- 介護/福祉
- #改定情報
令和6年度介護報酬改定における地域密着型サービス(小多機・看多機・定期巡回)の 見直しポイント
2024.04.23
令和6年度介護報酬改定における地域密着型サービスの中で、小規模多機能型居宅介護(小多機)、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(定期巡回)の3サービスの見直しポイントを解説したいと思います。
全体改定率1.59%(処遇改善0.98%、その他0.61%)の割り振りにおいて、それぞれの基本報酬単位は、小多機は+0.34%程度、看多機は+0.07%程度とそれぞれ微増となりましたが、定期巡回は-4.4%ということで、全サービスで最大のマイナスとなりました。
そうした背景には、最新の介護事業経営実態調査における収支差率が11.0%となり、収益性が高いサービスであると公表されたことにあります。訪問介護のマイナス報酬と合わせて、介護業界に大きな波紋を呼んでいますが、介護職員等処遇改善加算の算定率が最大値に設定されたことで、大幅な処遇改善を行い、人材不足への対策として活用しなければなりません。
さらに、定期巡回では夜間にのみサービスを提供する利用者における基本報酬単位を設定し、将来的な夜間対応型訪問介護との統合を見据えて整合性が図られています。
見直し項目について、小多機は14項目、看多機は19項目、定期巡回は15項目となり、他サービスと共通する見直し項目は、「BCP未策定に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進」「処遇改善加算の一本化」「テレワークの取り扱いの明確化」「管理者の兼務範囲の明確化」「特別地域加算の見直し」がありますが、3サービスに共通する最も影響の大きな見直しの1つが「総合マネジメント体制強化加算の見直し」です。
「総合マネジメント体制強化加算の見直し」は、算定率が3サービスとも9割を超えていることから、当初は本体報酬に組み込むことが検討されましたが、区分支給限度基準額の外に位置する加算であり、3サービスはいずれも包括払い報酬であるため、基本報酬単位が高く設定されており、福祉用具貸与等の他サービスと組み合わせることで、利用者の一定割合が区部支給限度基準額の上限に達している状況です。そうした中で、本体報酬に組み込むことは、実質的なマイナス改定となりかねないと、業界団体より懸念の声が多数あがり、本体報酬への組み込みは見送られることとなりました。
今回の見直しにおいては、そのような背景も踏まえて、1000単位から800単位へと200単位マイナスとなり、地域連携の強化や、地域共生社会の実現に資する取組みを行うことで算定可能な1200単位の上位区分の加算が創設されました。大きな単位数であるため、この上位区分の加算算定を行うことができるかどうかで、事業運営に大きな影響を及ぼします。特に、基本報酬単位が大幅にマイナスとなった定期巡回の事業所は、上位区分の加算算定を行うことが極めて重要であります。
また、小多機能と看多機の2サービスに共通する見直し項目は、「科学的介護推進体制加算の見直し」「生産性向上推進体制加算の創設」「外国人材の人員配置要件の見直し」「官理者の配置基準の見直し」「認知症加算の見直し」となります。
「認知症加算の見直し」では、専門的研修修了者の配置等によって算定可能な上位区分の加算が創設され、従来どおりの対応であった場合は単位数が減少します。これまで以上に、認知症への対応が求められています。
また看多機は、診療報酬との同時改定による医療連携の推進について、いくつか見直し項目があり、「専門管理加算の創設」「柔軟なサービス利用の促進」「ターミナルケア加算の見直し」「遠隔死亡診断補助加算の創設」「排せつ支援加算の見直し」「褥瘡マネジメント加算の見直し」等になります。「柔軟なサービス利用の促進」では、看多機は包括報酬払いのサービスの中でも利用者の利用頻度の幅が広く、利用者の柔軟な利用を促進する観点から、①週平均1回に満たない利用の場合等には基本報酬単位の30%の減算とすること、②緊急時訪問看護加算について、緊急時の宿泊サービスを必要に応じて体制を評価する要件を追加し、緊急時対応加算として単位数が200単位上がります。看多機は、基本報酬単位のプラスは極めて軽微ですが、新設加算や拡充される加算の対応を行うことで、大きなプラスになる可能性もあります。
定期巡回は、共通の見直し項目に加えて、「認知症専門ケア加算の見直し」「口腔連携強化加算の創設」「緊急時訪問看護加算の見直し」等が行われます。
また、定期巡回固有の「集約化範囲の見直し」では、都道府県を超えた事業所間連携が認められ、オペレーターの効率化が図れることとなります。
令和6年度介護報酬改定において、3サービスでは、「総合マネジメン体制加強化加算」の上位区分への対応が最も大きなポイントとなります。また定期巡回では、必要な加算を全て算定する体制を構築するとともに、生産性の向上、および業務効率化を図ることが、大幅なマイナス改定への対応として、さらに求められることとなります。
著者:全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行