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「調剤外部委託とアマゾンの調剤参入~既存薬局はどう対処すべきか~」

2023.10.02

講演採録「調剤外部委託とアマゾンの調剤参入~既存薬局はどう対処すべきか~」
第10回コミュニティファーマシーフォーラム「未来薬局×ロボット調剤」より

一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会(吉岡ゆうこ代表理事)が7月に開催した第10回コミュニティファーマシーフォーラムは「未来薬局×ロボット」をテーマとしており、薬局DXに関連する様々な講演が行なわれた。
本稿ではその中から、株式会社サンキュードラッグ 代表取締役社長兼CEO平野健二による基調講演「調剤外部委託とアマゾンの調剤参入~既存薬局はどう対処すべきか~」を紹介する。

【目次】

  1. アメリカの調剤工場
  2. アメリカにおける薬局の位置づけ
  3. アマゾンの調剤参入
  4. 外部委託の問題点と今後の対応


1.アメリカの調剤工場


平野氏は冒頭、アメリカの調剤工場について紹介した。調剤工場では、慢性疾患のリフィル処方箋を預かって、次回投与開始の5~7日前に調剤を行い、患者自宅もしくは薬局へ配送している。工場はすべて機械化されており、薬剤師3名とスタッフで1日13,000件の調剤が可能で、配送費等を考慮しても店頭と比べて圧倒的にコストが抑えられる。ドラッグストアチェーンが自社の工場を持っている場合もあるが、豊富な在庫と拠点間物流を活かせる卸に工場を委託している場合も多いという。

2.アメリカにおける薬局の位置づけ


アメリカでは抗がん剤、化学療法薬、輸液などすべての調製をテクニシャンが行っている。薬剤師とテクニシャンの最大の違いは、「患者の状態をみて薬を投与するのがベストかどうか“判断”するかしないか」である。そのため薬剤師1人当たりの処方箋枚数制限は存在しない。アメリカの保険制度上、医療費を節約することが患者の生活に大きく役立つため、薬剤師は不必要な薬の削減など患者のために医療費を引き下げる役割も担っている。
「治療は医師、予防は薬剤師」を掲げて、薬剤師がインフルエンザや肺炎など十数種類の予防接種を行っている。さらに、「医師は診断目的、薬剤師は薬物治療管理目的」と定義づけして、薬剤師も血液検査を行うなど、業務は多岐にわたる。
また、アメリカには「薬のない薬局(Pharmacy with No Medicine)」も存在。薬をつくって渡すのはドラッグストアやネットに任せ、薬のない薬局では患者に寄り添い、期待する治療効果発現のために、症状の確認やバイタルチェック(採血や聴診器)を行い、結果を踏まえて医師や患者にアドバイスを行っている。日本の薬局も今後目指していければと期待した。

3.アマゾンの調剤参入


アマゾンは外部委託工場の受託という形での参入が予想されたが、今回はプラットフォーマーとしての参入だった。平野氏はアマゾンの参入スキームを以下のように推測した。
①患者がアマゾンに電子処方箋を送付
②アマゾンが薬局を選定し、調剤を依頼・決済を代行
③薬局はアマゾンに提供された仕組みを利用してオンライン服薬指導を実施
④保険証の登録もアマゾンのプラットフォームで行う
⑤調剤済の薬をアマゾンが配送
アマゾンと連携する調剤薬局としては、集中率を引き下げる効果もある。
しかし、今後外部委託が全面解禁された場合、アマゾンは連携した薬局を外して自社工場に委託することも考えられる。アマゾンが患者接点を構築して患者情報データを蓄積する前に、早期に外部委託を解禁して既存薬局が比較優位性を活かせるようにするべきではないかと考えを述べた。

4.外部委託の問題点と今後の対応


前述のアメリカの調剤工場の例では、1日13,000枚の処方箋を調剤しているが、メールオーダーは処方箋全体の約35%、すなわち薬局では1日40,000枚の処方箋を応需していると推察される。同規模の調剤工場を作るためには人口が少ないと経済性が担保できず、一包化限定であればなおさらのことであり、今後さらに議論が必要である。
患者がアマゾンを使いたくなる理由は、便利であることや薬局では待ち時間が長いことが挙げられる。薬局が対抗するためには、オンライン服薬指導+薬剤配送の仕組みを整えて、初回に直接来局したタイミングで自社の仕組みへ誘導することが大切。そして、リフィル処方箋の薬と急性疾患の薬の相互作用チェックの必要性を患者にアナウンスして、薬物治療の一元管理を行っていくことをアピールすることが短期的対応として求められる。それが薬局の継続利用につながると述べた。
中長期的には、リフィル処方箋の調剤前に薬剤師が中間介入する体制を整備することが業界全体の目標となる。すなわち、アメリカのようにバイタルチェックを行い、効果や副作用を確認して、本当にDOで良いのか薬剤師が“判断”する流れをつくる必要がある。
企業としては、慢性処方が外部委託された場合にも、急性疾患の処方箋だけで運営できるような高い業務効率化が求められる。また、調剤工場と契約する際は、災害時に薬局と工場の両者が同時に被害を受けることを避けられるように、ある程度距離が離れていることも考慮する必要があるという。最後に平野氏は、調剤外部委託やアマゾンの参入について今後も共に考えていきたいと述べ、講演を締めくくった。

筆者:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部



この記事で平野氏の講演で語られている通りですが、今後、大手の異業種参入などにより、患者と処方箋の動線が劇的に変化する可能性もあります。平野氏が講演で指摘しているように、薬局としてはオンライン服薬指導+薬剤配送の仕組みも整えて、来局した患者様を自社の仕組みへ誘導し、スムーズな対応ができるように備えることが必要です。

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(EM-AVALON編集部より)