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令和6年度調剤報酬改定からこれからの薬局づくりを考える| 第6回「後発医薬品が新目標へ突入~カギとなる選定療養費制度~」

2024.03.27

 10月から始まる「医薬品の選定療養費制度」をご存じですか?医療費抑制策として本改定の大きなポイントでもあるのですが、あまり話題となっていないように思います。10月からの開始ということもあり、まだ不明な点もありますが、先の対策を考える上で基礎知識をつけていきたいと思います。

【目次】

  1. プラス改定でも、医療費抑制に向けた施策
  2. 選定療養費制度導入が描く未来とは
  3. 選定療養費制度の導入で、残す医療費抑制策は本体への切り込み

1.プラス改定でも、医療費抑制に向けた施策

社会保障費抑制が求められる中、「技術料本体+0.88%」となった2024年度改定ですが、そんな大盤振る舞いで財源は大丈夫なのかというと、きちんと対応がとられています。それが「選定療養費」制度の導入です。

【医薬品療養費制度とは】
・長期収載品と後発医薬品の薬価差を踏まえ後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象とする。
・選定療養に係る負担は、上記価格差の4分の1相当分とする。

としています。簡略化すると後発医薬品のある医薬品に対し、長期収載品(先発品)を患者が希望した場合には、薬価差の4分の1を自己負担しなければいけないという制度です。

選定療養費の除外場面として「医療上の必要性があると認められる場合」(医師の判断により後発医薬品への変更不可)、「薬局に後発医薬品の在庫がない場合、後発医薬品の提供が困難な場合」が挙げられています。



2.選定療養費制度導入が描く未来とは

選定療養費制度により得られる効果として「後発医薬品の使用促進」が挙げられます。これまで一般名処方に対して、「患者の選択」によって先発医薬品が調剤されていた場面が多くありますが、自己負担金が発生することで、後発医薬品選択の喚起が促されます。

医療費は「技術料」と「薬剤料」で構成されます。薬剤料を引き下げるために薬価改定が行われていますが、薬価引下げには限度があります。そこで新たに、先発医薬品から後発医薬品への切替を“さらに”推進する策を導入することで「薬剤料」を引き下げることが可能となります。

後発医薬品の普及に関する制度目標は「2023年度末までに全ての都道府県で80%以上」と掲げられていました。その結果、目標はほぼ達成され後発医薬品の調剤割合は80%を超えています。しかしながら、金額ベースでみると約40%と調剤率と大きな開きがあります。 この課題に対し2024年3月新目標が発表されました。

「2029年度末までに後発医薬品の普及を金額ベースで65%以上とする」

これまでの目標値はいわゆる「数量ベース」での目標でした。薬価差に関係なくより多く処方されている薬剤を切り替えることが求めれていたと言えます。

これからの目標は「金額ベース」、言い換えると「質」での切り替えです。より薬価差の大きい品目を切り替えていくことが求められます。



3.選定療養費制度の導入で、残す医療費抑制策は本体への切り込み

「薬価を下げる」「薬剤料を下げる」。本改定の裏にはこのような調整があり、技術料プラスが実現しています。2024年度改定がやっと落ち着いたばかりで、すぐに次の改定の話をするのは申し訳ありませんが、薬剤料に対し打てる施策を全て打ったわけですので、いよいよ「本体マイナス」というビジョンが見えてきます。「そうなるかもしれない」という未来に対し、何が出来るのかを考え、本改定へのアプローチ、そして求められる薬局作りを意識した行動が必要になります。




筆者:駒形公大(株式会社Kaeマネジメント 代表取締役 / 2025年戦略推進本部長)