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令和6年度診療報酬改定のポイント解説
2024.03.25
2024年3月5日に、令和6年度診療報酬改定の告示が行われました。告示が行われたことにより、改定内容が確定したことになります。今後のスケジュールとしては、疑義照会などの通知が順次出されることで改定内容に関する不明点が明らかになっていきます。 今回は告示内容に基づき、主にクリニックにおいて重要と考えられる改定項目に絞り解説します。 。
【目次】
- Point1: 賃上げ、基本診療料
- Point2: 医療DX
- Point3: 情報通信機器を用いた診療
- Point4: 生活習慣病の管理
- Point5: かかりつけ医
- Point6: 短期滞在手術等基本料
- Point7: リハビリ
- Point8: 感染症
- Point9: 在宅医療
- Point10: 小児医療
- Point11: 精神医療
- まとめ
●Point1: 賃上げ、基本診療料
外来診療における標準的な感染防止対策を日常的に講じることが必要となったこと、職員の賃上げを実施すること等の観点から、初診料を3点、再診料を2点引き上げることになりました。
また、外来・在宅医療を実施している医療機関において、勤務する看護師など医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価として「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」が新設されます。初診時に6点、再診時に2点、訪問診療時の同一建物居住者以外の場合は28点、同一建物居住者の場合は7点となります。
算定に当たっては、事前に地方厚生局長等に届け出たうえで、主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制を整えた場合に算定できるとしています。同評価料を算定する場合は、令和6年度及び令和7年度において定期昇給を除き、対象職員の賃金の改善を実施する必要があり、「賃金改善計画書」及び「賃金改善実績報告書」を作成し、定期的に地方厚生局長に報告することが求められます。
さらに、ベースアップ評価料(Ⅰ)では、賃上げが十分ではない医療機関への救済措置として、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」が新設されます。初診・訪問診療を行った場合は8点、再診時は1点となりますが、同点数は8段階に区分されており、最大で初診・訪問診療を行った場合は64点、再診時は8点となります。
算定に当たっては、事前に地方厚生局長等に届け出たうえで、主として医療に従事する職員の賃金の改善を図る体制を整えた場合に、基準に係る区分(8段階)に従い、それぞれ所定点数を算定するとしています。こちらの点数の算定には、計算式が用意されており外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される点数の見込みの10倍が、対象職員の給与総額の1.2%未満であることが条件となります。
●Point2: 医療DX
医療情報・システム基盤整備体制充実加算については、オンライン資格確認の導入が2023年4月に原則義務化されたことから、体制整備の評価は情報取得・活用の評価へ変更され、名称も「医療情報取得加算」に見直されています。なお、答申書附帯意見において、「2024年12月2日から現行の健康保険証の発行が終了することを踏まえ、2024年度早期より、医療情報取得加算による適切な情報に基づく診療の在り方について見直しの検討を行うとともに、医療DX推進体制整備加算について、今後のマイナンバーカードの利用実態及びその活用状況を把握し、適切な要件設定に向けた検討を行うこと」とされており、点数変更が予定されています。
また、オンライン資格確認の診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DX に対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX推進体制整備加算(初診時8点)」を新設するとしています。なお、電子処方箋(2025年3月末)ならびに電子カルテ情報サービス(2025年9月末)については経過措置が設けられています。また、マイナ保険証の実績については、2024年10月から開始となり、具体的なパーセンテージも後日明らかにされる予定です。
さらに、2024年6月から居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムが開始予定であり、併せて電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを活用することにより、質の高い医療を提供することを目的に、「在宅医療DX情報活用加算(10点)」が新設されます。
●Point3: 情報通信機器を用いた診療
情報通信機を用いた診療については、閉塞性無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸(CPAP)療法を実施する際の基準を踏まえ、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理」について、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価(218点)を新設するとしています。
また、「小児特定疾患カウンセリング料」についても、発達障害等、児童思春期の精神疾患の支援を充実する観点から、カウンセリングの実態を踏まえ、要件及び評価を見直すとともに、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価を新設するとしています。
さらに、「情報通信機器を用いた精神療法に係る指針」を踏まえ、「通院精神療法」について、情報通信機器を用いて行った場合の評価が新設されるとともに、「情報通信機器を用いた診療の初診の場合には向精神薬を処方しないこと」をホームページ等に掲示していることを要件として追加されます。
●Point4: 生活習慣病の管理
今回の改定議論の中で、生活習慣病患者の管理について「生活習慣病管理料」と「特定疾患療養管理料」の内容が似通っているという指摘がありました。そこで、特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症及び高血圧を除外することで、生活習慣病患者の管理は生活習慣病管理料に一本化することとなりました。また、この対象疾患の変更は「特定疾患処方管理加算(66点から56点に引き下げ)」についても同様となっています。さらに「特定疾患処方管理加算」については、特定疾患処方管理加算1(14日以内)を廃止するとともに、特定疾患処方管理加算2(28日以上)の評価を見直し、28日超処方だけではなく、リフィル処方箋を発行した場合も算定が可能となります。
