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選ばれる介護事業所になるための採用手法

2024.01.16

 2025年問題と介護業界における人材不足

新たに2024年を迎え、かねてより課題とされていた「2025年問題」の2025年も、ついに1年後に迫りました。「2025年問題」とは、2025年には約800万人いるといわれる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで生じる様々な課題の総称です。介護分野においては、後期高齢者増加による介護ニーズの更なる高まりと、それによる人材の更なる不足が懸念されています。本稿では、2024年2月16日(金)に開催される無料オンラインセミナー「選ばれる介護事業所になるための採用手法」にて詳しく講演する採用をテーマに執筆いたします。

●申込みはこちら → https://zoom.us/webinar/register/8917050464729/WN_MuATEeAXSleMtU6JPsrmTw

直近の「介護労働実態調査」によると、依然、介護現場における人材不足感は強くデータでは約2/3の事業所が人材不足感を訴えています。[]

 

「令和4年度介護労働実態調査」より[]

 

現時点ではこの傾向は日本の高齢化がピークを迎える2040年(「2040年問題」)まで劇的な改善を見込むことは難しいと考えられます。

 

そんな中、令和6年度の介護報酬改定では、「介護助手の活用」に対する評価や「外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し」がおこなわれるなど、新たな人材活用を推進する動きが出てきています。こういった新しい人材戦略を取り入れ、現在、ひいては10年後の人材不足を見据えた準備をおこなうことが、今後重要になってきます。

 

一方で、現場の核となるような人材、リーダーシップを発揮しながらチームケアを実現するスキルや、介護職としての専門性を持った人材の確保、育成も大きな課題となるでしょう。それには、従来の採用の中心であった、地域の介護人材だけでなく、海外人材や地域内外のプロフェッショナルのダブルワーク・ワークシェア等による活用等、柔軟な発想が必要です。そのような人材に働き先として選んでもらうにはどの様な施策が必要となるのか、紙面の都合上、「基本の考え方のポイント」を3つ書きます。より多くの内容は前出の無料セミナーの際に解説いたします。

 

ポイントその1:「仕事の意義と細分化した対象別の条件」

まず、見直すべき内容として真っ先に上げられるのは求人原稿の内容です。よく見られるのは仕事内容等を「高齢者の身の回りのお世話をする介護業務です」といった表現です。重要なのは、“その求人を見た時に他の事業所の求人とどう違うかが明確にわかる”ということです。しかし、実際にはただ「特別養護老人ホームでの介護職」ということだけしかわかりません。これでは、地域で他の事業所より優先して選んでもらえるようにはなりません。

 

では、選ばれる事業所になるにはどの様な観点が必要になるのでしょうか。まずは、自事業所の提供している「介護が何であるのか(何を大切にしているか)」、その意義から出発することが大切です。例えば、どの様なこだわりを持ってどの様な価値を提供しているのか、その中でどの様な役割を働き手に期待しているのか、それによって地域の他の事業所とどう違うのか、を伝えることが重要です。

 

そのためには、“具体的な仕事の内容の意図レベル”まで落とし込んで、説明をしていきたいところです。例えば、機能訓練に力を入れている事業所で介護職を採用したい場合、直接機能訓練を担当するわけではないスタッフにどの様な役割・レベルを期待するかを伝えたいところです。

 

「自立した生活を継続するために1日20分の歩行リハビリに力を入れている」

「リハビリはリハビリの専門職が担当するが、生活という視点で介護職も参加していく」

「介護職には直接の介護以外にも、利用者との日々のコミュニケーションの中で、やる気を引き出したり、利用者が本当に望んでいることは何かを引き出し、リハビリやケアに結び付ける重要な役割が求められる」

 

こういった表現をしていくことで、ただ介護をすることだけではなく、その事業所で介護職として働くことの意義が伝えられるようになります。

 

ポイントその2:「対象者の属性(タイプ)を分けたマーケティング」

もしリハビリ特化の施設で未経験の方でも受け入れたいと考えていれば「未経験者の方でも、まずは1カ月で利用者の顔を覚えながら、コミュニケーションを通じて信頼関係を築き、どのような目的でリハビリをしているのかを知ることから介護の経験も積んでいただく」「その後、リハビリスタッフに負けない知識を得るため、リハビリに関するカリキュラムと法人内資格を通じてプロとして成長してほしい」といった訴求をおこなうことができます。

