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在宅サービスにおける法改正の動向と今後の事業戦略

2024.02.20

【目次】

  1. 訪問介護は基本報酬が減算
  2. アウトカム評価の本格化に備えて早めの準備を
  3. 各種体制の構築が在宅サービスにも求められる


1.訪問介護は基本報酬が減算

1月22日に第239回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、令和6年度介護報酬改定についての詳細に関する提案が示されました。在宅サービスにおける、主要な変更点について簡単に解説していきたいと思います。尚、本稿と同一テーマの詳細の解説となる無料オンラインセミナー「在宅サービスにおける法改正の動向と今後の事業戦略」が2024年3月22日に開催されます。どなたでもお気軽に参加いただけますので、本稿にご興味をお持ちいただけた方は、是非、お気軽にご参加いただければと思います。

 

まず、訪問介護(および訪問介護に類する定期巡回・随時対応型訪問介護看護等)については、基本報酬が減算という大きな改定がありました。人件費や原材料費等の値上がりにより、介護サービスの運営が全体的にひっ迫している中、この減算は大きな驚きをもって迎えられたように思います。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について[]

 

赤字で示されている通り、訪問系サービスにおいては処遇改善加算の加算率が高くなっていることを受けてのものであるとされています。ただ、実際的には人件費率を引き上げることを余儀なくされることになります。

そうすると、他の加算での収支改善を図っていく必要が生じます。訪問介護の場合、今回の改定では「口腔連携強化加算」が新設されました。これは、事業所の職員が利用者の口腔の健康状態の評価を実施し、その結果を歯科医療機関および介護支援専門員に情報提供した場合に算定されるものとなります。150単位と決して多くはありませんが、こういった加算を着実に算定していくことが重要となるでしょう。

また、単位は変わらずですが、特定事業所加算については重度者対応要件に看取り期の利用者への対応実績が含まれることとなりました。こういった要件の変化を確認し、改めて算定ができないか確認が必要になるでしょう。

ただ、大きなポイントはやはり処遇改善加算の比重が高まることといえるでしょう。特に訪問系サービスについては、今後人材の確保が大きな課題になります。処遇改善加算の加算率が上昇するこのタイミングで、給与体系の見直しなども行えるでしょう。

「①単純な給与の引き上げ」「②希望が少ない時間帯等への加算や手当を設定」等して、分配率を見直しつつインセンティブを設定することで、採用面でも強みを作っていきたいところです。

2.アウトカム評価の本格化に備えて早めの準備を

通所介護においては「2.自立支援・重度化防止に向けた対応」における改定点が目立ちました。

入浴介助加算Ⅱについては、算定率がなかなか上がらなかった背景もあり、介護職員が訪問してICT機器を活用して状況把握をおこなうことが認められる等、要件は緩和されることとなりました。また、QAにもともと示されていた、通所介護計画での記載を個別の入浴計画の作成に代えることができるという点について、要件に改めて明示されることになりました。入浴介助における自立支援の考え方は、今後も継続していくことになりそうなため、まだ算定できていない事業所については算定の体制構築を目指していく必要がありそうです。

他、「リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の見直し」においては、記載事項の見直しが、「科学的介護推進体制加算の見直し」においてはLIFEのデータ提出頻度を3ヶ月にすることと入力項目の定義の明確化をおこなうことなどが示されています。また、「アウトカム評価の充実のためのADL維持等加算の見直し」においては、ADL利得の要件の見直しおよびADL利得の計算方法の簡素化がおこなわれました。

これらは今回は大きな改定とはなっていませんが、あくまでも過渡期にあるといえるでしょう。特に、アウトカム評価については今後の介護報酬の体系においてかなり重要な位置を占める項目であることから、LIFEの項目の整理等が進んだ先に大幅な強化がおこなわれることが想定されます。早いうちから体制を構築し、来るべき大きな改定に備えておくことが重要でしょう。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について[ⅰ]

 

また、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロについては、加配分の機能訓練指導員の常勤要件が無くなり、代わりに単位が76単位(※(Ⅰ)イについては56単位)となり、加配分の差は20単位となりました。従来より常勤職員を雇用していた事業所にとっては、この切り下げは厳しい条件となるでしょう。他の事業所との兼務等を通じて、生産性の向上を図る必要がありそうです。

一方で看護師が機能訓練指導員を兼務している事業所においては、非常勤の理学療法士、作業療法士等を加配することで報酬がアップし、更にリハビリの専門性も上がるというメリットが生じます。是非、算定を検討していくべきでしょう。

3.各種体制の構築が在宅サービスにも求められる

他、多くのサービスに共通する事項として「業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体的拘束等の適正化の推進」等が挙げられます。特に前の2つについては全サービスにおいて「業務継続計画未実施減算」や「高齢者虐待防止措置未実施減算」が創設されることになります。いずれも体制減算となることから、事業所の運営そのものの中で確実に遂行させていく必要が生じてきます。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について[]

 

そして重要なのは、これらを職員が中心となって運用・改善していくための仕組みを作るということです。定期的な委員会の開催を定義するとともに、1年のどの時期にどの内容について議論をおこない、決定していくか等、まずはフォーマットを作ることが重要です。

フォーマットの構築方法等、具体的な取り組みの流れについては、無料オンラインセミナー「在宅サービスにおける法改正の動向と今後の事業戦略」にて更に詳しく解説しますので、ご興味をお持ちいただけました方は是非ご参加をいただければと思います。

 

「在宅サービスにおける法改正の動向と今後の事業戦略」についてお届けする無料オンラインセミナーは2024年3月22日に開催されます。ご興味をお持ちの方は、是非、ご参加いただけますと幸いです。

 

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[ⅰ] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37407.html

株式会社スターパートナーズ代表取締役

一般社団法人介護経営フォーラム代表理事

脳梗塞リハビリステーション代表

MPH(公衆衛生学修士)齋藤直路