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令和6年度診療報酬改定答申速報(ポイント解説)
2024.02.27
2月14日に行われた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、令和6年度診療報酬改定の答申が行われました。答申が出たことにより、改定項目が大枠で確定したことになります。そこで、今回は主にクリニックにおいて重要と考えられる7つの改定項目に絞り、解説します。
【目次】
1.賃上げの対応
物価高騰に伴う職員の賃上げに対応するため、まずは初診料を3点、再診料をそれぞれ2点引き上げることになりました。
次に、外来医療または在宅医療を実施している医療機関において、勤務する看護師など医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価として「外来・在宅ベースアップ評価料」が新設されます。初診時に6点、再診時に2点、訪問診療時の同一建物居住者以外の場合は28点、同一建物居住者の場合は7点となります。
算定に当たっては、事前に地方厚生局長等に届け出たうえで、主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制を整えた場合に、算定できるとしています。同評価料を算定する場合は、令和6年度及び令和7年度において定期昇給を除き、対象職員の賃金の改善を実施する必要があります。また、令和6年度及び令和7年度における保険医療機関に勤務する職員の賃金の改善に係る計画を作成し、計画に基づく職員の賃金の改善に係る状況について、定期的に地方厚生局長等に報告することを求めています。
さらに、ベースアップ評価料(Ⅰ)では、賃上げが十分ではない医療機関への救済措置として、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」が新設されます。初診又は訪問診療を行った場合は8点、再診時は1点となりますが、同点数は8段階に区分されており、最大で初診又は訪問診療を行った場合は64点、再診時は8点となります。
算定に当たっては、事前に地方厚生局長等に届け出たうえで、主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制を整えた場合に、基準に係る区分(8段階)に従い、それぞれ所定点数を算定するとしています。こちらの点数の算定には、計算式が用意されており、対象職員の賃金の平均と、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定見込み、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定見込みにより計算し、値がゼロ以上で算定可能としています。
今回の試み(外来・在宅ベースアップ評価料Ⅱ)により、定期的に変更が可能な点数が創設されたことになり、結果として賃金を他業界に比べても遜色のない水準に引き上げることができるか、今後の動向に注目する必要があります。
2.医療DXの評価
医療情報・システム基盤整備体制充実加算については、オンライン資格確認の導入が2023年4月に原則義務化されたことを踏まえ、体制整備に係る評価から、情報取得・活用にかかる評価へ変更され、名称も「医療情報取得加算」に見直されています。
また、オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DX に対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX推進体制整備加算(8点)」を新設するとしています。なお、電子処方箋ならびに電子カルテ情報サービス、マイナ保険証の実績については経過措置が設けられています。
さらに、2024年6月から居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムが開始予定であり、併せて電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを活用することにより、質の高い医療を提供することを目的に、「在宅医療DX情報活用加算(10点)」が新設されます。
今後は、医療DXへの対応として、電子処方箋、令和7年から始まる電子カルテ情報共有サービスの準備を始める必要があります。
3.情報通信機器を用いた診療に係る評価
情報通信機を用いた診療については、閉塞性無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸(CPAP)療法を実施する際の基準を踏まえ、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理」について、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価(218点)を新設するとしています。
また、「小児特定疾患カウンセリング料」についても、発達障害等、児童思春期の精神疾患の支援を充実する観点から、カウンセリングの実態を踏まえ、要件及び評価を見直すとともに、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価を新設するとしています。
さらに、「情報通信機器を用いた精神療法に係る指針」を踏まえ、「通院精神療法」について、情報通信機器を用いて行った場合の評価が新設されるとともに、情報通信機器を用いた診療の初診の場合には向精神薬を処方しないことをホームページ等に掲示していることを要件として追加するとしています。
