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【押さえておきたい新薬情報】肥満症治療薬(持続型 GLP-1 受容体作動薬) ウゴービ皮下注

2023.12.04

 

この記事は…

大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。


2023年3月、肥満症治療薬のウゴービ皮下注〔一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)〕が承認されました。同一成分薬には、2型糖尿病治療薬のオゼンピック皮下注(週1回投与)とリベルサス錠(1日1回投与)があります。

『肥満症診療ガイドライン』では、肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積し、BMI(体格指数)が25以上のもの。肥満症とは、BMIが25以上あり、一定の健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風など11の肥満関連疾患)を合併するか、その合併症が予測される場合で医学的に減量を必要とする病態(BMI35以上は、高度肥満)と定義されています。 

脂肪細胞は単なる貯蔵場所ではなく、様々な生理活性物質を分泌していることが明らかになり、肥満症はアンメットニーズの高い疾患になりました。国内では、1992 年に発売された中枢性の食欲抑制作用があるサノレックス錠(一般名:マジンドール)だけで、適応は高度肥満、短期間の使用に限定されます。2013年に承認された膵リパーゼ阻害薬のオブリーン錠(一般名:セチリスタット)は、薬価未収載のまま、2018年に導入元企業に返還されました。2023年2月に、同じ膵リパーゼ阻害薬のアライカプセル(一般名:オルリスタット)が、ダイレクトOTC薬(内臓脂肪減少薬)として承認されました。

ウゴービは、2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬の副作用(体重減少)を逆手に取って、用量を増やし肥満症治療に応用した製剤です。適応は、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない肥満症になります。固定注射針付きシリンジを注入器にセットしたプレフィルド製品で、名称の「SD」は、Single Dose(単回投与)の頭文字に由来します。脳において GLP-1 受容体を介する食欲調節機構の抑制により、体重減少効果を発揮すると考えられています。日本人を含んだ治験で、10%以上の体重減少効果が報告されました。革新的医薬品を有効かつ安全に使用するための「最適使用推進ガイドライン」の対象品目に指定されているため、「3~4ヵ月間投与しても改善傾向が認められない場合には中止すること」以外にも、投与する上で留意すべき事項などが追加される可能性があります。GLP1 受容体作動薬および GIP/GLP1受容体作動薬を、自由診療でダイエット・美容目的で適応外使用していることに対し、日本糖尿病学会から行わないように注意喚起がなされました。米国では、BMI30以上が肥満とされ、リパーゼ阻害薬(オルリスタット)、中枢性食欲抑制薬(フェンテルミン/トピラマート、ナルトレキソン/ブプロピオン)、GLP-1 受容体作動薬(リラグルチド、セマグルチド)が承認されています。国内では、同じ持続性GIP/GLP-1受容体作動薬のマンジャロ皮下注(一般名:チルゼパチド)が肥満症に対して開発中です。

商品名

ウゴービ皮下注0.25mg/0.5mg/1.0mg/1.7mg/2.4mgSD

一般名

セマグルチド(遺伝子組換え)

会社名

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社

適応症

肥満症(ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、以下に該当する場合)
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上

用法・用量

通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射する。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する

肥満症の診断に必須な健康障害

耐糖能障害(2 型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞・一過性脳虚血発作、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常・女性不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、運動器疾患、肥満関連腎臓病

副作用

重大な副作用として、低血糖、急性膵
主な副作用として、食欲減退、頭痛、悪心、下痢、嘔吐、便秘、消化不良、おくび、腹痛、腹部膨満

薬価

0.25mg(1,876円)/0.5mg(3,201円)/1.0mg(5,912円)/1.7mg(7,903円)/2.4mg(10,740円)

使用に際しては、必ず添付文書をお読み下さい。

主な肥満症治療薬

商品名(一般名)

分類(会社名)

適応

備考

サノレックス錠
(マジンドール)

アドレナリン再取り込み阻害薬
(富士フイルム富山化学)

肥満度が+70%以上、BMI35以上の高度肥満症

食欲抑制薬

オブリーン錠
(セチリスタット)

膵リパーゼ阻害薬
(武田薬品工業)

2型糖尿病、脂質異常症を有し、BMI25以上

保険未収載
撤退

アライカプセル
(オルリスタット)

膵リパーゼ阻害薬
(大正製薬)

腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)

ダイレクトOTC薬

ウゴービ皮下注
(セマグルチド)

持続型 GLP-1 受容体作動薬
(ノボノルディスクファーマ)

BMI25以上で、2つ以上の健康障害、BMI35以上

発売準備中
保険未収載

マンジャロ皮下注
(チルゼパチド)

持続性GIP/GLP-1受容体作動薬
(日本イーライリリー)

   未定

開発中

 

 EM  

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筆者:浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事

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