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令和6年度調剤報酬改定からこれからの薬局づくりを考える 第1回「令和6年度改定に向けた情報を整理する」

2024.01.09

患者のための薬局ビジョンの達成に向けた調剤報酬改定が始まります。調剤報酬改定の方向性を占う「改定率」が12月20日に発表され、技術料は「+0.88%」と前回を大きく上回るプラス改定となりました。しかしながら、主な用途は物価高による賃上げに充当されることが補足されています。財務省より厳しい指摘を受けてきた調剤報酬改定ですが、どのような方向性に進むのか、既存の資料を整理してみたいと思います。なお、改定の概要が分かる「短冊」は1月後半の発表となります。

改定に向けた議論は厚労省より諮問を受けた「中央社会保険医療協議会」(以下、中医協)で議論されますが、私自身見てきた過去数回の改定のなかで「最も議論されなかった」というのが大きな感想です。財務省の指摘もあり、多くの方が気にしている「調剤基本料」についてですが、話の方向性は主に「敷地内薬局」で、基本料2の範囲拡大などに関する議論はほとんどされていません。改定率が示された資料を見ると、「『調剤基本料等の適正化』について改革を確実に進める」という文言がありますので、何かしらの変更がある可能性を示唆しています。中医協では敷地内薬局を有する企業の他店舗の基本料を一律減算するといった業界を騒がす資料も登場しています。

「地域支援体制加算」に対する注目も大きいです。「地域連携薬局の要件化」「実績要件の引上げ」がポイントですが、こちらも中医協で明確な議論がされたとは言い難い状況です。地域連携薬局に関する情報を整理すると、骨太の方針のKPIである「新経済財政再生計画改革工程表2023」に求められる目標値が記載されています。「2025年度までに2022年度と比べて30%の増加」です。2022年度3月末が3,672軒、その30%増なので、「4,773軒」が2024年3月までに目指す軒数となります。11月末時点で4,011軒が認定を受けていることから、「地域連携薬局の要件化」という推進策がとられるかというと、懐疑的です。

「実績要件の引上げ」に関しては議論があまりされていない状況ですが、「対人業務の更なる推進」という用語が出てきています。ポイントは、既存届出薬局に対するハードルを引き上げるのか、それとも多数を占める「届け出ていない」薬局が取り組めるための要件にとどめるのか、この2つではないでしょうか。

次回改定の大きなポイントは10月から始まる「選定療養費制度」です。ドイツの参照価格制度が日本でも始まることが決定しました。簡単に説明をすると、後発品医薬品使用促進のため、先発医薬品を希望する患者には先後医薬品の価格の差に応じて自己負担(選定療養費)を求める仕組みです。価格差の「3/4」までを保険給付の対象とし、「1/4」が自己負担になります。この施策により後発医薬品の使用促進につながることが期待されます。併せて、価格差のある医薬品ほど後発医薬品への切替が進みます。薬剤料の大きな引下げが期待されます。また保険給付も「4/4」から価格差の「3/4」に対象金額が下げられます。本改定の一番の特徴は「技術料はプラス」だが、後発医薬品使用促進により薬剤料を引き下げ、全体として医療費抑制につなげる改定だということです。

その他、各種対人業務や在宅業務など細かな報酬の見直し、評価といった項目がありますが、対人業務に関しては国が求めている行為ということもありポジティブな方向で話が進んでいます。

調剤報酬改定を考える上で、現在を起点に考えるのではなく、過去に遡り「国が求めている姿」を確認することが重要です。約10年かけて取り組んできた薬局ビジョンのエンディングを迎えようとしています。残された期間を有効に使うべく、「どうなるのか」に時間を費やすよりも、「どうする」に時間を使ってみてはいかがでしょうか。

筆者:駒形公大(株式会社Kaeマネジメント 代表取締役 / 2025年戦略推進本部長)