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介護事業所における人事制度構築のポイント②

2021.11.26

介護事業所における人事制度構築のポイント②

株式会社スターパートナーズ 代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム 代表理事
脳梗塞リハビリステーション 代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤 直路

 

      • 人事評価制度とキャリアパス制度の違い

      今回から次回にかけて、入職後の成長をうながすための教育システム、主に人事評価制度とキャリアパス制度についてお話しをさせていただきます。まずはじめに、これらがどのような制度かについてご説明します。

      人事評価制度は、職員の勤務実績などを一定期間で区切って評価し、それを賞与や昇給などの処遇に反映させるものです。制度に位置付けられた項目ごとに評価をする場合や、設定した目標の達成度合いを評価する場合があります。

      技術よりも実績が評価の中心となり、例えば「●●を新しくできるようになった(成長した)」ことや「好ましい姿勢で仕事をしていた」といったことが評価対象となります。基本的に実績をみるため、評価は定められた期間内のみを対象とし、今回分の評価が終わったら次の期間はまっさらな状態から改めて評価します。

      これに対して、法人内で必要とされる技術を身につけながらキャリアアップをしていく道筋を示しているのがキャリアパス制度です。キャリアパス制度は別名「法人内資格制度」とも呼ばれ、その名の通り法人独自の資格を取るイメージになります。

      資格を取得するのですから、もちろん勉強をし、必要な技術を身につける必要があります。そして、それらを十分に身につけたかの判断をするために、試験をおこなったり、チェックシートを用いて技術の取得状況を評価し、一定基準を超えたらランクアップをするということになります。

      人事評価制度が実績を評価するのに対し、キャリアパス制度は「●●ができる」という能力・技術を評価します。一般的な資格と同様、基本的に上がったランクが下がることはありません。また、ランクに応じて一定の手当などが支給される場合があります。

      「評価制度とキャリアパス制度」(スターパートナーズ社作成)

      • 人事評価制度導入の際、気を付けること

      人事評価制度を構築していくためのポイントとしてまずはじめにお伝えしておきたいのは、こういった教育システムを導入する場合は出来合いのものではなく、是非、自前のものを構築していただきたいという点です。

      人事評価制度はある一定期間の成果や姿勢を評価し、職員の成長につなげるものです。それを教育システムとして機能させるには、事業所として大切としているものが何かを示し、その実現に対する努力や成果を評価することが必要になります。

      事業所ごとに大切にしていることは、当然のことながら事業所ごとに異なります。利用者の満足度を優先的に評価する事業所があれば、利用者のADLの維持・改善の取り組みを評価する事業所もあります。そして、これらを実現していくための道筋を評価対象項目とするのですが、それはもちろん、目的としている物や実際に取り組んでいる内容で異なります。

      少なくとも出来合いのものでは、その全てをフォローすることは難しいです。たとえば、出来合いのものを下敷きにしつつも、自事業所独自の考え方、特に介護の核となる部分については、議論をしながら盛り込んでいくべきでしょう。

      その際には、一部の幹部職員だけではなく、現場で活躍されている若手の職員も含めたワーキンググループを組織しておこなうことをお勧めしています。密室で決められた制度にしない(みんなで決めた決まりにして了承を得る)こととともに、最も大きな狙いは、制度構築を通じて法人の求めるものを伝えられる職員を育てることにあります。

      ひとつひとつの項目を掘り下げていく人事評価制度は「なぜ、それが評価されるのか」「法人がどういったことを目指しているか」を頂点に、現場での実践の状況とのすり合わせをおこないながら構築していきます。

      現場での動きの意図を理解するとともに、改めてどのような取り組みが必要かを見直す機会にもなります。

      是非、こういった場には若手を積極的に登用し、経験を積む機会にしていきたいところです。

      • 人事評価制度構築の具体的な流れ

      ワーキンググループを組織した後、まず伝えるべきことは制度導入の目的です。

      人の価値を決めることではなく、人を育てることが目的であるとかならず伝えましょう。さらに、そのためのポイントとして、基本的には3段階評価で「最低限これはできないと困る」「ここまでできたら十分合格点」「ここまでできたらみんなの見本!」を目安に制度を設計することを伝えます。

