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令和6年からの新たな福祉・介護職員等処遇改善加算 ~加算算定の主な変更点と注意点~
2024.04.22
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定では、3つの観点をもとに処遇改善に係る加算が一本化される大きな変更がありました。
その3つは①事業者の賃金改善や申請に係る事務負担を軽減する観点、②利用者にとって分かりやすい制度とし、利用者負担の理解を得やすくする観点、③事業所全体として、柔軟な事業運営を可能とする観点です。
計画書の届出期日は令和6年4月15日であることが原則とされていますが、柔軟な取扱いが認められ、計画書の変更が令和6年6月15日まで受け付けられることになりました。
既に提出済みの方も一本化された新たな福祉・介護職員等処遇改善加算の主な変更点と注意点についてお伝えします。
【目次】
1.福祉・介護職員等処遇改善加算の基本的な考え方
新たな福祉・介護職員等処遇改善加算(以下、「新たな加算」)は、従来の福祉・介護職員等処遇改善加算と変わらず福祉・介護職員その他職員の賃金の改善に充てることが求められます。
その際の賃金の改善とは、基本給、手当、賞与等(退職手当を除く)のうち対象とする項目を特定した上で行うこととされています。また福祉・介護職員等処遇改善加算による賃金改善に伴う法定福利費等(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料、労災保険料等)の事業主負担の増加分を含むことができます。
2.賃金配分の職種
賃金改善における職種間の賃金配分は、福祉・介護職員(※1)への配分が基本です。特に経験・技能のある障害福祉人材(※2)に重点的に配分することとされていますが、障害福祉サービス事業者等の判断により、福祉・介護職員以外の職種への配分も含め、事業所内で柔軟な配分を認められています。
ただし一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所のみに賃金改善を集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないことに注意が必要です。
(※1)福祉・介護職員等処遇改善加算の対象となる福祉・介護職員は、下記の職種です。
ホームヘルパー、生活支援員、児童指導員、保育士、世話人、職業指導員、地域移行支援員、就労支援員、就労定着支援員、就労選択支援員、地域生活支援員、訪問支援員、夜間支援従事者、EPAによる介護福祉士候補者など
(※2)介護福祉士等であって、経験・技能を有する障害福祉人材と認められる者を想定
3.令和7年度の更なるベースアップにつなげるための考え方
令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップすることは、目指すべき目標とされていますが、算定要件ではないため、必ずそのベースアップ率を満たさなければならないということではない点に注意が必要です。
ただし新たな加算は、ベースアップにつながるように、下記のことが認められています、
出典:「処遇改善加算」の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります(厚生労働省)
4.新たな加算等要件
新たな加算を算定するためには、賃金の改善に加え、算定する加算の種類により(1)キャリアパス要件、(2)月額賃金改善要件、(3)職場環境等要件を満たすことが求められます。
出典:「処遇改善加算」の制度が一本化(福祉・介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります(厚生労働省)
特に、上段図の中にある赤枠について注意が必要です。
- キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)
従来の加算の特定加算の要件の一つであった、経験・技能のある障害福祉人材のうち1人以上は、①賃金改善に要する費用の見込額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均とする)以上又は②賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であることの内、①賃金改善に要する費用の見込額が月額平均8万円以上の職員を置く要件は、令和6年度中までとされています。
この要件は新たな加算のⅠ・Ⅱを取得する事業者に影響があります。
- 月額賃金改善要件Ⅰ(月給による賃金改善)
令和7年度から新加算Ⅳに該当する加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることが必要です。
なお、加算を未算定の事業所が新規に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定し始める場合を除き、本要件を満たすために、賃金総額を新たに増加させる必要はありません。
したがって、基本給等以外の手当又は一時金により行っている賃金改善の一部を減額し、その分を基本給等に付け替えることで、本要件を満たすことが可能です。
- 職場環境等要件
令和7年度以降は、新たな加算Ⅰ又はⅡを算定する場合は、「入職促進に向けた取組」、「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」、「両立支援・多様な働き方の推進」、「腰痛を含む心身の健康管理」、及び「やりがい・働きがいの醸成」の区分ごとに2以上の取組を実施し、新たな加算Ⅲ又はⅣを算定する場合は、上記の区分ごとに1以上を実施することが必要です。
また、新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合は、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち3以上の取組(うち⑱現場の課題の見える化は必須)を実施し、新加算Ⅲ又はⅣを算定する場合は「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち2つ以上の取組を実施することが求められます。
(ただし、1法人あたり1の施設又は事業所のみを運営するような法人等の小規模事業者は、㉔の取組を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとされます)
更に、新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合は、職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等(原則、障害福祉サービス等情報公表制度を活用)により公表することが求められます。
事務担当者向け・詳細説明資料(厚生労働省)
5.都道府県知事等への変更等の届出
新たな加算を算定する際に提出した処遇改善計画書の内容に変更があった場合には、届け出が必要です。
(訪問系事業所において、喀痰吸引を必要とする利用者の割合についての要件等を満たせないことにより、特定事業所加算を算定できない状況が常態化し、3か月以上継続した場合も、同様に変更の届出を行うこと)
実績報告書を提出する際に、就業規則を改定した記載があるとして変更届出書もあわせて届け出ること
今回、新たな加算の主な変更点と注意点をお伝えしました。
計画書変更の受付は6月15日までとされるため、再度新たな加算について見直しをすることが望ましいかもしれません。