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令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の全体的概要(改定率全体で+1.12%)

2024.02.19

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の改定率は、全体で+1.12%となった。

今回の報酬改定では、新型コロナウイルス感染症や社会情勢の影響により、“物価高騰“”賃金上昇“”経営の状況“”人材確保の必要性“などを踏まえ、令和626日に提示された「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定案」が示された。

報酬改定の時期は、令和641日に施行される。

ただし、新たに追加措置となる福祉・介護職員の処遇改善分及び処遇改善加算等の一本化については、令和661日施行とされる。

※令和62月~5月までは、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金により、障害福祉職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を2%程度(月額平均6,000円相当)引き上げるための措置を、令和62月から前倒しで実施するために必要な経費を令和5年度内に都道府県に交付されることが決まった。また新サービスとなる就労選択支援に関する改定事項については、令和7101日施行となることが取り決められた。

 

報酬改定の基本的な改定の大きな方向性として、下記のように示されている。

・障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

 →様々な障害者がどの地域においても安心して地域生活を送れるような対応に向けて、重度化や高齢化などの地域ニーズに対応することが望まれている。

重度対応を行う中で、医療分野との連携を行うことでの加算ができるなど対応がされている。

 

・社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応

 →障害児には適切なアセスメントとこどもの特性を踏まえた総合的な支援・専門的な支援や関係機関との連携強化等を進めることが求められる。障害者には一般就労の移行や就労支援施策は着実に進展している中で、事業の安定的、効率的な実施、生産活動収支や工賃の改善を図るような対応も行われる。

 

・持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

 →一部サービスにおいて、サービス提供時間による報酬体系の見直しを行われることや、BCP(業務継続計画)の対応や虐待防止・権利擁護など法人としての対応が必要な項目がある。

参考:厚生労働省 令和5年12月6日障害福祉サービス等改定報酬検討チーム資料

 

 

障害福祉サービス等報酬改定の内容自体は、令和55月から議論を行い、49の関係団体からヒアリングを実施の上で、個々のサービスの現状と論点を整理しながら検討を積み重ねられた。

今回の報酬改定において、令和511月に公表された令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果も参考に、報酬改定内容(案)にも反映されている。

今回は、障害福祉サービス等報酬改定に関して全体的概要をお伝えする。

 

(内容)

(1)一本化される新たな処遇改善加算

(2)障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

(3)社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応

  • 持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

 

(1)一本化される新たな処遇改善加算

現在、処遇改善加算は3種類ありますが、令和66月以降に一本化されることになりました。

新たな処遇改善加算の創設は、障害福祉の現場で働く方々にとって、賃金改善につながるように改定され、職種間の配分ルールが統一される。

福祉・介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な配分を認められる。現在は、特定処遇改善加算で、グループごとに処遇改善加算を配分するルールを定める必要があり、事業者は加算の管理が細かく必要であった。今回はそのグループごとの配分ルールが撤廃されることになったため、今後加算取得を進めていくことが容易になることが予想される。

またベースアップ等支援加算のような配分ルールは踏襲され、一定要件として、新加算Ⅳという加算種類の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てるということが要件となるため、毎月月額賃金の支払いは必要になる。

また今回加算の種類が変更となるため、職員の評価体系や支払いと利用者様への説明対応が必要となる場合もあり、令和6年度末までは、現行の3種類の加算の取得状況に基づく加算率を維持する経過措置が設けられることになった。

 

(2)障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

①障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実

○障害者の入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者がどの地域においても安心して地域生活を送れるよう、地域生活支援拠点等の整備の推進、グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価の実施、障害の重度化や障害者の高齢化などの地域ニーズへの対応等を行う。

○障害者が希望する生活を実現するために重要な役割を担う相談支援について質の向上や提供体制の整備を図るとともに、障害者本人の意思を尊重し、選択の機会を確保するため、意思決定支援を推進する。

○特別な支援を必要とする強度行動障害を有する障害者等への支援体制の充実を図る。

 

②医療と福祉の連携の推進

○診療報酬、介護報酬と同時改定である機会をとらえ、医療機関と相談支援の連携について、多様なニーズに対応しつつ、さらなる促進を図る。

○医療的ケア児の成人期への移行にも対応した医療的ケアの体制の充実や重度障害者が入院した際の特別なコミュニケーション支援の充実を図る。

③精神障害者の地域生活の包括的な支援

○精神保健福祉法改正に伴い、精神障害者等が地域社会の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、就労等の社会参加、地域の助け合い、教育・普及啓発が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を一層推進する観点から、入院から退院後の地域生活まで医療と福祉等による切れ目のない支援を行えるよう、医療と障害福祉サービス等との連携を一層進めるための仕組みに対する評価を行う。

 

(3)社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応

①障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築

○児童発達支援センターを中核に、身近な地域でニーズに応じた必要な発達支援が受けられる体制整備を進めるとともに、地域の障害児支援体制の充実を図る。

〇適切なアセスメントとこどもの特性を踏まえた総合的な支援・専門的な支援や関係機関との連携強化等を進め、個々の特性や状況に応じた質の高い発達支援の提供を推進する。

○医療的ケア児や重症心身障害児、強度行動障害を有する児をはじめ、より専門的な支援が必要な障害児への支援の充実を図り、障害特性に関わらず地域で安心して暮らし育つことができる環境整備を進める。

〇養育支援や預かりニーズへの対応など、保護者・きょうだいへの家族支援を推進し、家族全体のウェルビーイングの向上を図る。

〇保育所等への支援を行いながら併行通園や保育所等への移行を推進するなど、インクルージョンの取組を推進し、障害の有無に関わらず全てのこどもが共に育つ環境整備を進める。

○障害児入所支援について、家庭的な養育環境の確保と専門的支援の充実、成人期に向けた移行支援の強化を図り、施設での障害の育ちと暮らしを支える。

②障害者の多様なニーズに応じた就労の促進

○障害者の一般就労への移行や就労支援施策は着実に進展している中で、さらに障害者の就労を支援するため、事業の安定的、効率的な実施、生産活動収支や工賃の改善を図る。

○本人の就労ニーズや能力・適性とともに、就労に必要な支援や配慮を整理し、個々の状況に応じた適切な就労につなげる新しい障害福祉サービスである就労選択支援の円滑な実施に向けて対象者等の要件について整備する。

 

(4)持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

○サービス提供事業者や自治体の事務・手続き等の負担軽減の観点から、事務簡素化等に取り組む。

〇障害者虐待の防止・権利擁護のため、身体拘束適正化の徹底や同性介助の推進を図る。

○障害福祉サービス等の持続可能性の確保の観点から、長期化した経過措置への対応の検討なども含め、メリハリのきいた報酬体系とするとともに、サービスの内容・質に応じた評価や、透明性の向上を図る。

 

今後、令和626日の令和6年度障害福祉サービス等報酬改定案を基に、改定案の解釈について、具体的な議論が進められることになる。

 

 

日本クレアス税理士法人