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特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料へ

2024.02.21

2月14日に令和6年度診療報酬改定の答申が行われました。答申によって、ひとまず改定内容が確定されたことになります。今回、特に注目すべきは「生活習慣病管理」の項目です。内科をはじめ、多くの診療科で大きな影響をもたらす内容です。対策次第では大きな影響がありますので、早めの対策が必要です。

【目次】

  1. 生活習慣病医学管理料を2区分に
  2. 特定疾患の対象疾患の見直しの影響
  3. 特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の算定プロセスの違い
  4. 外来データ提出加算の算定も視野に
  5. まとめ


1.生活習慣病医学管理料を2区分に

生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点から、「生活習慣病管理料」の評価及び要件の変更が行われ、検査等の包括の有無で、生活習慣病管理料(Ⅰ)および()と2区分となりました。

 

生活習慣病管理料(Ⅰ)

1脂質異常症を主病とする場合 610

2高血圧症を主病とする場合 660

3糖尿病を主病とする場合760

※検査等を包括する場合

 

生活習慣病管理料(Ⅱ)333

※検査等を包括しない場合

 

なお、生活習慣病管理料における主な変更点としては、以下の通りです。

(1)生活習慣病管理料における療養計画書を簡素化するとともに、令和7(2025)年から運用開始される予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合、血液検査項目についての記載を不要とする。あわせて、療養計画書について、患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす。

(2)診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うことを要件とする。

(3)生活習慣病の診療の実態を踏まえ、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止する。

(4)歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等の多職種と連携することを望ましい要件とするとともに、糖尿病患者に対して歯科受診を推奨することを要件とする。

また、外来管理加算の併算定が不可となっています。さらに、生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定した月から6月間は、生活習慣病管理料(Ⅰ)は、算定できないとしています。

2.特定疾患の対象疾患の見直しの影響

次期改定議論の中で、生活習慣病患者の管理について「生活習慣病管理料」と「特定疾患療養管理料」の内容が似通っているという指摘がありました。そこで、特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症及び高血圧を除外することで、生活習慣病管理料に一本化することとなりました。

また、この対象疾患の変更は「特定疾患処方管理加算(66点から56点に引き下げ)」についても同様となっています。さらに「特定疾患処方管理加算」については、特定疾患処方管理加算1(14日以内)を廃止するとともに、特定疾患処方管理加算2(28日以上)の評価を見直し、28日超処方だけではなく、リフィル処方箋を発行した場合も算定が可能となります。

3.特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の算定プロセスの違い

特定疾患療養管理料から生活習慣病が除外されたことによって、生活習慣病管理料への算定変更が必要となります。しかしながら、2つの点数は算定要件が大きく異なるため、すんなりと変更できるわけではありません。

 特定疾患療養管理料の算定要件は、200床未満の病院又は診療所において、特定疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合に、月2回に限り算定できるもので、管理内容の要点を診療録に記載することが求められています。

 一方で、生活習慣病管理料の算定要件は、200床未満の病院又は診療所において、生活習慣病を主病とする患者に対して、患者の同意を得て治療計画を策定し、治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定できます。管理については、服薬、運動、休養、栄養、喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行う旨を患者に対して「療養計画書」により丁寧に説明を行い、患者の同意を得るとともに、計画書に患者の署名を受けた場合に算定できるとしています。

 特定疾患療養管理料は、管理内容の要点をカルテに記載するだけで算定できるのに対し、生活習慣病管理料は、療養計画書を作成し、患者へ説明し、同意の署名が必要となるのです。つまり、算定に当たっての医療機関側の手間が大幅に異なるのです。また、療養計画書の作成に当たっては、医師および担当者(看護師、栄養士等)の対応が必要となり、チームとしての体制づくりが求められます。

4.外来データ提出加算の算定も視野に

 生活習慣病管理料については、厚生局に届け出た上で、①保険医療機関における診療報酬の請求状況、②生活習慣病の治療管理の状況等の診療の内容に関するデータを継続して厚生労働省に提出している場合に「外来データ提出加算」として50点を加算できるとしています。同加算を算定するには、データを作る必要がありますが、その手間を乗り越えることができれば、点数のマイナス分をカバーすることが可能になります。算定に関する詳細な情報は今後出てくると思われますので、一度算定できるか検討してみてはいかがでしょうか。

5.まとめ

 特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料へのスライドをスムーズにするため、検査等を包括しない「生活習慣病管理料(Ⅱ)」という点数が新設されることで、患者負担の増加への配慮が行われました。しかしながら、4月に1度の療養計画書の作成および患者の署名という算定の課題は残っています。特に少人数で対応しているクリニックにとっては、書類作成に手間取れば、待ち時間の延長につながる問題です。院内のスタッフを集めて、どういう体制で書類作成を行うかを早めに検討する必要があると考えます。