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令和6年度介護報酬改定の見通し~在宅サービス~

2023.12.11

【目次】

  1. 介護給付費分科会において議論が本格化
  2. 訪問介護の方向性
  3. 訪問看護の方向性
  4. 通所介護の方向性
  5. 居宅介護支援の方向性


1.介護給付費分科会において議論が本格化

介護給付費分科会において各サービスごとに次期改定に向けた議論が具体化してきました。1023日に開催された第228回から116日に開催された第230回に向けては、主に在宅サービスに関する議論が展開されました。

まず、最も注目されていた「複合型サービス」については、訪問介護と通所介護の組合せであること、地域密着型サービスとすること、定員を29名とすること、居宅介護支援事業所がケアプランを策定すること、包括報酬であること等、実態が見えてきました。今後、更に議論が進むことで、より詳細が見えてくるようになると考えられますので、改めてご報告してまいります。

今回は、現時点で判明している各サービスや論点について、主要なポイントを解説していきます。

 

2.訪問介護の方向性

訪問介護においては「看取り期の利用者への対応」と「同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬」が主な論点となっています[]

「看取り期の利用者への対応」については、看取り関連の加算の創設ではなく特定事業所加算を通じて「看取り期への利用者」へのサービス提供を評価するという提案がなされています。また、特定事業所加算における現行の区分の整理統合、要件を見直すことも提示されています。

看取りの提供体制については、看取り期の利用者に対するサービス提供の特徴として、「事業所外の訪問看護師と連携できる体制をとっている」というものが挙げられており、これが新しく要件に盛り込まれる可能性はあるのではないでしょうか。また、特定事業所加算の算定要件の1つである中重度者の割合について、その要件が実態と乖離しているという指摘もあり、これが緩和されるとともに「看取り期の利用者」へのサービス提供の実績が評価されるという仕組みになるのではないかと考えられます。

 

「訪問介護・訪問入浴介護(改定の方向性)」[]

 

「同一建物等居住者にサービス提供する場合の報酬」については「同一建物減算の算定実績のある事業所において、同一建物減算を算定する利用者のみにサービス提供を行う事業所の割合が半数以上」、「同一建物等居住者へのサービス提供割合が多くなるにつれて、訪問件数は増加し、移動時間や移動距離は短くなっている実態がある」という指摘もあり、サービス提供先の集中に関する減算が、更に厳しくなることが予想されます。

 

3.訪問看護の方向性

訪問看護については、“緩和ケア、褥瘡ケア若しくは人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師等が訪問看護の計画的な管理を行うことを評価する加算(診療報酬における「専門管理加算」の類型)”の創設、“ターミナルケア加算の更なる評価”、“在宅における医療ニーズの高まりに対応した24時間の体制の評価”等が提案されており、在宅の医療ニーズへの対応に対してより体制が強化されそうです。また、先の訪問介護にあったように、訪問看護においては今後他の在宅サービス等との連携がさらに求められる観点から、訪問看護側からの連携体制の評価を検討する動きもあるようです。

一方で、理学療法士等による訪問看護については、前回改定において予防訪問看護において12回を超える理学療法士等の訪問に関する減算を創設したところ、その回数が顕著に減少したことが示されました。この影響は通常の訪問看護においても影響を及ぼす可能性があり、要介護においても減算が適用される可能性もあります。

「訪問看護(改定の方向性)」[]

 また、リハビリテーションを受けている利用者の介護度や日常生活自立度の分布についても言及がありました。リハビリテーションを必要と認められる利用者について、介護度や日常生活自立度が高い利用者に対しての実施が制限されるなどの設定がなされる可能性もあるかも知れません。

 

4.通所介護の方向性

 通所介護については、主に「入浴介助加算の見直し」と「個別機能訓練加算の適正化」が議論のポイントとして挙げられています。

「入浴介助加算の見直し」については、前回改定で算定された「入浴介助加算(Ⅱ)」の算定率の伸び悩みについて言及されています。自宅での自立を図るという観点は堅持しつつ、Q&Aで示された要件解釈(入浴計画は単独の計画を作成する必要はなく通所介護計画の中での位置づけで良い点、必ずしも通所介護事業所に個別浴槽が必要無い点、等)が浸透していな現状を鑑み、を厚生労働大臣が定める基準告示に明記し要件を明確にすることが提言されています。また、利用者宅浴室の環境評価・助言について、従来は資格者の要件が設定されていましたが、これを介護職員の訪問および資格者のICT機器等を活用した状況把握、評価・助言をする場合でも可とする緩和策が挙げられています。一方で「入浴介助加算(Ⅰ)」については、入浴介助技術に関する研修内容を算定要件に組み込むという提案がなされています。通所介護事業所における、入浴介助の評価が今後変わりそうな内容となっています。

「個別機能訓練加算の適正化」については「個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ」の改定について言及されています。従来は機能訓練指導員を提供時間帯を通じて専従1名以上配置することが要件とされていたところ、機能訓練指導員が2名配置されている時間帯について算定可能とするとともに、専従1名以上を提供時間帯を通じて配置するという要件を緩和するという運びになりそうです。これは、人員の柔軟な活用が可能になる一方で、改定の際に減算と扱われる可能性もあるため、今後の議論に注視が必要です。

 

通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護(改定の方向性)[]

 

5.居宅介護支援の方向性

 居宅介護支援においては、医療連携の観点からは、“入院時情報連携加算の要件の見直し”、“通院時情報連携加算の歯科医師の診療への拡大”、“ターミナルケアマネジメント加算の疾患要件の解消”などが提示されました。また、モニタリングの実施について、月1回の訪問を原則としつつ、一定の要件を設けた上で、テレビ電話装置等を活用したモニタリングを行うことも可能とする提案もなされています。

また、前回実施された逓減性の緩和について、実施そのものについてポジティブな結果が得られたことから、取扱件数そのものを拡大するという議論になっています。現行条件で更なる緩和をおこなうとともに、居宅介護支援費(Ⅱ)においてはケアプランデータ連携システムの活用による業務効率化もその要件に盛り込むという提案もなされており、次期改定においては、これらがさらに緩和される可能性が高いでしょう。

一方で、同一建物へのサービス提供に対する指摘もなされています。居宅介護支援においても、同一建物減算が創設される可能性は高いといえるでしょう。

 

他サービスについても今後、更なる情報が開示されていくこととなりますので、引き続き本コラムで最新情報をご案内していければと思います。

 

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[ⅰ] https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001164131.pdf

[ⅱ] https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001164130.pdf

[ⅲ] https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001161271.pdf

株式会社スターパートナーズ代表取締役

一般社団法人介護経営フォーラム代表理事

脳梗塞リハビリステーション代表

MPH(公衆衛生学修士)齋藤直路