4.生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料
改定議論の中で、生活習慣病患者の管理について「生活習慣病管理料」と「特定疾患療養管理料」の内容が似通っているという指摘がありました。そこで、特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症及び高血圧を除外することで、生活習慣病管理料に一本化することとなりました。また、この対象疾患の変更は「特定疾患処方管理加算(66点から56点に引き下げ)」についても同様となっています。さらに「特定疾患処方管理加算」については、特定疾患処方管理加算1(14日以内)を廃止するとともに、特定疾患処方管理加算2(28日以上)の評価を見直し、28日超処方だけではなく、リフィル処方箋を発行した場合も算定が可能となります。
一方、「生活習慣病管理料」については、検査等を含む生活習慣病管理料(Ⅰ)と、検査等を含まない生活習慣病管理料(Ⅱ)に区分され、(Ⅰ)は一律40点引き上げられ、(Ⅱ)は333点となりました。算定に当たっての変更点としては、生活習慣病管理料における療養計画書を簡素化するとされ、令和7年から運用開始予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、血液検査項目についての記載を不要とするとしています。あわせて、療養計画書について、患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなすとしています。その他、生活習慣病の診療実態を踏まえ、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件が廃止されています。
また、加算については、血糖自己測定指導加算(500点)、外来データ提出加算(50点)が設けられています。
5.短期滞在手術等基本料
短期滞在手術等基本料1(日帰り)については、対象手術等の入院外での実施状況を踏まえ評価が見直されています。従来の麻酔の有無による2区分の評価から、「主として入院で実施している手術」と、それ以外に分け、それ以外については約半分の点数となっています。
今回、入院で実施している手術としては、ア~トの20項目に絞られており、そのリストから漏れた手術は点数が半減となってしまうことになります。
6.在宅医療の見直し
在宅医療については、「在宅時医学総合管理料」及び「施設入居時等医学総合管理料」が従来の3区分から6区分に増え、単一建物診療患者の数が「10 人以上19 人以下」「20 人以上49 人以下」「50 人以上」の場合の評価が新設されることになり、点数も一律で引き下げられています。一方、他の保険医療機関等の関係職種がICT を用いて記録した患者に係る診療情報等を活用した上で、医師が計画的な医学管理を行った場合の評価として、「在宅医療情報連携加算(100点)」が在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の加算として新設されます。
「往診料」については、①往診を行う医療機関において訪問診療を行っている患者、②往診を行う医療機関と事前に往診に関する連携体制を構築している他の医療機関において訪問診療を行っている患者、③往診を行う保険医療機関の外来において継続的に診療を受けている患者、④往診を行う医療機関と平時からの連携体制を構築している介護保険施設等に入所している患者に対する往診以外の往診について「緊急の往診」に係る評価を見直すとしています。
また、介護保険施設等の入所者の病状の急変時に、介護保険施設等の協力医療機関であって、定期的なカンファレンスを実施するなど、平時からの連携体制を構築している医療機関の医師が往診を行った場合の評価として「介護保険施設等連携往診加算(200点)」が新設されます。
7.処方箋等の見直し
医療DX(電子処方箋)の取組や、相変わらず医薬品の安定供給がされていないことを受け、処方等に係る評価の再編が行われています。「一般名処方加算」については、医薬品の供給不足の状況が続いていることから、供給不足等の場合における治療計画の見直しに対応できる体制の整備、患者への説明、院内掲示にかかる要件を新たに設けるとともに、評価が一律3点引き上げられています。
また、医療DX の推進による効率的な処方体系の整備が進められていること並びに 一般名処方加算、後発医薬品使用体制加算及び外来後発医薬品使用体制加算の見直しに伴い、薬剤情報提供料が6点引き下げられ、処方箋料も一律8点の引き下げとなっています。
8.まとめ
中医協総会で答申が行われたことにより、改定点数が明らかになりました。これからは3月上旬の告示をもって確定されることになります。今後は、6月の施行に向けて、疑義解釈など通知が出され、不明点等が明らかになっていきます。
令和6年度の診療報酬改定は、プラス要素としては、「職員の賃上げ」や「医療DX」への対応を進めることです。一方でマイナス要素としては、生活習慣病関連の大幅な見直しや短期滞在手術等基本料の見直し、処方箋料の引き下げなどがあります。
初再診料や処方箋料などベース点数の変更が行われており、多くの診療所にとって影響をもたらす内容となっています。早めに情報を取得し、シミュレーションなどを行いながら、今後の対応を考えていく必要があります。
表 クリニックに関連する令和6年度診療報酬改定の改定項目
筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局
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