• 介護/福祉
  • #改定情報
  • #施設経営

令和6年度介護報酬改定が経営に及ぼす影響

2024.03.25

【目次】

  1. 訪問介護は基本報酬引き下げも対応の余地はあり
  2. 通所介護は概ね対応可能な改定
  3. 訪問看護は重点化されるもののリハビリ機能についてはマイナス評価


1.訪問介護は基本報酬引き下げも対応の余地はあり

 介護報酬改定に関連して、事業者の皆様が最も気になるところとしては、基本報酬や加算の変動による収支への影響となるのではないでしょうか。今回は、訪問介護、通所介護、訪問看護に注目して収支の変動や各サービスの対応に関するポイントを解説していきます。

 まずは訪問介護について確認をしていきます。訪問介護の今回の改定の大きな特徴は、基本報酬の減算と、他サービスに比べ高い加算率となる一本化される処遇改善加算です。
以下が、今回の訪問介護の基本報酬の改定の内容となっており、減算率を平均すると-2.3%となります。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について」[ⅰ]

 処遇改善加算については、従来より処遇改善加算(Ⅰ)、特定処遇改善加算(Ⅰ)、ベースアップ支援等加算を全て算定できていた場合、職場環境等要件の若干の追加の取り組みは必要となるものの、概ね2.1%の加算となります。
 基本報酬と処遇改善の差し引きでも-0.2%となり、しかも処遇改善加算は用途が限られることから、訪問介護にとっては厳しい改定になったと言えるでしょう。
 一方で1月に1回算定可能な口腔連携強化加算(50単位/回)が創設されました。これは、事業所と歯科専門職の連携の下おこなう口腔衛生状態及び口腔機能の評価と、その情報を歯科医療機関とケアマネジャーに共有することを評価する加算となります。今回改定では基本的に従来のマイナスになってしまうことが想定されるので、可能な限り算定を狙っていきたいところです。
 また、特定事業所加算についても変更がありました。中山間地域等に居住する者に対するサービス提供を評価する(Ⅴ)が創設されたことに加え、従来の(Ⅲ)において、重度者等対応要件が「要介護4、5である者、日常生活自立度(Ⅲ、Ⅳ、M)である者、たんの吸引等を必要とする者の占める割合が100分の20以上」であったことに加え、医療連携体制を構築していることを条件に「看取り期の利用者への対応実績が1人以上であること」も認められることとなりました。所定加算に対して10%の加算は非常に大きいので、今回の改定で要件が合致するようになっていないかの確認が必要です。
 基本報酬の引き下げは厳しい内容とはなったものの、見直すべき点もいくつかあるというのが訪問介護における今回改定の内容となります。

2.通所介護は概ね対応可能な改定

 通所介護については、基本報酬は1%には満たないまでも引き上げとなりました。
 大きな変化といえば個別機能訓練(Ⅰ)ロの人員要件の変更です。これは、従来は個別機能訓練指導員1名に加え、常勤専従の個別機能訓練指導員を配置することで算定可能だったものが、常勤要件がなくなり単純に専従の個別機能訓練指導員2名体制を組めば良いということになりました。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について」[ⅰ]

 従来より算定していた事業所にとっては実質的な減算となりますので、対応を協議する必要があります。対応方法としては2種類考えられ「①常勤専従の機能訓練指導員を、他事業所と兼務する」「②常勤専従の機能訓練指導員が他職種(管理者、生活相談員等)と兼務する」のいずれかの対応になるのではないでしょうか。
 「①常勤専従の機能訓練指導員を、他事業所と兼務する」については、常勤専従の要件が解かれたことから、機能訓練を実施する以外の時間帯については、他事業所で勤務することも可能です。他サービスの機能訓練指導員として勤務し加算を算定することも可能となりますので、減少した個別機能訓練加算の単位数の補填をすることができるという考えになります。
 「②常勤専従の機能訓練指導員が他職種(管理者、生活相談員等)と兼務する」では、同じく常勤専従である必要がなく、自事業所の他職種を兼務するという考え方です。兼務をおこなうことで配置を緩和し、減算分のコストを軽減しようという考え方になります。
 算定していなかった事業所においては、特定の時間に専門職を配置すれば算定が可能ということになります。また、例えば常勤の理学療法士等を雇用することが難しい事業所であったとしても、特定の時間にリハビリの専門職を配置することで算定が可能となるので、リハビリの質の向上も図ることができます。積極的に算定を検討していきたいところです。
 入浴介助加算(Ⅱ)についても推進する方向性の改定となりました浴室の評価が情報通信機器等を使用した遠隔のものでも可能となり、計画等の考え方についても改めて示されています。
 また、送迎のライドシェアについても解禁となりました。可能であればコスト削減にもつながりますので、地域の状況を見つつ導入を検討していきましょう。

3.訪問看護は重点化されるもののリハビリ機能についてはマイナス評価

 訪問看護については、基本報酬はわずかではありますが引き上げとなりました。
 加算等については全体的にプラス改定となったといえます。ターミナルケア加算については要件等の変更なく、死亡月における評価が2,000単位から2,500単位と引き上げになりました。
 また、専門管理加算が新たに創設されました。これは「緩和ケア、褥瘡ケア若しくは人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師又は特定行為研修を修了した看護師」が、訪問看護における計画的な管理をおこなった場合に評価するという加算になります。
 他にも、退院退所当日に初回訪問をおこなうことを更に評価する初回加算の新区分が創設、口腔連携強化加算が創設(訪問介護と同様)、「緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていること」を要件とした緊急時訪問看護加算の新区分の創設等、全体的に引き上げの改定となったといえるでしょう。訪問看護についてはニーズの高まりもあり、高い評価がされていると考えても良いかと思います。
 一方で、理学療法士等による訪問看護の評価については見直しが入りました。これは、リハビリに重点を置いた訪問看護事業所については、引き締めが入ってきているということができます。
 具体的には、理学療法士等の訪問回数が看護師の訪問回数を超えているとき、もしくは緊急時訪問看護加算、特別管理加算及び看護体制強化加算を算定していないときに1回につき8単位を減算、それが12ヶ月を超えるときは15単位の減算になるという厳しいものです。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について」[ⅰ]

 かなり厳しい改定となっていますが、今後更に、この流れは進むのではないでしょうか。特に、具体的には、理学療法士等の訪問回数が看護師の訪問回数を超えているとき、もしくは緊急時訪問看護加算、特別管理加算及び看護体制強化加算を算定していないときのいずれかが減算の対象となりますが、このいずれも満たしてしまっている場合の評価は変化がありません(上図表の右下の部分)。今後、ここを更に評価しない(減算幅が拡大する)という流れも考えられます。看護機能の強化については、推進していかざるをえないのではないでしょうか。

 以上、訪問介護、通所介護、訪問看護の3サービスの改定について解説してきました。ご参考にしていただけますと幸いです。 

―――――――――――――

[ⅰ]  「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001213182.pdf



株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)齋藤直路