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【特集】令和6年度診療報酬改定 「在宅①」
2023.11.22
7月12日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では「在宅」についての1回目の議論が行われました。主に「在宅医療」「訪問看護」「在宅薬剤管理」などの各項目について課題が示されています。
【目次】
1.在宅医療を取りまく状況
今後、訪問診療の利用者は、2025年以降に後期高齢者の割合が9割以上となることが見込まれており、多くの二次医療圏で2040年以降に利用者数のピークを迎えると予想されています。また、「第8次医療計画」において、今後増加が見込まれる訪問診療・訪問看護の需要に対し、各都道府県は在宅医療提供体制の現状を把握するためのデータ等を踏まえ、適切な在宅医療の圏域を設定し、地域での協議・調整を通じて、より実効性のある体制整備を進める必要があるとされています。
さらに、「在宅医療・介護連携推進事業」については、令和2年度の介護保険法改正における見直しで、PDCAを踏まえた事業展開の推進を図ってきていますが、在宅医療の提供体制に求められる医療機能の4つの場面(①退院支援②日常の療養支援③急変時の対応④看取り)を意識した取組については「急変時の対応」が最も進んでいない状況にあるとしています。
そのような課題に対し、「地域包括ケアシステムを推進する観点からの在宅医療の提供体制」「在宅療養患者の急変時に適切に対応するための情報共有や連携を充実させるための方策」「本人・家族の希望に沿った医療・ケアの促進」を論点として挙げています。
2.在宅医療における診療報酬上の評価
また、在宅医療に関する診療報酬の算定状況について報告が行われました。
主な点数 |
傾向 |
在宅患者訪問診療料 |
算定回数は増加傾向である一方、訪問診療の頻度は近年減少傾向にある。小児に対する訪問診療の算定回数が増加しており、訪問診療1回あたりの診療報酬が増加している。 |
往診料 |
コロナ禍の影響で算定回数は増加傾向、主に都市部において顕著に増加傾向にある。地域により算定回数の増減にばらつきが見られ、人口当たりで最大3.5倍の差が生じている。 |
在宅時医学総合管理料 施設入居時等医学総合管理料 |
情報通信機器を組み合わせた回数は令和4年度になって増加しているが、算定回数は在医総管・施設総管全体の算定回数の約0.05%にとどまる。 |
看取り加算 在宅ターミナルケア加算 |
算定回数については、地域毎にばらつきがあるものの、平成27年度以降、全体的に増加傾向にある。 |
在宅がん医療総合診療料 |
算定回数・件数ともに増加傾向であるが、地域毎に算定回数の差がある。 |
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)2 |
算定回数は増加傾向にあり、診療科としては皮膚科が32.1%と最も多い状況。 |
在宅療養移行加算 |
算定していない理由としては「24時間の往診体制の確保ができない」が最も多かった。 |
在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料 |
算定回数は近年横ばいであるが、訪問リハビリテーションの請求事業所は年々増加している。 |
外来在宅共同指導料 |
算定していない理由として、外来在宅共同指導料1については「該当患者の紹介がなかった」が、外来在宅共同指導料2については、「当該点数について知らなかった」が最も多い状況。 |
論点としては、「質の高い訪問診療・往診等を十分な量提供する観点から、訪問診療・往診等に係る診療報酬上の評価」を検討していくとしています。
3.訪問看護
訪問看護の利用者については、2025年以降に後期高齢者の割合が7割以上になるとされ、多くの二次医療圏(198の医療圏)においては2040年以降にピークを迎えることが見込まれています。
訪問看護は、その状態等に応じて介護保険または医療保険のいずれかから提供されており、原則として介護保険を優先するというルールとなっています。そのような中、医療保険の訪問看護の利用者数の伸びが顕著となっています。また、在宅医療の中で訪問看護に求められる役割の1つであるターミナルケアの利用者数は近年増加傾向にあり、特に令和3年度は顕著に増加しています。
訪問看護ステーション数は増加傾向であり、看護職員が常勤換算で5人以上の比較的大規模な訪問看護ステーションが増加しているとしています。
訪問看護の課題である「24時間対応」については、看護職員の精神的・身体的負担が大きいことや夜間・休日対応できる看護職員が限られているため、負担が偏ること等が挙げられています。
訪問看護の論点としては、「質の高い訪問看護や更なる高齢化等を見据えた24時間対応に応えられる訪問看護の提供体制の構築を推進する観点から、訪問看護に係る診療報酬上の評価」が挙げられています。
4.訪問薬剤管理
「在宅患者訪問薬剤管理指導料(医療)」「居宅療養管理指導(介護)」は共に算定回数が伸びており、全体として薬剤師による在宅患者への薬学的管理は進んでいるとしています。また、医師、看護師、ケアマネジャー等の様々な職種への情報提供などの連携が実施されており、さらなる連携の推進が期待されています。
また、在宅患者の「夜間休日対応が可能な体制」を整えている薬局は65.4%あり、「人生の最終段階の利用者・患者への訪問薬剤管理指導」を実施している薬局では90%を超えており、特に、人生の最終段階の利用者・患者に関しては、24時間・365日対応や開局中の緊急訪問体制が重要とされています。
訪問薬剤管理の論点としては、「患者の服薬状況等の情報を共有しながら、最適な薬学的管理やそれに基づく指導を実施を推進していく観点から、訪問薬剤管理指導の提供体制や多職種との連携に係る調剤報酬上の評価」が挙げられています。