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調剤報酬改定から見えた中小薬局の「高単価処方箋」の作り方

2024.04.18

 調剤報酬改定が発表され、方針を練っている頃と思います。
今日は、調剤報酬改定の変化ポイントをもとに、「高単価処方箋の作り方」をご紹介します。
コラムの最後には、高単価処方箋を作るために、どのような順番で薬局を成長させていけばよいかも示しましたので、是非最後までご確認ください。

【目次】

  1. 調剤基本料1の薬局は、基準難化でも地域支援体制加算を目指すべき
  2. 「地域支援体制加算1、2」を取っている薬局は「在宅でも緩和ケア」を狙う
  3. 高単価処方箋の作る順番
  4. EMシステムズの関連商品


1.調剤基本料1の薬局は、基準難化でも地域支援体制加算を目指すべき

 地域支援体制加算1の主な変化ポイントを見ておきます。

著者作図

今までの、①~③については2024年6月以降でも、地域支援体制加算1~4まですべてで必要となってきます。そのため、在宅件数24件(単一建物1人以外も可)は相変わらず必須となりますので、在宅の実施は必須です。「麻薬小売業者の免許」「在宅24件(単一建物1人以外も可)」「かかりつけ薬剤師の届出」プラス❶~❿から3つとなったため、取得難易度が上昇しています。

 

 地域支援体制加算2の主な変化ポイントも見ておきます。

著者作図

 地域支援体制加算2は、一つ一つの基準のレベルは易しくなりましたが、項目数が8個以上の要件を満たす必要がありますので、薬局によって捉え方は変わると思いますが、項目数が増えたことに対して厳しいと捉える薬局が多いように感じます。
「地域支援体制加算1」「地域支援体制加算2」ともに、難易度は上がっていますが、私は調剤基本料1の薬局は、それでも狙っていくべきと思っています。理由はシンプルで、薬局の自主努力で差をつけられる最大の加算だからです。月1,000枚の処方箋で考えると、地域支援体制加算1を取れば、月32万円(年384万円)の利益がでます
集中率や利益率が高い店舗や大手薬局は、調剤基本料2、3となりますが、かなり難しい「地域支援体制加算3」「地域支援体制加算4」しか狙えません。 地域支援体制加算と他の加算を比較してみると、一目瞭然で、調剤基本料1かそれ以外で、差がついているのはこの加算と調剤基本料しかありません。手間以上に価値があると思いますので、是非取得をすることをおすすめいたします。

 

2.「地域支援体制加算1、2」を取っている薬局は「在宅でも緩和ケア」を狙う

 今回の改定では、「在宅」への加算が多く評価されました。地域支援体制加算を算定できている薬局が次に狙うべきポイントは、在宅のターミナルへの参画です。お勧めする理由は、無菌製剤処理加算の改定(条件緩和改定)、在宅薬学総合体制加算2の新設がされ、利益率を高めることができるからです。 無菌製剤処理加算の主な変化ポイントを見ていきましょう。

出典:中央社会保険医療協議会 総会(第562回) 調剤(その2)より

上表が変化のポイントですが、1日あたりの点数は増えませんが、赤枠で示させていただきましたように、薬局で主に行われている無菌製剤処理加算で行われる「注射麻薬の充填」が加算対象として増えました。注射麻薬は、主にターミナルの際に使われます。麻薬原液の充填は、希釈等に近い手間はかかりますが、点数として算定できませんでした。さらにこの原液充填の割合が、中医協が注射麻薬調剤の約1/4~1/3を占めるとの報告がありました。

