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「電子処方箋」最新状況と今後の動向について ~セミナーレポート~ 

2024.01.09

このたび弊社および株式会社グッドサイクルシステム、株式会社ユニケソフトウェアリサーチは3社共催で、電子処方箋の推進を担当している厚生労働省の桒田祐輔氏を講師に迎えたセミナーを開催した。まもなく運用開始から1年を迎えようとする中、医療現場での導入状況から見えてきた課題、そしてさらなる普及拡大のための新たな施策について語って頂いた。
本稿では桒田氏の講演の要旨を紹介する。

 

【セミナー講師と演題】

演題:「電子処方箋」最新状況と今後の動向について

講師: 厚生労働省 医薬局 総務課 電子処方箋サービス推進室 課長補佐 桒田佑輔氏

(2023年12月5日開催)

■電子処方箋1年目の現状

2023126日の運用開始以来、政府としても積極的に電子処方箋の普及拡大に務めている。

オンライン資格確認システムを通じて患者の直近の処方や調剤の履歴が情報共有でき、重複投薬のチェックの結果が確認できることなど、医療情報を有効に活用ができるメリットがある。

現時点の運用状況として、前年度に4つのモデル地域での開始を経て、現在は周辺地域への波及効果の高い病院を中心として面的な拡大が図られている。薬局を含めて全国20万強の医療施設のうち5%という導入状況であるが、すでに導入済の医療機関・薬局では蓄積された情報をもとに重複投薬チェックが多く実施されており、診療・処方、調剤・服薬指導の場で活用されている実態がうかがえる。

 

■電子処方箋のメリット

電子処方箋のメリットとして改めて強調したいのが、医療機関・薬局をまたいだリアルタイムでの処方・調剤情報を共有できるということ。

◎より実効性のある重複投薬等の抑制◎処方箋入力作業の削減による薬局の事務効率化◎患者自身がこれまでの処方・調剤情報の閲覧が可能になること――がメリットとしてあげられるが、実際に医師、薬剤師においても効果を感じていることが調査から分かっており、医師が過去の薬歴を見た段階で処方を止めたり、患者がお薬手帳を持参していないケースでも、処方段階からチェックすることができたとの回答が寄せられている。

また電子処方箋では電子でデータ送信ができるため、患者が来局前に調剤を始めることができる時短メリットもある。

■電子処方箋のさらなる普及促進にむけて

一方で厚生労働省としては現在5%しか導入が進んでいない実態を重く受け止めており、その要因を洗いだしている。

「近隣の医療機関で導入数が少ないため必要性をあまり感じていない」、といった声に対してはその解消のため、まず公的病院を中心に導入推進強化を図っている。

また、「電子署名対応に手間がかかる」という声が寄せられていることについては認証形式の見直して対応している。導入当初はHPKIカードの署名のみで対応を求めていた。しかし費用負担や、カードを忘れたり破損したりすると使えないという欠点もあった。そこでHPKIカード発行済である前提でカードレス署名できる方式を追加した。さらにそれに加え、マイナンバーカードによるカードレス署名もできるようになった。現在想定している仕組みとしては一日一回ログインの際にマイナンバーカードをかざして認証すれば、一日中電子署名ができる仕組みを考えている。

 

■システム改修補助を手厚く

電子署名以外にも電子処方箋サービスに対応するためのシステムの接続など、システム改修費用が五月雨式に発生することの経済的な負担に対する改善も医療現場からは求められていた。

従来からシステム改修の補助金を用意していたが、さらに拡充の要望が上がっていることを受け、厚生労働省としても電子処方箋は医療費適正化に繋がることから、補正予算によって拡充を行い、システム改修補助の割合の上乗せを行っている。

また、マイナンバーカードによる署名やリフィル処方箋などもふまえ、補助の上限額も上げていくので、この機会にさらなる導入を進めて欲しいと呼び掛けている。

 

■医療DXの今後

厚生労働省では医療DX全体構想を描き、様々な取組みを進めている。

電子処方箋に続いては、電子カルテの情報共有を目指している。保険証廃止、マイナ保険証への移行をはじめ、外来だけで無く訪問診療でもオンライン資格確認が出来るようにすること、生活保護受給者もオンライン資格確認対応にすることなどを2024年に予定している。

医療機関、薬局がマイナ保険証によりネットワークで繋がることが重要であり、その前提のうえで様々な施策を載せていくことが医療DXの課題となる。自治体と患者の医療情報を共有して地域医療に役立てることも計画されている。

またこれまで2年おきの診療報酬改定ごとに算定内容に応じて各医療機関がベンダーを通じて大規模なシステム改修を行う必要があったが、今後は「共通算定モジュール」を提供することで、改定ごとのシステム改修の負担軽減も視野に入れている。

 

■医療DXの目的

医療DXの全体像として、最終的には全国医療情報ネットワークを構築することが目標となり、医療機関だけでなく自治体や介護事業者とも連結して患者情報を共有して場所にとらわれずにチーム医療を推進していくことが理想に掲げられている。

単に情報が集積されても充分に活用できないこともあるため、より役に立つ情報としてデータを整理して提供できるようにすることも視野に入れている。

他にも民間のアプリなどを通じて患者にも利用できるデータ活用も考えており、DXによる医療提供体制を維持強化して、業務効率化と働き方改革にも貢献していく考えを示している。

(レポート作成:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部)

  

※今回ご紹介したセミナーのアーカイブ動画をEM-AVALON会員サイト「My AVALON」で視聴することができます。

https://em-avalon.jp/mypage/movie/detail?id=80