30分前倒しする」ことを意思決定し、患者へアナウンスすることになりました。患者の認知が進むのに多少の時間はかかりましたが、徐々に終了間際に来院する患者を減らすことに成功しました。

一方、「診察終了後に行う作業」については、業務の棚卸をしたところ、レジを締め、日報の作成に時間がかかっていることが課題として挙がりました。中でもレジ締めについて、レジの金額が合わないときは何度も再計算をし、原因を突き止める作業を行っていたことが残業時間の超過に大きく影響していることが分かりました。

そこで、「自動精算機」を導入することに決定しました。現在、自動精算機は、数多くのメーカーがあり、当然比較検討して、現場の運用に合いそうなメーカーを選ぶ必要があります。実際、数社のシステムを比較検討して、現場の運用に合いそうなメーカーを絞り、導入することになりました。

 

5.自動精算機を導入してもレジが合わない

「自動精算機」を導入することで、スタッフの現金の取扱いがなくなり、レジの打ち間違いや釣銭の渡し間違いがなくなるため、理論上「レジが合わない」ことはないはずです。しかしながら、実際導入してもレジが合わなかったのです。

その原因は返金や未収金、キャッシュレス(クレジットカード、交通系カード、QR)などを別に管理していたことが問題だったのです。そこで、自動精算機を使わないケースを検討し、返金や未収金、キャッシュレスについても自動精算機を利用する運用に変更が行われ、自動精算機の機能追加が行われました。

その結果、レジがしっかり合うようになり、レジ締めの作業が大幅に減少しました。レジが合わないことはほとんどなくなり、集計作業が自動化されたことでレジ締めによる残業がなくなったのです。

さらに残業時間の短縮に取り組むために再度、検討が行われました。そこで、診察終了後に行っていた「清掃、ゴミ出し」という作業を早朝業務に変更したことで、残業時間はさらに短縮することに成功しました。