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生活習慣病管理料の療養計画書の見直し
2024.03.19
3月5日に令和6年度診療報酬改定の告示が行われました。告示によって、ひとまず改定内容が確定されたことになります。
今回、特に注目すべきは「生活習慣病管理」の項目です。これまで多くの診療所が算定してきた特定疾患療養管理料から生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧症)の疾患が除外されたことを受けて、生活習慣病の患者に対しては、生活習慣病管理料(Ⅱ)の算定を進める必要があるのです。算定に際して、大きく立ちはだかるのが、療養計画書の作成、患者への説明、そして患者のサインとなります。そこで、今回は療養計画書に関する変更点、療養計画書作成の進め方について解説します。
【目次】
1.療養計画書の簡素化
厚労省は、生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点から、生活習慣病管理料について要件及び評価を見直すとしています。具体的には、療養計画書を簡素化するとともに、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行うという要件を廃止することで、「概ね4か月に1回」の管理で良いことになります。
簡素化された療養計画書の様式について、これまでのものからの変更点は以下の通りとなります。
- 検査・問診欄がなくなり、目標欄に統一された。
- 血液検査の項目は、検査結果を手交することで記載が必要なくなった。
- 担当者の氏名及び捺印が必要なくなり、医師の氏名のみでよくなった。
- 服薬指導、療養を行うに当たっての問題点、他の施設の利用状況の項目がなくなった。
- 継続用では、「患者が療養計画書の内容について説明を受けた上で十分に理解したことを確認した」という項目が新設。「なお、上記項目に担当医がチェックした場合については患者署名を省略して差し支えない」とされました。
このように全体的に療養計画書は簡素化されており、施設基準においても、「患者の治療管理において必要な項目のみを記載することで差し支えない」とされており、全部の項目を埋める必要がないことが分かります。
2.電子カルテ情報共有サービスの活用
また、2025年から始まる「電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、血液検査項目についての記載を不要とする」としています。さらには、「患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書での記載事項を入力し、診療録にその記録及び患者の同意を得た旨を残している場合は、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす」としています。電子カルテ情報共有サービスが本格的に稼働する頃には、療養計画書そのものが必要なくなるかもしれないのです。
ちなみに、電子カルテ情報共有サービスとは、オンライン資格確認、電子処方箋の次に位置づけられる政府の医療DX政策の1つです。紹介状送付サービス、健診文書閲覧サービス、6情報閲覧サービスから構成されています。新設された「医療DX推進体制整備加算」において、2025年9月末までの体制整備が求められています。
出典:健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(2024/1/24,厚労省)
3.多職種連携で療養計画書を作成する
生活習慣病管理料の算定要件においては、「歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等の多職種と連携することを望ましい」とされています。厚労省は、生活習慣病管理料を算定する際、複数のスタッフが協力して、患者指導を進めることを求めているのです。
そもそも特定疾患療養管理料は、管理内容の要点をカルテに記載するだけで算定できるのに対し、生活習慣病管理料は、療養計画書を作成し、患者へ説明し、同意の署名が必要となり、療養計画書が簡素化されたとしても、算定に当たっての医療機関側の手間は残っています。そこで、療養計画書の作成に当たっては、医師及び看護師、栄養士等の協力を仰ぎ、チームで対応する体制が必要になると考えます。
4.まとめ
生活習慣病の医学管理について、令和6年度診療報酬改定では、特定疾患療養管理料から「生活習慣病管理料(Ⅱ)」へのスライドが必要になります。スムーズに算定を進めるためには、療養計画書の作成をいかに分散して行うかが重要になります。6月の改定施行時期に一気に進めるのではなく、4月から患者への説明を始め、療養計画書の作成についても、看護師や栄養士、そして事務スタッフにも協力を仰ぐことが必要と考えます。