「生活習慣病管理料」については、検査等を含む生活習慣病管理料(Ⅰ)と、検査等を含まない生活習慣病管理料(Ⅱ)に区分され、(Ⅰ)は一律40点引き上げられ、(Ⅱ)は333点となりました。
算定に当たっての変更点としては、生活習慣病管理料における療養計画書が簡素化され、2025年から運用開始予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、血液検査項目についての記載を不要とするとしています。あわせて、「患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす」としています。その他、生活習慣病の診療実態を踏まえ、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件が廃止されたため、おおむね4か月に1回の管理でよくなっています。
また、加算については、血糖自己測定指導加算(500点)、外来データ提出加算(50点)が設けられています。
●Point5: かかりつけ医
かかりつけ医機能の評価である「地域包括診療加算」および「認知症地域診療加算」について、かかりつけ医と介護支援専門員との連携の強化、かかりつけ医の認知症対応力向上、リフィル処方及び長期処方の活用、適切な意思決定支援及び医療DXを推進する観点から要件が見直され、点数も一律3点引き上げられています。
時間外対応加算についても、時間外の電話対応等に常時対応できる体制として、非常勤職員等が対応し、医師に連絡した上で、医師が電話等を受けて対応できる体制の評価(時間外対応加算2)が新設され、全体で4区分の評価となっています。
●Point6: 短期滞在手術等基本料
短期滞在手術等基本料1(日帰り)については、対象手術等の入院外での実施状況を踏まえ評価が見直されています。従来の麻酔の有無による2区分の評価から、「主として入院で実施している手術」と、それ以外に分け、それ以外については約半分の点数となっています。 今回、イの入院で実施している手術については、20項目に絞られており、そのリストから漏れた手術は点数が半減となってしまうことになります。
●Point7: リハビリ
「疾患別リハビリテーション料」については、NDB・DPCデータによりの実施者ごとの訓練実態を把握可能できるようにするため、リハビリテーションを実施した職種ごとの区分に変更されています。
また、医療機関でリハビリテーションを受けている患者が、介護保険の通所リハビリテーション事業所等によるサービス利用へ移行する場合については、移行先の事業所等に対しリハビリテーション実施計画書等を提供することとされ、現在のリハビリテーション計画料は廃止となっています。
医療保険のリハビリテーションと障害福祉サービスである自立訓練(機能訓練)の円滑な移行を推進するため、医療のリハビリテーションを提供する病院・診療所が基準該当サービスの指定が可能となり、病院・診療所が自立訓練を提供する際の疾患別リハビリテーション料等に係る施設基準が緩和されています。
●Point8: 感染症
「外来感染対策向上加算」については、施設基準に感染対策を講じた上で発熱患者等を受け入れること等が追加されています。また、実際に発熱患者等に対応した場合の評価として「発熱患者等対応加算(20点)」が新設されています。
●Point9: 在宅医療
「在宅時医学総合管理料」及び「施設入居時等医学総合管理料」については、単一建物診療患者の数が50人を超えるケースがあるといった実態を踏まえて変更が行われています。従来の3区分から5区分に増え、単一建物診療患者の数が「10 人以上19 人以下」「20 人以上49 人以下」「50 人以上」の場合の評価が新設されることになり、点数も一律で引き下げられています。
一方、他の保険医療機関等の関係職種がICT を用いて記録した患者に係る診療情報等を活用した上で、医師が計画的な医学管理を行った場合の評価として、「在宅医療情報連携加算(100点)」が在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の加算として新設されます。
「往診料」については、コロナ禍においての夜間の発熱患者への往診が急増した実態を受けて変更が行われています。①往診を行う医療機関の患者(過去60日以内に在宅患者訪問診療料等を算定している)②往診を行う医療機関と連携体制を構築している患者(他の保険医療機関において過去60日以内に在宅患者訪問診療料等を算定している)③往診を行う保険医療機関の外来において継続的に診療を受けている患者④往診を行う保険医療機関と平時からの連携体制を構築している介護保険施設等に入所する患者と、それ以外に分けて緊急往診加算等が見直されています。
●Point10: 小児医療
小児に対する継続的な診療を一層推進する観点から「小児かかりつけ診療料」について点数が引き上げられています。また、算定要件については、「発達障害の疑いがある患者について、診療及び保護者からの相談に対応するとともに、必要に応じて専門的な医療を要する際の紹介等を行うこと」「不適切な養育にも繋がりうる育児不安等の相談に適切に対応すること」の2つが追加されています。施設基準についても、「小児科外来診療料を算定していること」と「医師は、発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適切な研修を修了していることが望ましいこと」が要件として追加されています。
●Point11: 精神医療
「通院・在宅精神療法」について、60分以上の精神療法を行った場合を引き上げ、30分未満の精神療法を行った場合の評価が引き下げられています。また、精神疾患の早期発見及び症状の評価等の必要な診療を行うにつき十分な体制を有する医療機関が精神療法を行った場合について、通院・在宅精神療法に「早期診療体制充実加算」が新設されています。さらに、児童・思春期の精神疾患患者に対する外来診療の充実を図る観点から、多職種が連携して患者の外来診療を実施した場合について、通院・在宅精神療法に「児童思春期支援指導加算」が新設されています。それに伴い、通院・在宅精神療法の「20歳未満加算」が引き下げられています。
●まとめ
令和6年度診療報酬改定については、改定率の検討の際に、財務省より「診療所の報酬単価を5.5%程度引き下げるべき」という主張がありました。一方で、「医療分野の人材確保を行うために賃上げが必要」という見解から、医療従事者の処遇改善が求められました。さらには、6月2日に医療DXに関する工程表が出され、その中で「電子処方箋の普及」と「電子カルテ情報共有サービスの開始」が示され、それに対応する必要もありました。 そのような背景から、プラス要因としては、「医療従事者の賃上げ」「医療DXの推進」の主に2項目が評価され、一方で、マイナス要因として「生活習慣病管理の見直し」し、「短期滞在手術基本料1(日帰り)」の実質引き下げ、「処方箋料」の引き下げなどが行われることになっています。
筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局
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