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【押さえておきたい新薬情報】肥満症治療薬(持続型 GLP-1 受容体作動薬) ウゴービ皮下注

2023.12.04

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  肥満症治療薬(持続型 GLP-1 受容体作動薬) ウゴービ皮下注

 

2020年11月、エクロックゲル(一般名:ソフピロニウム臭化物)、2022年5月、ラピフォートワイプ(一般名:グリコピロニウムトシル酸塩水和物)が発売されました。日本初と2剤目の原発性腋窩多汗症(ワキ汗)治療薬です。

多汗症は、体温調節に必要な量を超えて発汗が亢進し、日常生活に支障をきたすほどの大量の発汗が生じる疾患です。発汗の増加する部位により、ワキ汗、手汗など部分的に発汗が増える「局所性」と全身からの発汗量が多い「全身性」、発汗が増加する原因により、原因が特定できる「続発性」と、特に原因となる疾患のない「原発性」に分類されます。

多汗症に保険適用がある内服薬は、プロ・バンサイン錠(一般名:プロパンテリン臭化物)だけで、注射薬のボトックス注用(一般名:A型ボツリヌス毒素)は「重度の原発性腋窩多汗症」のみの適応です。また、その人の体質に合わせて漢方薬の防已黄耆湯などが処方されます。そのほか、頻尿治療薬のポラキス錠(一般名:オキシブチニン)、高血圧症治療薬のカタプレス錠(一般名:クロニジン塩酸塩)、自律神経調整薬のグランダキシン錠(一般名:トフィソパム )、選択的セロトニン再取り込み阻害薬のパキシル錠(一般名:パロキセチン塩酸塩水和物)などが適応外で使用されます。外科的手術には、手掌多汗症の有効率がほぼ100%という交感神経遮断術などがあります。「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」では、第一選択の治療法として塩化アルミニウム液や微弱な電流を流す水道水イオントフォレーシスが推奨されています。しかし、塩化アルミニウム液は処方薬がないため院内製剤であること、皮膚への刺激や炎症が起きやすいこと、水道水イオントフォレーシスは専用の機器が必要なことなどから、保険適用のある外用薬が望まれていました。

全身に分布しているエクリン汗腺は、交感神経により調節され、アセチルコリンがムスカリンM3受容体に結合することで、発汗が惹起されます。外用抗コリン薬は、アセチルコリンとムスカリン受容体(M3)の結合を阻害して、過剰な発汗を抑えます。薬液が手指を介して、目や口に入ると抗コリン作用による散瞳や口喝が発現します。エクロックは、薬液をのせるアプリケーター(塗布具)を使用することで、直接、薬液を触らずに塗ることができます。ラピフォートは、ゲル製剤よりも乾きやすい製剤。使用後は、速やかに流水で手を洗います。薬剤が付いた手で眼をこすると、抗コリン作用による眼の調節障害が起こる可能性があるので、自動車の運転等には注意する必要があります。

 

商品名

エクロックゲル5%

ラピフォートワイプ2.5%

一般名

ソフピロニウム臭化物

グリコピロニウムトシル酸塩水和物

会社名

科研製薬

マルホ

効能・効果

原発性腋窩多汗症

原発性腋窩多汗症

用法・用量

1日1回、適量を腋窩に塗布する

1日1回、1包に封入されている不織布1枚を用いて薬液を両腋窩に塗布する

妊婦・授乳婦

有益性投与

有益性投与

小児

12歳未満の小児等は使用経験がない

9歳未満の小児等は使用経験がない

禁忌

閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害、本剤の過敏症のある患者

閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害、本剤の過敏症のある患者

副作用

適用部位皮膚炎・紅斑・そう痒感・湿疹、散瞳、霧視

羞明、散瞳、霧視、ドライアイ、排尿困難、頻尿、口渇、接触皮膚炎、湿疹

薬価

5%1g:242.60円

2.5%2.5g1包:262.00円

使用に際しては、必ず添付文書をお読み下さい。

 

多汗症治療薬

商品名(一般名)

会社名

多汗症に関する適応

プロ・バンサイン
(プロパンテリン臭化物)

ファイザー

多汗症

ボトックス注用
(A型ボツリヌス毒素)

グラクソ・スミスクライン

重度の原発性腋窩多汗症

防已黄耆湯
〔ボウイオウギトウ〕

各社

多汗症(ツムラ、コタローのみ適応)

塩化アルミニウム液

院内製剤
(保険適用外)

局所の制汗(腋窩、手掌、足底、頭部・顔面)

エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)

科研製薬

原発性腋窩多汗症

ラピフォートワイプ(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)

マルホ

原発性腋窩多汗症

アポハイドローション(オキシブチニン塩酸塩)

久光製薬

原発性手掌多汗症

 

 

この記事は…

大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

 

(筆者)

浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事