また、経験者にフォーカスするならば「リハビリを通じて在宅生活を継続したいという利用者の希望に寄り添い叶える仕事」「これまでの経験を活かして利用者や家族へのニーズをくみ取り、リハビリ職と連携しながら自立支援を実現することを期待する」「リハビリ・栄養といった周辺知識も身に着け、より専門性の高いスキル・知識を取得」といった表現をすることができます。こうすることで、属性に応じたより効果的な求人記事を作成することができます。

 

さて、この場合の求人票について検討してみましょう。多くの場合は、条件が幅で表現されます。つまり、資格手当や給与の下限上限の幅で待遇の差異を表しているということです。しかし、より良い条件をより高度な人材に限定した求人票とすることで、見た目の条件そのものでも差異を感じる(目立つ)ことができることもあります。例えば、未経験者と経験者、無資格者と有資格者、経験年数や管理職経験等をもとに、条件の異なる求人を作成するという方法も一案でしょう。

 

以上のとおり、属性別の仕事の意義と条件の細分化、これらが自事業所の求人票の独自性を表現するために着手すべきポイントです。

 

ポイントその3:「様々な媒体(手段)から成功手法を見つける」

求人の内容そのものに工夫を凝らすことはとても重要です。それと同様に、どの様な媒体で求人をおこなうかも重要となってきます。介護事業所の求人をおこなう場合、非常に多くの媒体が候補として存在します。しかし、地域性も大きくかかわることから、この媒体が正解といえるものはあるとは言えません。ではどうすれば良いでしょうか。もちろん、成功しやすい方法はありますが、どの媒体が自事業所にとって有効なのか、色々試してみることがまず重要です。

 

下図は、介護業界における求人媒体の種類のイメージです。「地域媒体」「オンライン媒体」「イベント・広報活動」の大きく3区分に分かれていますが、非常に豊富な種類があることがわかります。

求人媒体の区分イメージ(スターパートナーズ社作成)

 

地域によって異なる媒体もあれば、オンラインで全国一律に使用できる媒体もあります。理想を言うならば、利用可能なものについては、全てを一度は試用してみて効果の測定をおこなっていただくのが良いと思います。その上で、効果の上がったものを今後、優先的に活用していくという方針を取ります。

 

また、特にオンライン媒体については、有料のものもあれば無料で使用できるものもあります。Instagram、X(旧Twitter)、Facebookなど無料で運用可能なものについてはリスクも殆どありません。継続的に活用しながら、その中で求人記事そのものを様々にカスタマイズし、より効果的な内容を模索していきましょう。

 

ポイント2の属性別の求人をおこなう場合、属性と媒体の組み合わせによって効果が異なります。例えば「地域媒体」における「集合広告」に掲載する場合、それを閲覧するのは広く“地域の中で”働く場所を探している場合が多いでしょう。対象は広がる分、介護の経験のある方等が見る割合は相対的に低くなると考えられます。一方、「オンライン媒体」における「求人ポータルサイト(介護)」の場合、少なくとも介護に対して強い関心のある以上の方が閲覧することが想定されます。経験、資格等でより高い条件の求人をおこないたい場合には、後者の方が効果的であると推察することはできます。

 

ただ、これは概ねその傾向があるという意味で、「地域媒体」において経験者、資格者が採用できないかというと決してそういうことはなく、実際に多くの経験者の採用に成功したという例もあります。トライ&エラーを通じて、法人内に知見を蓄積することが重要です。

 

以上、選ばれる介護事業所になるための採用手法の考え方の一部について解説してきました。本テーマにつきましては、2024年2月16日(金)に開催される無料オンラインセミナー「選ばれる介護事業所になるための採用手法」にて更に詳しく解説します。ご興味をお持ちの方は、是非、ご参加ください。

●申込みはこちら → https://zoom.us/webinar/register/8917050464729/WN_MuATEeAXSleMtU6JPsrmTw

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[ⅰ] https://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2023r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf

株式会社スターパートナーズ代表取締役 一般社団法人介護経営フォーラム代表理事

脳梗塞リハビリステーション代表 MPH(公衆衛生学修士)齋藤直路