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外来・在宅ベースアップ評価料の新設

2024.02.21

令和6年度診療報酬改定では、物価上昇に伴う賃上げに対応することが重要課題とされ、看護職員、薬剤師、その他の医療関係職種の賃上げについては、令和6年度にベースアップ+2.5%、令和7年度にベースアップ+2.0%を実施していくための特例的な対応として、年末の大臣折衝にて診療報酬改定率 +0.61%が設定されています。

【目次】

  1. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
  2. (新)外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(1日につき)
  3. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)
  4. (新) 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)(1日につき)
  5. まとめ


1.外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)

外来医療または在宅医療を実施している医療機関(医科)において、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価として「外来・在宅ベースアップ評価料」が新設されます。

2.(新)外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(1日につき)

1初診時 6

2再診時 2

3訪問診療時

 イ同一建物居住者以外の場合 28

 ロ同一建物居住者の場合 7

 

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定に当たっては、事前に地方厚生局長等に届け出たうえで、主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制を整えた場合に、初診時、再診時、短期滞在手術1、訪問診療時に算定できるとしています。

 

施設基準は以下の通りです。

  1. 外来医療又は在宅医療を実施している保険医療機関であること。
  2. 主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)が勤務していること。専ら事務作業(医師事務作業補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く)を行うものは含まれない。
  3. 評価料を算定する場合は、令和6年度及び令和7年度において対象職員の賃金(役員報酬を除く)の改善(定期昇給によるものを除く)を実施しなければならない。ただし、令和6年度において、翌年度の賃金の改善のために繰り越しを行う場合においてはこの限りではない。
  4. 基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定した上で行い、基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げにより改善を図ることを原則とする。
  5. 対象職員の基本給等を令和5年度と比較して一定水準以上引き上げた場合は、 40 歳未満の勤務医(歯科医師を含む)及び事務職員等の当該保険医療機関に勤務する職員の賃金(役員報酬を除く)の改善 (定期昇給によるもの除く)を行うことができること。
  6. 令和6年度及び令和7年度における保険医療機関に勤務する職員の賃金の改善に係る計画を作成していること。
  7. 計画に基づく職員の賃金の改善に係る状況について、定期的に地方厚生局長等に報告すること。

別表1[対象職員]

ア薬剤師 イ保健師 ウ助産師 エ看護師 オ准看護師 カ看護補助者

キ理学療法士 ク作業療法士 ケ視能訓練士 コ言語聴覚士 サ義肢装具士 

シ歯科衛生士 ス歯科技工士 セ歯科業務補助者 ソ診療放射線技師 タ診療エックス線技師 チ臨床検査技師 ツ衛生検査技師 テ臨床工学技士 ト管理栄養士 ナ栄養士

ニ精神保健福祉士 ヌ社会福祉士 ネ介護福祉士 ノ保育士

ハ救急救命士 ヒあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師

フ柔道整復師 ヘ公認心理師 ホ診療情報管理士 マ医師事務作業補助者

ミ その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)

3.外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)

また、「外来・在宅ベースアップ評価料(I)」では、賃上げが十分ではない医療機関への救済措置として新たに点数が新設されています。

無床診療所に対しては、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金の改善を強化する必要がある医療機関において、賃金の改善を実施している場合の評価が新設されます。

4.(新)  外来・在宅ベースアップ評価料()(1日につき)

1 外来・在宅ベースアップ評価料()1

 イ 初診又は訪問診療を行った場合      8

 ロ 再診時                 1点

2 外来・在宅ベースアップ評価料()2

 イ 初診又は訪問診療を行った場合      16

 ロ 再診時                 2

8 外来・在宅ベースアップ評価料(8

 イ 初診又は訪問診療を行った場合      64

 ロ 再診時                 8

 

算定要件については、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と同様に、事前に地方厚生局長等に届け出たうえで、主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制を整えた場場合に、外来患者に対して診療を行った際に、基準に係る区分(8段階)に従い、それぞれ所定点数を算定するとしています。

 

施設基準は以下の通りです。

  1. 入院基本料、特定入院料又は短期滞在手術等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く)の届出を行っていない保険医療機関であること。
  2. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関であること。
  3. 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)及び歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込みの10倍の数が、対象職員の給与総額の12厘未満であること。
  4. 外来・在宅ベースアップ評価料()の保険医療機関ごとの区分については、当該保険医療機関における対象職員の給与総額、外来・在宅ベースアップ評価料()及び歯科外来・在宅ベースアップ評価料()により算定される点数の見込み並びに外来・在宅ベースアップ評価料()及び歯科外来・在宅ベースアップ評価料()の算定回数の見込みを用いて算出した数【A】に基づき、別表2に従い該当する区分のいずれかを届け出ること。ただし、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の施設基準の届出を行う保険医療機関については、同一の区分により届け出ること。

  5.「対象職員の給与総額」は、直近12か月の1月あたりの平均の数値を用いること。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込みは、初診料等の算定回数を用いて計算し、直近3か月の1月あたりの平均の数値を用いること。また、毎年3、6、9、12月に上記の算定式により新たに算出を行い、区分に変更がある場合は地方厚生局長等に届け出ること。 ただし、前回届け出た時点と比較して、直近3か月の【A】、対象職員の給与総額、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込み並びに外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)及び歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込みのいずれの変化も1割以内である場合においては、区分の変更を行わないものとすること。 
  6.評価料を算定する場合は、令和6年度及び令和7年度において対象職員の賃金(役員報酬を除く)の改善(定期昇給によるものを除く)を実施しなければならない。ただし、令和6年度において、翌年度の賃金の改善のために繰り越しを行う場合においてはこの限りではない。 
  7.基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定した上で行い、基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げにより改善を図ることを原則とする。 
  8.令和6年度及び令和7年度における保険医療機関に勤務する職員の賃金の改善に係る計画を作成していること。 
  9.計画に基づく職員の賃金の改善に係る状況について、定期的に地方厚生局長等に報告すること。 
  10.対象職員が常勤換算で2人以上勤務していること。ただし、特定地域に所在する保険医療機関にあっては、当該規定を満たしているものとする。 
  11.主として保険診療等から収入を得る保険医療機関であること。

5.まとめ

 政府は医療機関の賃上げに対して、外来・在宅ベースアップ評価料ⅠおよびⅡの2つの新たな点数を用意しました。他業界に比べ、医療業界は賃金が安いと指摘されており、ましてや診療報酬改定が2年に1回の周期であるため、急速な物価変動を伴う賃金上昇への対応が難しい業界です。賃金の引き上げがなければ他業界に人材が流出してしまいます。

今回の試み(外来・在宅ベースアップ評価料Ⅱ)により、定期的に変更が可能な点数が創設されたことになり、結果として賃金を他業界に比べても遜色のない水準に引き上げることができるか、今後の動向に注目する必要があります。