      たとえば「利用者理解」という項目があったとして、

      ●最低限これはできないと困る

      ⇒顔と名前が一致していて、特記事項を理解している。

      ●ここまでできたら十分合格点

      ⇒サービス提供を通じて積極的にコミュニケーションを図り、そこで得た情報を他職員と共有している。

      ●ここまでできたらみんなの見本!

      ⇒ケアプランやケースファイル等を閲覧し利用者ごとの目標、疾病、ADLの状態等についてより深く
      理解している。

      という例を示せば、ワーキンググループの方にも成長を促す制度であるという意図が何となく伝わります。

      よくある「1~5の段階評価」ではなく、具体的な行為・姿勢が評価基準となっていることがポイントです。

      「段階評価は評価が難しい」(スターパートナーズ社制作)

      これを示すことで「次の段階を目指すにはどうすれば良いか=成長の方向性」と、評価の基準をより明確にすることができ、指導をおこなっていく上でもより具体的な説明をすることができます。また、レベルアップしていくことを考えると、みんな一律の評価基準ではなく、例えば経験や職責ごとに異なる基準を設けることも重要です。

      ただ、ここでは次の段階に進んでいくことも考慮が必要なので、例えば「新人(1~3年)」の場合、「中堅(3年~)」の評価項目は、通常の1/2だけ反映するといった設計をすることも有効です。

      多くの場合、この段階は「新人」「中堅」「管理者」の3段階に分け、それぞれの項目ごとに5~10程度の評価項目を策定します。これらを示した上で、ワーキンググループでは段階ごとの評価項目を定め、さらに評価基準を設定していきます。

      通常は半年程度の時間をかけて設計し、運用に入ります。

      • 人事評価制度の運用について

      実際の運用をおこなう上で重要なのは、繰り返しになりますが、人事評価制程度の目的を「人の価値を決めること」ではなく「人を育てること」と捉えることです。評価して終わりではなく、より良い方向への変化を生み出す仕組みを作らなければなりません。

      その時に重要となるのは「意識付け」と「フォロー」です。まず、評価制度の運用を開始する際、事前に全体像を説明しておくことが重要です。また、運用開始後に入職された方にも、きちんと説明をしておきましょう。

      説明後、6ヶ月を1単位に年2期で実施する法人様が多いですが、その定められた期間の行動や姿勢を期間終了後に評価という流れになります。

      この評価期間中に重要なのは、評価基準をもとにきちんと評価者から指導をおこなうことです。指導がない状態で評価を下したとしても「なぜ、そのとき何も言ってくれなかった」という反発を生みますし、何より成長につながりません。継続的な指導をおこなうことで、意識も芽生えてくることになります。

      期間終了後の評価は、自己評価をおこなったのち、評価者による評価、責任者による承認という流れになります。責任者の承認が完了すれば、最も重要な評価面談に移ります。ここでは評価者と対象者が面談し、特に評価が分かれた部分、自己評価より評価が良かった面、悪かった面両方をあげ、それぞれ今後具体的にどう改善していくかを相談します。

      この評価面談は指導が目的ではなく、あくまでも本人と評価者の目線をあわせるためにおこないます。面談の趣旨説明でも、そのことを伝えましょう。マイナスポイントはクッション言葉を置きながら、改善点を具体的に示します。評価面談の質を均質にするために、面談の流れを確認しながら必要事項を記入できる面談シートなどを準備すると良いでしょう。

      これらの面談まで完了した段階で、当期の人事評価は完了し、その結果を賞与や昇給等に反映させていきます。これを繰り返すことで職員様各自のPDCAを回し、成長につなげていきます。