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働き方改革の推進について①

2023.11.27

6月14日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では、「働き方改革の推進」についての1回目の議論が行われました。2024年4月から始まる「医師の時間外労働の上限規制」の適用を控え、医師及び医療従事者の働き方改革について、診療報酬でどのように評価していくかという重要な問題が話し合われました。

【目次】

  1. 2024年4月より医師の時間外労働の上限規制が適用
  2. やむを得ず上限規制を超える場合、健康管理の措置が必要
  3. 医療従事者の働き方改革に係る取組の診療報酬上の評価
  4. タスクシェア/タスクシフトに対する診療報酬上の評価
  5. 令和6年度診療報酬改定を踏まえた体制整備が必要に


1.2024年4月より医師の時間外労働の上限規制が適用 

2019年頃から始まった「働き方改革」ですが、医師の働き方改革は調整に難しい問題があり先延ばしにされてきましたが、2024年4月に「医師の時間外労働の上限規制」が適用されることになっています。

具体的には勤務医について3段階に区分され、診療従事勤務医(A水準)は年960時間の上限規制が適用され、地域量確保暫定特例水準(B水準)及び集中的技能向上水準(C水準)の医療機関は、特例的に年1,860時間の上限規制が適用されることになります。B水準、C水準については都道府県知事に指定のために申請を行う必要があります。また、これらの措置は暫定的なものであるため、2035年までにはさらなる残業時間の短縮が必要になります。

(出典)中央社会保険医療協議会総会(2023.6.14,厚労省)

2.やむを得ず上限規制を超える場合、健康管理の措置が必要

また、令和3年改正医療法において、長時間労働の医師に対し医療機関が講ずべき「健康確保措置」の整備等が定められており、2024年4月に向け段階的に施行されています。具体的には、やむを得ず上限規制を超える場合、事業者(医療機関の管理者)は健康管理のための面接指導が必要となります。面接対象は、1か月の時間外・休日労働が100 時間以上となることが見込まれる医師です。実施時期としては、BおよびC水準であれば、1か月の時間外・休日労働が100 時間に達するまでの間に実施し、A水準は疲労の蓄積が認められない場合は100 時間以上となった後遅滞なくでも可能です。

 

3.医療従事者の働き方改革に係る取組の診療報酬上の評価

これまで医師の働き方改革の推進については、診療報酬でも評価されてきています。

平成302018)年度改定で、病院に勤務する医療従事者の勤務環境改善の取組がさらに進むよう、「総合入院体制加算」の要件となっている病院勤務医の負担軽減等の体制について、対象を病院に勤務する医療従事者全体に拡大し、取組内容の整理が行われています。

令和2(2020)年度改定に、地域医療の確保を図る観点から、過酷な勤務環境となっている、地域の救急医療体制において一定の実績を有する医療機関について、適切な労務管理等を実施することを前提に、入院医療の提供を評価した「地域医療体制確保加算」が新設されています。また、令和4(2022)年度改定においては施設基準の見直しが行われています。

「地域医療体制確保加算」を算定している医療機関に対する調査によると、時間外労働の時間が月155時間(年1,860時間相当)以上の医師はごくわずかであるものの、時間外労働時間が月80時間(年960時間相当)以上の医師の割合は2020年から2022年にかけて増加傾向にあるとしています。

「特定集中治療室管理料」等の施設基準においては、一定の医師の治療室内での常時勤務等を求めている一方、評価の内容に応じて、専従要件を緩和し「緩和ケア診療加算」においてチームのいずれか1人が専従であればよいこととする等、多様な勤務形態を推進する診療報酬上の取組が行われています。

 

4.タスクシェア/タスクシフトに対する診療報酬上の評価

平成20年度改定で、勤務医の負担軽減を目的に、医師の事務作業をサポートする医師事務作業補助者(医療クラーク)の配置の評価として、「医師事務作業補助体制加算」が新設されました。その後、改定ごとに順次評価の拡大・充実が図られ、現在は有床診療所においても算定可能となっています。(現在は、無床診療所では算定できません。)

その他、医師の負担軽減策として、特定行為研修修了者である看護師の配置及び活用の評価についても充実が図られてきました。さらに、看護師の負担軽減策として、平成22年度改定において、看護補助者の配置や夜間の看護体制を充実することに対して評価が行われています。

(出典)中央社会保険医療協議会総会(2023.6.14,厚労省)

5.令和6年度診療報酬改定を踏まえた体制整備が必要に

 令和6(2024)年度改定においては、同年4月から医師の「時間外労働の上限規制」が適用されることを受けて、医療機関ごとの医師並びに医療従事者の働き方改革の取り組みや、これまでの診療報酬上の対応を踏まえ、働き方改革の推進に対する診療報酬の評価の在り方(見直し)が議論されることになります。

 診療報酬改定は点数の変更とともに、それに伴う体制変更が必要となります。医師及び医療従事者の働き方改革を進める医療機関にとっては、まずは「勤怠管理システム」などを導入して、労働状況の見える化を進める必要があります。次に、残業や有給休暇取得の状況を把握したうえで、デジタルツールを活用した業務改善(いわゆるDX)や、医師の負担軽減を目的に看護師や医療クラークへのタスクシフトを進める必要があるのです。