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令和6年度介護報酬改定の全体概要と通所介護事業の見直しポイント

2024.01.29

介護・障害福祉事業者による法人・サービス種別横断的な活動をしている、一般社団法人全国介護事業者連盟の理事長を務めています斉藤正行です。本年より新たに連載コラムを寄稿させていただくことなります。どうぞよろしくお願い致します。

元日に「令和6年能登半島地震」が発生し、日増しに被害が拡大している状況に誰もが大変心を痛めていると思います。被害を受けられた全ての方に心よりお見舞い申し上げます。能登半島地域における介護事業所の被害状況も判明してきており、未だに断水や停電の続いている事業所が複数あります。事業の継続が難しい事業所の利用者は、近隣事業所と受入れ調整を行い、順次対応が行われている状況です。更には、避難所でも介護を必要としている方への支援が求められており、物的・人的支援が不足しています。当連盟においても、災害支援に向けて、お見舞金窓口を設置し、人的支援への協力とともに、全国の会員事業所へ要請しています。可能な限りの支援を継続していきます。

さて、本題に入りたいと思います。令和51219日に、『令和6年度介護報酬改定に関する審議報告』が取りまとめられました。全体改定率も翌20日には、1.59%(うち、処遇改善が0.98%)で決着し、各サービス・加算への単位数の割り振りと、見直し項目内容の最終取りまとめが行われ公表されます。また、改定実施時期についても、原則4月改定となりますが、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4サービスと、現在の処遇改善関連加算が一本化される新しい処遇改善加算も6月改定となることが決まりました。改定実施時期がサービスや加算によって異なることは、過去初めてのことであり、事業者は実施時期の違いを正しく把握し、準備を進めていかなければなりません。

取りまとめられた審議報告の中身も確認していきたいと思いますが、4つの基本的な視点が示されており、そのポイントとともに整理します。まず1つ目の視点は、『地域包括ケアシステムの深化・推進』です。同時改定であり、「医療と介護の連携の推進」「看取りへの対応強化」や「感染症や災害への対応力向上」「認知症対応力向上」「質の高い公正なケアマネジメント」などがポイントとなります。2つ目の視点は、『自立支援・重度化防止に向けた対応』です。今後の制度改革の要ともなるテーマであり、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等」「自立支援・重度化防止に係る取組の推進」「LIFEを活用した質の高い介護」がポイントとなります。3つ目の視点は、『良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり』です。人口減少・労働人口減少社会での介護人材確保に向けた極めて課題解決が困難なテーマであり、「介護職員の処遇改善」「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」「効率的なサービス提供の推進」がポイントとなります。4つ目の視点は、『制度の安定性・持続可能性の確保』です。今回はプラス改定を確保できましたが、基本報酬が濃淡をつけてサービス・加算への割り振りへと繋がるテーマであり、「評価の適正化・重点化」「報酬の整理・簡素化」がポイントとなります。

今後、本コラムではこの改定の4つの視点に基づく、各サービスの見直し項目について、通所系、訪問系、施設・居住系、地域密着型サービス、居宅介護支援といったカテゴリーでの解説と、事業者の取るべき対応についてお伝えしていきたいと思います。

今回はまず、令和6年度改定における通所系の解説。通所介護及び地域密着型通所介護の見直しポイントについて、お伝えします。

通所介護に限定した見直し項目は6つとなります。

1.3%加算・規模区分特例の見直し

2.認知症加算の見直し

3.入浴介助加算の見直し

4.個別機能訓練加算の見直し

5.豪雪地帯等における通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化

6.送迎に係る取扱いの明確化

3%加算・規模区分特例の見直し」は、新型コロナウイルス感染症の5類移行を受けて、特例措置は廃止するとともに、災害や新たな感染症対応への特例として制度は残ることになります。「認知症加算の見直し」は、算定要件に、個別の事例検討や、認知症ケアに関する研修・会議等の定期開催を求めるとともに、利用者における認知症の方の割合が緩和されることになります。「入浴介助加算の見直し」は、加算Ⅰの算定要件に、職員に対する研修等の開催を求めることとし、加算Ⅱの算定要件は、医師等による利用者宅への訪問指導が、介護職の訪問に対してオンラインでの医師等による指導でも算定可能とする要件に緩和され、施設の浴室環境が個浴ではない浴室環境でも算定可能となる要件が明確化されます。「個別機能訓練加算の見直し」は、加算Ⅰのロにおける機能訓練指導員の配置要件を緩和するとともに、単位数の削減が行われることになります。「豪雪地帯等における通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化」は、送迎時において、天候等の変更による到着時間の遅れ等を考慮して、介護報酬の算定時間を取扱うことが明確化されます。「送迎に係る取扱いの明確化」は、送迎先の定義の見直し、他の介護・障害福祉事業所と連携して送迎できることが明確化されます。

 この6項目に加えて、他サービスとも共通する中で、通所介護に影響の大きな見直し項目として、「ADL維持等加算の見直し」は、アウトカム評価をいっそう充実させる観点から、ADL利得の計算方法の簡素化や、加算Ⅱの算定要件の緩和が行われます。また、「科学的介護推進体制加算の見直し」は、LIFEの活用促進の観点から、入力負担の軽減や、データ提出時期・頻度の統一化が行われます。

 その他にも、処遇改善関連加算の一本化、BCP未策定に対する減算の導入、高齢者虐待防止の推進、身体拘束等の適正化の推進、テレワークの取扱いの明確化、管理者の兼務範囲の明確化、両立支援への配慮、技能実習生等の配置要件緩和、地域区分の見直しなどが行われることになります。

 『令和6年度介護報酬改定の審議報告』を踏まえると、6年に1度の同時改定ではありますが、事業者への影響度については、前回改定(令和3年度)より限定的であると思います。しかながら、ここで、事業者が安心感を得て、変革への意識が欠如してしまうことは絶対に避けなければなりません。前回改定(令和3年度)で示された従来の介護保険制度とは異なる新しい概念、「科学的介護」「自立支援・重度化防止」「生産性向上」といったテーマに基づく改革について、確実に現場に浸透させるための令和6年度介護報酬改定であると、認識を持たなければなりません。事業者は、運営する通所介護の専門性を高める努力を行い、コンセプトや事業特性に応じて、制度改革の方向性を踏まえた対応が求められることとなります。

全国介護事業者連盟

理事長 斉藤正行