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令和6年度調剤報酬改定からこれからの薬局づくりを考える 第4回「在宅改定となった令和6年度調剤報酬改定を分析」

2024.02.27

地域支援体制加算の減額により業界は大きな混乱になっていますが、在宅医療に取り組む薬局にとっては評価の多い改定となりました。その見直し項目の多さから「在宅改定」と呼ぶことが出来るのではと感じています。今回は在宅医療の報酬変化について取り上げてみたいと思います。

【目次】

  1. 在宅医療の体制を評価する報酬が新設
  2. これまでの取組が評価となった「在宅移行初期管理料」「診察同行時の提案」
  3. 月8回訪問の対象患者の拡大、深夜訪問等加算の新設

1.在宅医療の体制を評価する報酬が新設

在宅医療に係る処方箋に対する評価として「在宅患者調剤加算」がありますが、今回内容を見直し「在宅薬学総合体制加算」と名称を変更しています。加算1(15)は従来報酬と実質同等の評価となり、加算2(50)は高度在宅に取り組む薬局に対する評価となりました。算定の対象は「在宅医療に係る処方箋」という点は同様です。加算1の施設基準は直近1年間の在宅医療の算定実績が「24回」です。加算2に、求められる要件は以下となっています。

 

①次のア又はイを満たす保険薬局であること

ア)() 医療用麻薬について注射剤1品目以上を含む6品目以上を備蓄している。

  () 無菌製剤処理を行うための無菌室、クリーンベンチ、安全キャビネットを備えていること

イ 直近1年間に、在宅における乳幼児加算・小児特定加算の算定回数が合計6回以上

 

②2名以上の保険薬剤師が勤務し、開局時間中は常態として調剤応需の体制を取っていること

③直近1年間に、かかりつけ薬剤師指導料(包括管理料)の算定回数が24回以上

④高度管理医療機器の許可を受けていること

⑤加算1の基準を満たすこと

 

ポイントは「無菌製剤処理を行う体制」と「高度管理医療機器の許可」です。これは地域連携薬局に求められる施設基準であり、地域支援体制加算と比較した際に不足している項目といえます。地域支援体制加算+在宅薬学総合体制加算2を取得する薬局が地域連携薬局に準じた薬局となります。

 

在宅に特化した薬局が近年多く見られますが、そのような薬局は大きな恩恵を受けることになりますが、外来患者が少ないため「かかりつけ薬剤師指導料」の実績に苦慮する声も聞こえてきます。

 

2.これまでの取組が評価となった「在宅移行初期管理料」「診察同行時の提案」

在宅療養への移行が予定されている患者であって、初期の薬剤師の服薬管理・支援に係る業務に対し「在宅移行初期管理料(230)」が新設されました。初回訪問時に残薬等の整理、再一包化などの支援を行いますが、処方箋が発行されないケースがあります。外来服薬支援料1に該当する業務ですが、同月内に在宅訪問に関する報酬を算定する場合、外来服薬支援料1を算定できません。結果としてサービス対応になることが課題に挙げられていました。今回このような業務に対し、初回に在宅訪問に係る報酬を算定する同月に限り1回のみ「在宅移行初期管理料」を算定できるとしています。

また、「診察同行」時の薬剤師による提案に対して対応する報酬がないことも課題に挙げられていました。その理由として処方箋を受け取る際には、提案が反映された処方箋が発行されるため、変更のエビデンスがないためです。本改定では提案により処方された処方箋に対し、「患者の服薬状況」「処方提案の内容」を薬剤服用歴に記載することで「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が算定できるようになりました。

 

3.月8回訪問の対象患者の拡大、深夜訪問等加算の新設

在宅で行える治療の幅が広がるなか、薬剤師の関わりも深さを増してきます。在宅訪問は末期の悪性腫瘍の患者のみ月8回の訪問が認められていましたが、新たに「注射による麻薬投与の患者」が追加されています。また緊急時の訪問対応も多くなることから緊急訪問の回数も「月4回」から「月8回」に見直されています。これにより最大月16回の訪問が可能となります。

また24時間対応の中で特に負担が大きいとされる夜間・休日・深夜の訪問に対し「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」の加算を新設しています。報酬は「夜間訪問加算400点」「休日訪問加算600点」「深夜訪問加算1,000点」です。この報酬は「末期の悪性腫瘍の患者」「注射による麻薬の投与が必要な患者」の緊急訪問のみが対象となります。

 

2025年は「患者のための薬局ビジョン」が示す年であり、ビジョンは「地域包括ケアシステム」に参画する薬局作りを目的として作成されています。在宅医療に対する評価の多さから、国の求める行動が見えてくるのではないでしょうか。

  

【元資料】

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001210969.pdf


筆者:駒形公大(株式会社Kaeマネジメント 代表取締役 / 2025年戦略推進本部長)