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新処遇改善加算の解説と活用戦略

2024.03.12

【目次】

  1. 新処遇改善加算の主な変更点
  2. 今後の展望と求められている取り組み


1.新処遇改善加算の主な変更点

従来の介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算が一本化され、新たな介護職員等処遇改善加算になることは皆さまご存じの通りかと思います。今回のコラムでは、新しい処遇改善加算の概要と主な変更点、そして今後の戦略への取り入れ方について解説させていただきます。

尚、本稿と同一テーマの詳細の解説となる無料オンラインセミナー「新処遇改善加算の解説と活用戦略」が2024年4月18日(木)に開催されます。どなたでもお気軽に参加いただけますので、本稿にご興味をお持ちいただけた方は、是非、お気軽にご参加いただければと思います。

まず、今回の改定の最も特徴的なポイントとしては、各区分ごとに従来の処遇改善加算が複合的に入れ込まれ、かつその条件が厳格化されている点にあります。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について[ⅰ]

上記のように、最下位区分である(Ⅳ)を取得するにしても、従来の処遇改善加算に加えベースアップ等支援加算の要件を一部満たすことが必要となります。これまで一時金だけで処遇改善加算を分配していた、または月々の分配額が要件に達していない場合などは、そもそも処遇改善加算の算定ができないということになります。これは大きく厳格化されたところといえるでしょう。

特に給与規定の変更等が、何らかの理由により難しい事業所の場合、この点で苦労されることが多くなりそうです。1年間の経過措置は設けられているので、なるべく早めに着手して体制を変えることが求められるでしょう。

また、職場環境等要件についても、厳格化されました。これまでは特定処遇改善加算の場合のみに求められていた区分ごとにそれぞれ1つ以上の取り組みをおこなうことが、最下位区分の(Ⅳ)でも求められることになりました。これは3月4日に公開されました「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)」にて明示された条件となります。[ⅱ]

厚労省|「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)」より抜粋 [ⅱ]



上位区分となる(Ⅰ)および(Ⅱ)については区分ごとにそれぞれ1つ以上の取り組みをおこないかつその取り組みをインターネット上で公表することが求められます。算定のために必要な要件が増えたと考えられるでしょう。

2.今後の展望と求められている取り組み

一方で、緩和がされた部分もあります。今回の改定で特にそれを感じたのは「職種に着目した配分ルールは設けず、事業所内で柔軟な配分を認める」ようになった点です。

これは、従来の処遇改善加算は介護職員しか対象にならず、特定処遇改善加算のみ、一定の要件や割合を満たした上で一部その他の職種の方へ配分可能なだけでした。この制限が撤廃されると、看護師、ケアマネジャー、事務職等への処遇改善加算の分配も可能になります。

求められる要件は増えましたが、ベースアップ支援加算の要件が強制的に満たされるようになることから、これまで算定を見送っていた事業所でも着手することを想定すると全体としての加算率は上昇することになるのではないかと考えています。当然のことながら、規模が大きな法人ほど所定単位に対する加算額が増え、分配できる金額も大きくなるでしょう。また、毎月のベース配分が必須になり職種の縛りも無くなったことから柔軟な運用が可能になります。

 反対に小規模かつ上位区分の算定が難しい事業所だと、待遇の格差がより広がる可能性があります。従来より提示されていた項目の更なる厳格化が求められているということは、これまで推進されてきた取り組みの複合的な評価が始まっているといえるのではないでしょうか。

 今後も、処遇改善自体の推進は継続することが予想されます。そのための取り組みとして、以下の事項を実施していくのが良いと考えます。

①処遇改善加算の運用の再検討
毎月、一定割合の分配が必須化するので、その方法について検討を進める。また、一部手当に充当することもできる(夜勤手当、早朝手当等)ので、その運用も検討する。

②職場環境等要件の実施
上位区分を目指すためにも、より多くの取り組みを実施していきたい。今後、更に厳格化することが無いとも言い切れない。

③生産性の向上の取り組みとの連携
(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定する場合は、職場環境等要件の実施の際に「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち3以上おこなうこと、もしくは生産性向上推進体制加算を算定していることが求められます。生産性向上もまたかなり優先度が高いため、併せて取り組みを進めできれば加算も算定したい。



また、その他にも今回の改定を受けて、向こう1年間で事業所周辺の求人待遇も変化していくことが予想されます。アンテナを張りつつ、状況の変化を素早く察知し必要があれば対応していく必要があるでしょう。分配の傾斜をより適切な形にするために、キャリアパスの再検討も必要になるかも知れません。

こういった事項も含めましたより詳しい解説につきましては2024年4月18日(木)に開催されます無料オンラインセミナー「新処遇改善加算の解説と活用戦略」にてお届けできればと考えております。ご興味をお持ちの方は、是非、ご参加いただけますと幸いです。 

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[ⅰ]第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37407.html

[ⅱ]介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001218747.pdf

株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)齋藤直路