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介護報酬改定の重要議題に関する具体的対応手法

2024.01.22

【目次】

  1. 次のアクションが見えてきた介護報酬改定の対策
  2. ①通所介護における個別機能訓練加算の人員配置要件の見直し
  3. ②居宅介護支援における介護支援専門員1人当たりの取扱件数
  4. ③介護ロボットや ICT 等のテクノロジーの活用促進


1.次のアクションが見えてきた介護報酬改定の対策

令和6年度介護報酬改定について、特に自社に関連のあるサービスの基本的な変更点については、ある程度把握いただいた頃かと思います。単位数の変更等、より具体的な内容については今後更に調整がおこなわれることになるので、情報を待つことになります。

ただ、現時点で判明していることで、既に対応の準備をおこなうことができるものもあります。こういったものには早めに着手した方が良いでしょう。今回は「①通所介護における個別機能訓練加算の人員配置要件の見直し」「②居宅介護支援における介護支援専門員1人当たりの取扱件数」「③介護ロボットや ICT 等のテクノロジーの活用促進」の対応について解説していきます。

2.①通所介護における個別機能訓練加算の人員配置要件の見直し

「通所介護における個別機能訓練加算の人員配置要件の見直し」については「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」で下記の様に書かれています。[ⅰ]

 

「通所介護、地域密着型通所介護における個別機能訓練加算について、機能訓練を行う人材の有効活用を図る観点から、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロにおいて、現行、機能訓練指導員を通所介護等を行う時間帯を通じて 1 名以上配置しなければならないとしている要件を緩和するとともに、評価の見直しを行う。」

「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」[ⅰ]

 

本文にもある通り「時間帯を通じて1名以上配置」という、実質的には常勤の機能訓練指導員を加配する必要があったものが撤廃され、機能訓練を実施する時間帯に2名以上の機能訓練指導員がいれば良いものとなります。要件が緩和される分、単位は引き下げとなることが考えられます。

従来より算定していた事業所においては、実質的な減算になることが考えられるためその対策を、従来は個別機能訓練加算(Ⅰ)イのみ算定していた事業所においては上位加算の算定の可能性を、それぞれ検討する必要があります。

従来より算定していた事業所では、減算をカバーするための新しい売上を創出する必要があります。今回は「サービス提供時間帯を通じて」という条件が緩和されることから、加配分の機能訓練指導員は柔軟に勤務につくことができるようになります。個別機能訓練を実施する時間以外については、他事業所、別事業での勤務が可能となりますので、現事業所以外での価値の創出が可能かどうかを検討するのが良いでしょう。

もともと算定していなかった事業所では、恐らくサービス時間帯を通じた機能訓練指導員の加配がネックになっていたのではないでしょうか。今回の改定により、実質的に必要な時間帯にのみいれば良いということになりますので、上位加算の算定はしやすくなるでしょう。また、看護師が機能訓練指導員を兼務している事業所においては、非常勤の理学療法士、作業療法士等を加配することで報酬がアップし、更にリハビリの専門性も上がるというメリットが生じます。是非、算定を検討していくべきでしょう。

3.②居宅介護支援における介護支援専門員1人当たりの取扱件数

「居宅介護支援における介護支援専門員1人当たりの取扱件数」については「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」で下記の様に書かれています。

 

「ア 居宅介護支援費()()の取扱件数について、現行の「40 未満」を「45未満」に改めるとともに、居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅱ)の取扱件数について、現行の「40 以上 60 未満」を「45 以上 60 未満」に改める。

イ 居宅介護支援費()の要件について、ケアプランデータ連携システムを活用し、かつ、事務職員を配置している場合に改めるとともに、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅰ)の取扱件数について、現行の「45 未満」を「50 未満」に改め、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅱ)の取扱件数について、現行の「45 以上 60 未満」から「50 以上 60 未満」に改める。」

「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」[ⅰ]

 

