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【押さえておきたい新薬情報】 原発性手掌多汗症(アポハイド)

2024.04.05

 2023 年 6 月、アポハイドローション(一般名:オキシブチニン塩酸塩)が発売されました。日本初の原発性手掌多汗症(手汗)治療薬です。同一成分薬に頻尿治療薬のポラキス錠と過活動膀胱治療薬のネオキシテープがあります。
 汗腺には、全身に分布し体温調節に関与するエクリン汗腺(冷却器官)とワキの下など毛根部に開口するアポクリン汗腺(いわゆるフェロモン)があります。エクリン汗腺は体温を下げる効率が高い、ヒトだけに「進化した汗腺」、アポクリン汗腺は毛の退化によりワキなどに残存する「退化した汗腺」と考えられています。交感神経の節後線維では、ノルアドレナリンによる神経伝達が行われ、受容体はαおよびβ受容体です。例外として、汗腺を支配する交感神経は、節前線維、節後線維ともにアセチルコリンが使われます。交感神経(アドレナリン作動性)の亢進により皮膚血管が収縮し、発熱に対し不適合な状態になるからです。


 体温が上昇すると、交感神経の節後線維からアセチルコリンが放出され、ムスカリン受容体のサブタイプ(M3)を刺激することで、エクリン汗腺からの発汗を促します。多汗症治療薬の作用機序を整理します。ボトックス注用は、交感神経終末からのアセチルコリン放出を抑制することで、抑汗作用を示します。塩化アルミニウム液と水道水イオントフォレーシスは、汗の通り道(汗管)の出口を塞ぐことで、汗の分泌量を減らします。内服および外用抗コリン薬は、アセチルコリンがムスカリン受容体(M3)に結合するのを阻害して、過剰な発汗を抑えます(図)。原発性局所多汗症診療ガイドラインにおいて、外用抗コリン薬は塩化アルミニウム液や水道水イオントフォレーシスと同じ第一選択の治療法に位置づけられました。部位ごとに推奨される治療薬とガイドライン上の推奨度(A~D)をまとめました(図)。 
 アポハイドの使用方法は、1日1回、就寝前に、適量(1回分は5プッシュ程度)を両手掌、全体に均一に塗布します。薬を塗ったまま就寝し、起床後に、流水で手をよく洗います。抗コリン作用による散瞳等の眼の調節障害が起こる可能性があるので、自動車の運転等には注意をする必要があります。

 

商品名

アポハイドローション20%

一般名

オキシブチニン塩酸塩

会社名

久光製薬

効能・効果

原発性手掌多汗症

用法・用量

1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布する

妊婦・授乳婦

有益性投与

小児

12歳未満の小児等は使用経験がない

禁忌

閉塞隅角緑内障,前立腺肥大による排尿障害,本剤の過敏症,重篤な心疾患,腸閉塞又は麻痺性イレウス,重症筋無力症の患者

副作用

重大な副作用:血小板減少、麻痺性イレウス、尿閉。主な副作用:適用部位皮膚炎・そう痒感・湿疹、皮脂欠乏症、口渇

薬価

20%1g:545.80円

使用に際しては、必ず添付文書をお読み下さい。


図 多汗症治療薬の作用機序




図 部位別多汗症治療薬とその推奨度

推奨度の分類(原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版)

A  行うよう強く勧められる       B 行うよう勧められる 

C1  行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない

C2  根拠がないので勧められない   D 行わないよう勧められる



この記事は・・・
大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。


(筆者)
浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事