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令和6年度介護報酬改定における施設・居住系サービスの見直しポイント

2024.03.21

令和6年1月22日に開催された第239回社会保障審議会介護給付費分科会において「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」が示され、全サービス・加算の単位数、および見直し項目が公表されました。全体改定率1.59%(処遇改善0.98%、その他0.61%)について、濃淡をつけた割り振りとなりましたが、施設・居住系サービスは比較的大きな配分となっています。

 主たる施設・居住系サービスの基本報酬を確認していくと、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は+2.79%、特定施設入居者生活介護は+0.75%、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は+0.11%となります。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と介護老人保健施設は、介護事業経営実態調査による最新の収支差率が、調査を開始後初めて赤字の結果となったことを受けて、大きなプラス幅の改定となりました。

具体的な見直し項目も確認していきます。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は32項目と非常に大きな見直しとなり、特定施設入居者生活介護は19項目、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は17項目となります。また、各サービスに共通する見直し項目には、「協力医療機関との連携体制の構築」「協力医療機関連携加算の創設」「高齢者施設等感染対策向上加算の創設」「BCP未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進」「科学的介護推進体制加算の見直し」「処遇改善加算の一本化」「テレワークの取扱いの明確化」「生産性向上推進体制加算の創設」「技能実習生の人員配置要件の見直し」等となります。さらに、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)等の施設系4サービスと認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に共通する見直し項目に、「認知症チームケア推進加算の創設」があります。

その中でも、「協力医療機関との連携体制の構築」「協力医療機関連携加算の創設」は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)等の施設系4サービスでは義務化され、また特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では努力義務となったことで、協力医療機関の定義が明確になり、医療連携の体制をしっかりと構築するために実態の伴う連携先の確保が求められます。同時に、情報共有を行う会議等を定期的に開催することで算定可能な加算となります。また、「高齢者施設等感染対策向上加算の創設」は、新型コロナウィルス感染症等の感染症への対応策を講じ、医療連携や研修体制を確立していることで算定可能な加算となります。さらには、「生産性向上推進体制加算の創設」は、介護ロボットやテクノロジー活用により、生産性が向上するための業務改善が行われていることで算定可能な加算となります。そして、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)等の施設系4サービスと認知症対応型共同生活介護(グループホーム)における「認知症チームケア推進加算の創設」は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐため、専門的な研修の受講者の配置やチームケアを実施していることで算定可能な加算となります。

続いて、その他各サービスの見直し項目のポイントを確認します。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)では5つです。
 1.配置医師緊急時対応加算の見直し(特別養護老人ホーム固有の見直し)
 2.特別通院送迎加算の創設(特別養護老人ホーム固有の見直し)
 3.退所時栄養情報連携加算の創設(特別養護老人ホーム等の施設4サービスの見直し)
 4.排せつ支援加算の見直し(特別養護老人ホーム等の施設4サービスと看多機の見直し)
 5.褥瘡マネジメント加算の見直し(特別養護老人ホーム等の施設4サービスと看多機の見直し)

「配置医師緊急時対応加算の見直し」は、配置医師が早朝・夜間・深夜以外などの勤務時間外に施設診療を行った場合に算定可能な区分が創設されます。「特別通院送迎加算の創設」は、人工透析が必要な利用者を病院へ送迎した際に算定可能な加算となります。「退所時栄養情報連携加算の創設」は、特別な栄養管理が必要な利用者が退所する際に、居宅・他の介護保険施設・医療機関等に必要な情報提供を行うことで算定可能な加算となります。「排せつ支援加算の見直し」は、加算のⅡとⅢにおいて、適切な支援によって尿道カテーテルを抜去することが出来た際に算定可能なアウトカム要件が追加されます。「褥瘡マネジメント加算の見直し」は、加算のⅡとⅢにおいて、適切な支援によって褥瘡を治癒することが出来た際に算定可能なアウトカム要件が追加されます。

特定施設入居者生活介護では4つです。
 1.夜間看護体制加算の見直し
 2.入居継続支援加算の見直し
 3.口腔衛生管理体制加算の廃止
 4.生産性向上に伴う人員配置要件の特例的な柔軟化

 「夜間看護体制加算の見直し」は、夜勤または宿直での看護職員配置による上位区分の加算が創設されます。「入居継続支援加算の見直し」は、単位数は変わらず尿道カテーテル留置、在宅酸素療法、インスリン注射を実施している利用者が追加となります。「口腔衛生管理体制加算の廃止」は、口腔衛生管理の体制構築は特定施設入居者生活介護における標準サービスであると位置づけられ、3年間の猶予期間を設け、加算は廃止となります。「生産性向上に伴う人員配置要件の特例的な柔軟化」は、見守り機器等のテクノロジー活用によって生産性が向上し、サービスの質や職員の負担軽減が実現できる事業所に限定して、人員配置要件3:1から3:0.9に緩和することが可能となります。

 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では2つです。
 1.医療連携体制加算の見直し
 2.夜間支援体制加算の見直し

 「医療連携体制加算の見直し」は、従来の加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが、看護体制要件によって(イ)・(ロ)・(ハ)に新たな加算Ⅰとして区分され、単位数が2単位減となります。さらに、新たな加算Ⅱでは留置カテーテル使用とインスリン注射実施している利用者が追加され5単位となります。加算Ⅱを算定するとプラスで、算定しない場合はマイナスになり、医療的ケアの重要性が改めて示されました。「夜間支援体制加算の見直し」は、見守り機器の導入割合によって夜勤職員の配置要件が僅かに緩和されます。

 今回の令和6年度介護報酬改定の見直し項目は、施設・居住系サービスは他サービス以上に大きな見直しが行われます。改定内容をしっかりと把握し、必要な対応準備を行っていかなければなりません。

全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行