内容としては、取扱件数の上限が引き上げられるというものになります。もちろん、既存の人員配置で報酬アップができるようになるわけですから、取扱件数は上限近くまで増やしたいところです。しかし、ケアマネの実質的な負荷を考えると、現行のままというわけにはいかないでしょう。特に居宅介護支援費(Ⅱ)の算定を目指してギリギリまで取扱件数を増やしたいと考えた場合、事務職員の配置も必須となる、つまり新たな人件費もかかることになるので、慎重に判断をしていくことになります。

まず、自事業所での業務について整理をしましょう。その中で、削減が可能なもの、事務職員に委託できるもの、何らかの機器の導入で効率化できるものを見つけていきます。「AIケアプラン」の導入等も選択肢に入るでしょう。それらをおこなった上で、取扱件数を増やすことが実質的に可能かのシミュレーションをおこない、方向性を決めるのが良いでしょう。

幸い、まだ改定が実施されるまでは時間があります。この間に、調べて、検討しておくことが重要になります。

「ケアプランデータ連携システム」については「ケアプランデータ連携システムヘルプデスクサポートサイト」が開設されていますので、こちらを参照しながら導入を検討していきたいところです[]

「ケアプランデータ連携システムヘルプデスクサポートサイト」[]

4.③介護ロボットや ICT 等のテクノロジーの活用促進

「介護ロボットや ICT 等のテクノロジーの活用促進」で下記の様に書かれています。

 

「介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボットや ICT 等のテクノロジーの導入後の継続的なテクノロジーの活用を支援するため、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジー(※1)を1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うことを評価する新たな加算を設ける」

「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」[ⅰ]

 

これまでは人員配置要件の緩和や逓減性の緩和等、間接的な評価にとどまっていたICT化を通じた生産性の向上について、直接的に評価される加算が創設されることとなりました。科学的介護推進体制加算と同様、従来より報酬改定の主テーマとなっていた事項で、今回はそれほど評価が高くなくても、将来的には必ず算定が必要な加算となるのではないでしょうか。

対象となる事業所においては、是非、算定を目指していきたいところです。現在は「介護分野における生産性向上ポータルサイト」が開設されています[]。表記のある「ガイドライン」についてもこちらのサイトから閲覧可能となります。

もともと「利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会」については当該サービスでは設置が義務化されるものになります。まずは委員会の設置をおこないましょう。その際、ではこの委員会で何をおこなうかということになります。当面については「ポータルサイト」および「ガイドライン」の確認作業で良いでしょう。ただ、全く新しい取り組みとなりますので、委員会の開始時には経営トップより、当委員会の目的と開催意義について説明が必要です。

「義務化されたから設置する」という内容にはなるかと思いますが、その本質は「介護サービスの質の向上」と「職員の負担軽減」になります。かねがね説明させていただいておりますが、介護以外の業務を効率化し、時間の余裕を生み出すことで、その余った時間でより介護の量や質を向上させようというものが本来の意図となります。「ガイドライン」においても下図の様に示されている通りになります。

「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版」[]

 

「背景=法改正による義務化」「意義・目的=介護の質の向上、職員の負担軽減」をしっかりと伝えることで、委員会の運営を開始します。その中で、導入の意義があると考えられる機器が判明した場合、それを導入することで、加算の算定へとつながります。

加算を算定するためではなく、まずは委員会を機能させた上で必要だと判断されれば、導入、加算算定をおこなうという手順で考えるべきでしょう。

 

   以上、今回の介護報酬改定における主な議題について、具体的な対応手法について3点解説させていただきました。皆様も是非、詳細が発表されるのを待つだけでなく、現時点からも対策が可能なものについては、具体的な行動に移していただければと思います。

 

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[ⅰ] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36975.html

[Ⅱ] https://www.careplan-renkei-support.jp/

[ⅲ] https://www.mhlw.go.jp/kaigoseisansei/support/index.html

[ⅳ] https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html

株式会社スターパートナーズ代表取締役

一般社団法人介護経営フォーラム代表理事

脳梗塞リハビリステーション代表

MPH(公衆衛生学修士)齋藤直路