• 調剤
  • #薬局経営

治験結果と実臨床での有害事象との違い

2024.01.23

1月17日に一般社団法人ファルマ・プラス主催によるオンラインセミナー「治験結果と実臨床での有害事象との違い」が開催された。PMDAで新薬の審査等に携わった経験がある佐久嶋氏より、現場での薬剤師業務に活かせる内容が解説された。ここではその一部を紹介する。

 

【セミナー講師と演題】

演題:治験結果と実臨床での有害事象との違い

講師:北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構 臨床研究開発センター臨床開発推進部門 佐久嶋研氏

【目次】

  1. 有害事象と副作用の違い
  2. 副作用の考え方
  3. 副作用・安全性に関する情報ソース
  4. 添付文書から臨床試験にさかのぼる
  5. 事例の紹介
  6. まとめ


 1.有害事象と副作用の違い

有害事象とは、医薬品の服用後に起きた「あらゆる健康上の問題」のこと。医薬品との因果関係が明らかなものだけでなく、関係が確立していないものや、未知・不明なものも含む。

副作用とは、医薬品による作用のうち本来の作用(治療)以外の作用のことであり、「医薬品と因果関係が否定できないもの」をいう。

有害事象は広い意味合いをもち、その中で医薬品との因果関係が否定できないものが副作用で、副作用や安全性に関する情報を確認する際に、用語の意味を区別しておくことがポイントと説明した。因果関係のあり・なしは、時間的関係、関連の強さ、量・反応関係、結果の再現性、生物学的妥当性、曝露停止の効果などを参考に判断されているという。

 

2.副作用の考え方

続いて、副作用を4分割して考える方法について解説した。患者の訴えを「典型的な訴え」「非典型的な訴え」に、副作用を「よくある副作用」「まれな副作用」に分類する。「典型的な訴えでよくある副作用」は薬剤師であれば常識的、「非典型的な訴えでよくある副作用」はよくある副作用の典型的な訴えの多様性を知る必要がある、「典型的な訴えでもまれな副作用」は知っているかどうか、知らなくても調べてわかるかどうかがポイント、「非典型的な訴えでまれな副作用」は評価困難であるとそれぞれについて述べた。

 

3.副作用・安全性に関する情報ソース

情報を得るにはPMDAのウェブサイトが役立ち、医療用医薬品の情報を集める際に代表的なのは添付文書だが、それに加えて以下の情報が有効であるとした。

RMP資材として提供されている適正使用ガイド(医療者向けの資料で図などを盛り込み分かりやすく記載)

・最適使用推進ガイドライン(がん領域など注目度の高い薬で作成され、詳細な留意点などが記載されている)

・審査報告書(医薬品の深い知識が得られる)

そして、添付文書以外の安全性情報として以下を紹介した。

・インタビューフォーム(製薬企業が中心となって作成)

RMP(医療従事者向けと患者向けがあり、患者向け資材では特に副作用について分かりやすく記載してある)

・重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療者向けと患者・一般の方向けがあり、副作用ごとに作成されている)

 

4.添付文書から臨床試験にさかのぼる

添付文書が作成されるまでの簡略化した流れは、臨床試験⇒報告書⇒申請資料⇒審査報告書⇒添付文書となり、審査報告書と添付文書はPMDAが作成している。申請資料の一部と、審査報告書はPMDAのサイトで薬名を検索すると閲覧可能で、申請資料は日米EU共通の様式のため少し見づらさがあるが、「2-5臨床概括評価」や「2-7臨床概要」の部分に有効性や安全性がまとまっており、現場でも役立つだろうと説明した。

そして添付文書上では、「17臨床成績」に臨床試験の内容や結果、副作用について分かりやすく記載されている。

 

5.事例の紹介

添付文書の情報から臨床試験へさかのぼる方法を、例を挙げて解説した。

例:レベチラセタムの添付文書では、副作用として呼吸器の欄に「鼻咽頭炎(30.2%)」の報告がある。臨床試験を実施していた医療機関でインフルエンザが流行した影響があるのか?

まず、添付文書を確認すると、副作用の欄に「鼻咽頭炎(30.2%)」(現在、鼻咽頭炎は上咽頭炎という用語に置き換えられている)の記載がある。

続いて、審査報告書を確認すると、有害事象の主な事象として鼻咽頭炎の発生件数の記載があり、用量が多いほど発生件数が多いことが読み取れる。安全性の部分を確認すると、傾眠や不動性めまいなどの中枢神経系事象について記載されており、鼻咽頭炎については触れられていないことが分かる。

申請資料概要では、鼻咽頭炎について詳細なデータが確認できる。

上記をまとめると、承認時の審査報告書では鼻咽頭炎について特別な言及はされていないが、申請資料概要ではプラセボ群と比較してレベチラセタム群で多かったことが分かった。

今回、医療機関でインフルエンザが多かったか経緯は不明だが、なぜこの副作用が多いのだろうと疑問に思った際は、上記のような流れで審査報告書や申請資料をたどっていくとよいと説明した。

 

6.まとめ

最後に、副作用かもしれないと患者から訴えがあった時、薬剤師としてどう解釈したらよいのかについてまとめた。

  • 患者の訴えを傾聴し、患者に生じている症状に該当する医学用語を考える。
  • よくある副作用の非典型的な訴えや、まれな副作用の典型的な訴えの可能性も考えておく。
  • 添付文書の副作用に関する記載を確認し、必要に応じて審査関連の文書で理解を深める

そして、これらの情報を疑義照会等で活用する。

 

セミナー主催:一般社団法人ファルマ・プラス https://pharma-plus.info/

レポート作成:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部


有害事象から患者さまを守ることは薬局・薬剤師に課せられた重要な役割です。本セミナーの内容は副作用の疑いによる問合せへの対処方法まで解説されており、現場でも確認しておきたい内容だったと思います。

弊社の「MAPfor PHARMACY 」「MAPfor PHARMACY DX」シリーズをはじめとする調剤サポートシステムは、副作用など患者さまの安全を考慮した設計になっています。

⬇ MAPsfor PHARMACY 製品サイト ⬇

https://service.emsystems.co.jp/maps_series/for_pharmacy/

⬇ MAPsfor PHARMACY DX 製品サイト ⬇

https://service.emsystems.co.jp/maps_series/for_pharmacy_dx/

円滑な患者対応を行うための業務体制をお考えの際はぜひご相談下さい。(EM-AVALON編集部より)