 今後は、注射麻薬調剤の約1/4~1/3の充填を薬局は加算できることとなり、経営環境は良好となります。
また、新設された在宅薬学総合体制加算2も確認します。

出典:厚生労働省 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)より

 在宅薬学総合体制加算1は、今まであった在宅患者調剤加算とほぼ同様の加算になります。(在宅の調剤を行う毎に15点算定ができます。)注目は、在宅薬学総合体制加算2ですが、薬局内にクリーンベンチの設置(安全キャビネット、無菌室でも可)、注射麻薬の備蓄などが条件になりますが、在宅の調剤を行う毎に50点算定ができます。しかし、在宅薬学総合体制加算2は、大部分の薬局が関わる「ア」の条件に注射麻薬の調剤実績は問われておりません。つまり、新規で始めようとする薬局でも申請書に書かれているクリーンベンチ等の設備を整えることや、条件を満たしやすいと言えます。実績条件としては、かかりつけ薬剤師指導料の算定実績であり、地域支援体制加算を算定している薬局向きとなります。

 

3.高単価処方箋の作る順番

 今回の改定を見ることで、高単価処方箋になり得るポイントをまとめてきました。

著者作図

単価を上げていく順番を上図にまとめました。
処方箋単価は、「外来のみ」→「在宅スタート」→「地域支援獲得」→「ターミナル対応」となります。
外来のみの観点では、「連携強化加算」や「医療DX推進体制整備加算」は処方箋にほぼベタどりできますので、しっかりと取れるように整備します。

次に在宅スタートですが、在宅医療へ新規で参入する趣旨で書いています。在宅医療を行うことで、地域支援体制加算の加算も取れるように意識をしていきます。もちろん、一気にターミナル対応を最初から導入されても良いですが、地域支援体制加算を取ることが最も経済合理性が高いため、まず地域支援体制加算を算定し、その後にターミナル対応とさせて頂きました。

最後に、高単価処方箋をつくることは、それなりに労力が必要になるかと思いますが、これからの未来の人口動態は、在宅が必要な要介護者(85歳以上)が増えることが確実です。つまり、長期的方向性としても、在宅は成長産業として捉えてくるでしょう。人口動態を背景として、未来永劫とは言いませんが、「在宅を薬剤師に!ターミナルを薬剤師に!」の流れは続くと考えます。
新しいことをやるときには組織や現場に負荷がかかりますが、それでも「成長痛」と考えて未来に投資するのは如何でしょうか。

 

4.EMシステムズの関連商品

 在宅医療の報告書記載時間は在宅調剤をする上で、考えなければならないポイントになります。 報告書の時間1/2となる効率よく行うためのシステムとして、「DX薬歴with Recepty」をご紹介します。

出典:【EMシステムズ】DX薬歴 with Recepty

弊社では、高単価処方箋を作るのに困っている薬局様のコンサルティングを主に行っております。
新しいことを行うときには、退職者が出てしまうものです。しかし、現在の薬局の置かれている環境は、高利益体質の組織が求められています。中小企業では良くありがちな採用の悩み、組織の悩みを固めることで、高単価処方箋を作る原動力となります。弊社でも無料相談をしていますので、お気軽にお声がけください。

 

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著者紹介

鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役

薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。新卒で薬剤師国家試験予備校に講師として就職。講師業は年間100日以上、15年間で9000時間以上登壇。短時間で最大限の情報を講義内容と話し方に評価を受け、東京大学など全国32大学への出張講義。武田薬品工業(株)、ファイザー(株)等大手製薬企業20社以上の研修講師へと幅を広げた。

27歳で管理職に昇進。最初は、マネージャー職に苦戦するも薬剤師合格率(20部署中)1位を予備校始まって以来初の3年連続達成。

薬局薬剤師の経験を経て、専門部署を持てない中小薬局専門のコンサルティング会社を経営。「お客様の思いをカタチに」をモットーに中小薬局経営者の右腕になれる存在を目指している。特に、地域支援体制加算の算定や在宅導入サポートは好評。

著書に「薬の裏側(総合法令出版社)」があり、服薬指導に厚みを持たせる研修も好評。

https://amzn.to/3uvq6mi

YouTubeチャンネル(薬剤師そほうの薬局経営塾)

https://www.youtube.com/channel/UC_c5_QbVmChYgZ3VxsCI84w/featured