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【特集】令和6年度診療報酬改定「令和6年度診療報酬改定の基本方針」

2023.12.25

 1211日に開催された社会保障審議会(社保審)の医療部会で令和6年度診療報酬改定の基本方針が決定しました。診療報酬改定では、透明性を確保するために、社保審で基本方針を策定し、中医協で詳細を検討するという形式をとっています。

改定に当たっての基本認識としては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和4点が示されています。

【目次】

  1. 現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】
  2. ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
  3. 安心・安全で質の高い医療の推進
  4. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上


1.現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】

 医療分野では賃上げが他の産業に追いついていない状況にあり、しかも、医療分野における人材確保の状況は悪化しており、長期的にも、生産年齢人口の減少に伴った支え手不足が見込まれています。そこで、「必要な処遇改善等を通じて、医療現場を支えている医療従事者の人材確保のための取組を進めることが急務」としています。

また、2024年4月から、医師の時間外労働の上限規制が適用される予定であり、「総合的な医療提供体制改革の進展の状況、医療の安全や地域医療の確保、患者や保険者の視点等を踏まえながら、診療報酬の対応がより実効性のあるものとなるよう検討する必要がある」としています。

 

【具体的方向性の例】

医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組

各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進

業務の効率化に資する ICT の利活用の推進、その他長時間労働などの厳しい勤務環境の改善に向けての取組の評価

地域医療の確保及び機能分化を図る観点から、労働時間短縮の実効性担保に向けた見直しを含め、必要な救急医療体制等の確保

多様な働き方を踏まえた評価の拡充

医療人材及び医療資源の偏在への対応

2.ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進

 いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築などが進められてきましたが、「2025年以降も人口減少・高齢化が進む中、患者の状態等に応じて質の高い医療を適切に受けられるよう、介護サービス等と連携しつつ、切れ目のない提供体制が確保されることが重要である」としています。

そのためには、「医療DXを推進し、今般の感染症対応の経験やその影響も踏まえつつ、外来・入院・在宅を含めた地域全体での医療機能の分化・強化、連携を着実に進めることが必要である」としています。 

 

【具体的方向性の例】

医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進

生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取組

リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進

患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価

外来医療の機能分化・強化等

新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組

かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価

質の高い在宅医療・訪問看護の確保

3.安心・安全で質の高い医療の推進

 現在、食・材料費や光熱費など物価が高騰している中で、患者にとって必要な質の高い医療を確保する取組を進めるためには、「患者の安心・安全を確保しつつ、医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえ、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、イノベーションを推進し、新たなニーズにも対応できる医療の実現に資する取組の評価を進める」必要があるとしています。

 

【具体的方向性の例】

食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応

患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価

アウトカムにも着目した評価の推進

重点的な対応が求められる分野への適切な評価(小児医療、周産期医療、救急医療等)

生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防の取組推進

薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病院薬剤師業務の評価

薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進

医薬品産業構造の転換も見据えたイノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等

4.効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

 今後、高齢化や技術進歩等により医療費の増大が見込まれる中、国民皆保険を維持するためには、「制度の安定性・持続可能性を高める不断の取組が必要」としています。これまでも、2025年をターゲットに医療保険制度の安定性・持続可能性の向上につながる各種施策を進めてきており、「2025年をまたぐ今回の改定は、これらの施策を着実に進めていくという視点が必要不可欠であり、医療関係者が協働して、医療サービスの維持・向上を図るとともに、効率化・適正化を図ることが求められる」としています。

 

【具体的方向性の例】

後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し等

費用対効果評価制度の活用

市場実勢価格を踏まえた適正な評価

医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進

出典:社会保障審議会 医療部会(2023.12.11,厚労省)