- 医科
- #改定情報
【特集】令和6年度診療報酬改定 「外来②」
2023.12.01
11月8日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)の総会では「外来」についての2回目の議論が行われました。主に「情報通信機器を用いた診療」について課題と論点が示されています。
2016年度診療報酬改定でオンライン診療の評価が新設され、2020年には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、臨時的・特例的取扱い(0410対応)として、オンライン診療による初診を可能とする等の対応が行われました。これは2023年7月末で終了しています。
また、2022年1月には「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が見直され、それを受けて同年4月の診療報酬改定においては、オンライン診療料を廃止し、初再診料に情報通信機器を用いた場合として組み込まれ、さらに算定できる医学管理料の拡充、算定要件の緩和等の見直しが行われています。
【目次】
1.情報通信機器を用いた診療の現状
情報通信機器を用いた初診料等の届出医療機関数は、令和5年7月1日時点において約8,500医療機関となっています。そのうち、情報通信機器を用いた診療で、患者の所在が医療機関と異なる市町村または特別区である場合の診療件数の割合が97.5%を超える医療機関が、一定程度あることが明らかになっています。指針では、オンライン診療の提供体制に関する事項として、「患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておくこと」が最低限遵守する事項として定められています。
そのような現状を受けて、患者の所在と医療機関の所在の関係の分析を進める必要があるのではないかとしています。
(出典)中央社会保険医療協議会総会(2023.11.08,厚労省)
2.不眠症に対する情報通信機器を用いた診療実態
情報通信機器を用いた初再診料・外来診療料における傷病名はCOVID-19が最多となっており、対面診療の割合が5割未満の医療機関における傷病名は初診ではCOVID-19、再診料・外来診療料では不眠症が最多となっています。指針では、初診の場合には「麻薬及び向精神薬の処方」は行わないこととされているものの、不眠症を主傷病とする患者に対する情報通信機器を用いた診療では、初診から向精神薬が処方されている実態があったとしています。
不眠症患者に対し、初診から抗精神薬が処方されていた実態を踏まえて、適切な情報通信機器を用いた診療を推進するための見直しが検討されています。
(出典)中央社会保険医療協議会総会(2023.11.08,厚労省)
3.情報通信機器を用いた疾病管理
睡眠時無呼吸症候群等の患者に対する「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」が、コロナ特例によって算定が進み、1月あたり約8千件程度に上っていました。しかしながら、同特例は2023年5月8日をもって廃止されています。
一般社団法人日本遠隔医療学会において、情報通信機器を用いたCPAP診療については、CPAPを開始したことにより睡眠時無呼吸症候群の症状である眠気やイビキなどが改善していることを確認した上で実施すること等の遵守すべき具体的な条件が提示されています。このように、情報通信機器を用いた診療を実施する上での、有効性・安全性を担保するための一定の基準が関係学会から示されたことを受けて、CPAP療法に係る情報通信機器を用いた診療の評価があらためて検討されています。
4.へき地における情報通信機器を用いた診療
へき地の医療体制(第8次医療計画)構築のための指針において、国は自治体におけるオンライン診療を含む遠隔医療の活用について支援を行うこと等のへき地の医療の確保を図るための取り組みを着実に進めることとしています。
2023年7月1日時点において、情報通信機器を用いた診療の届出を行っているへき地医療拠点病院は54施設、へき地診療所は75施設。へき地医療拠点病院およびへき地診療所における、情報通信機器を用いた診療の算定回数はそれぞれ約100回となっています(令和5年3月診療分)。
オンライン診療を実施しているへき地医療機関では、患者が看護師等といる場合のオンライン診療(D to P with N)の様式が主流であり、調査回答の中で、移動コストの短縮をはじめとして巡回診療や医師・専門医派遣の有用性が示唆されています。
へき地医療拠点病院・診療所において、情報通信機器を用いた診療が普及していない現状があり、へき地におけるD to P with Nが有効であることを踏まえ、へき地における情報通信機器を用いた診療を推進するための見直しを行うとしています。
5.遠隔連携診療料
2022年度改定で、「遠隔連携診療料」は知的障害を有するてんかん患者を対象に、かかりつけ医とてんかん診療拠点病院等の医師が連携して患者に対する診療を継続する場合の評価として新設されました。
遠隔連携診療(D to P with D)を炎症性腸疾患(IBD)の診療に実践されている事例において、遠隔連携診療の対象患者のうち、確定診断後の患者が診療件数の75%を占めたと報告されています。また、遠隔連携診療を実施することで、患者の安心感が高まり、適切な治療につながったとの報告もされています。
そこで、診断確定後の指定難病患者に対するD to P with Dの有効性を認めたことから、遠隔連携診療料の対象患者を拡大することが検討されています。