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どうなる?医療DXのこの先 ~ゼロから学ぶ「電子カルテ情報共有サービス」「電カル標準化」「HL7 FHIR」~
2024.05.02
令和6年度診療報酬改定における医療DX項目として、「医療DX推進体制整備加算」が新設されました。
同加算には、今後の医療DX政策の方向性が強く打ち出されています。
そこで、今回は今後の医療DXの流れを説明するとともに、電子カルテ情報共有サービスや電子カルテ情報の標準化、HL7FHIRについても解説します。
【目次】
1.医療DXの推進に関する工程表
2023年6月2日に、政府は今後の医療DXの推進スケジュールをまとめた「医療DXの推進に関する工程表」を公表しました。同工程表では、健康保険証の廃止や電子処方箋の普及・推進、電子カルテ情報共有サービスの開始などが示されており、併せて電子カルテ情報等の標準化、診療報酬改定DXといった内容が盛り込まれています。
政府は最終目標としては、全国医療情報プラットフォームの構築に向けて、オンライン資格確認システムのネットワークを拡充し、電子カルテ等の医療機関等が発生源となる医療情報について、クラウド間連携を実現し、自治体や介護事業者等間を含め、必要なときに必要な情報を共有・交換できる全国的なプラットフォームをイメージしています。
2.医療DX推進の現状
オンライン資格確認については、2024年3月末時点で、全体で210,176施設に導入され、その内訳は病院8055施設、医科診療所81,786施設、歯科診療所62,163施設、薬局58,172施設となっています。医療機関・薬局の大半にシステム導入が完了している一方で、マイナ保険証の利用率は5.4%にとどまっており、12月2日の健康保険証の廃止に向けて、早急に利用率を高める必要があります。
そこで、「マイナ保険証利用促進に取り組む医療機関・薬局への支援金」が設けられ、マイナ保険証の利用率向上に努めることで支援金が得られる仕組みがスタートしています。締め切りは2024年1月とされており、この影響で今後は普及が加速することが期待されています。
一方、電子処方箋については、2024年1月28日時点でサービス運用を開始した施設は、12,491施設(病院31、医科診療所866、歯科診療所47、薬局11,547)にとどまっており、今後さらなる普及を図っていく必要があります。
3.令和6年度診療報酬改定における医療DX
令和6年度診療報酬改定において、医療DX推進体制整備加算が新設されました。同加算の目的は、「オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、また、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保している場合の評価」とされています。
また、算定要件として「医療DX推進に係る体制として別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して初診を行った場合は、医療DX推進体制整備加算として、月1回に限り8点を所定点数に加算する」とありますので、届出が必要であり、初診時に月1回のみ算定できることが分かります。
施設基準は、以下の通りとなります。
電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスについてはそれぞれ経過措置が用意されており、経過措置までに準備が完了しなかった場合は、同点数が算定できなくなるので注意が必要です。また、マイナンバーカードの実績については、何パーセントになるのかは、まだ明らかになっていませんが、令和6年10月1日から適用となるため、期限間際に焦らないように、いまのうちからマイナ保険証の利用を増やしておく必要があります。
また、今回再された「生活習慣病管理料」においても、電子カルテ情報共有サービスを利用することで、生活習慣病管理料の「療養計画書」における検査結果の登録や、最終的には療養計画書の発行さえも省略することが可能になるとしています。
4.電子カルテ情報共有サービス
施設基準の要件にある「電子カルテ情報共有サービス」は、オンライン資格確認等システム、電子処方箋の次に予定される3つ目の医療DX政策で、2025年4月ごろスタート予定となっています。
電子カルテ情報共有サービスとは、①紹介状送付サービス②健診文書閲覧サービス③6情報閲覧サービス―の3つのサービスから構成されています。仕組みを解説すると、医療機関で患者同意のもと、医師が電子カルテ上で紹介状を作成すると、電子カルテ情報共有サービスの文書情報管理データベースにアップロードされます。その後、紹介先の医療機関はマイナンバーカードで患者同意を受けることで、紹介状をダウンロードし閲覧できるようになります。また、患者に関する6情報や健診結果についても、それぞれ医療情報管理及び健診文書管理データベースに蓄積され、全国の医療機関で閲覧することが可能となります。これらの情報は、患者もマイナポータルを通じて閲覧することが可能となります。
① 紹介状送付サービス
紹介状送付サービスは、診療情報提供書(いわゆる紹介状)をデジタルデータとして、医療機関間で共有するサービスです。これが実現すると、紹介状の印刷や封入、宛名書きなどの作業がなくなり、業務削減効果が見込めるだけでなく、患者が持参することもなくなるため、紹介状の紛失や持参忘れなどもなくなることになります。紹介先医療機関においてもデジタルデータとして紹介状を取得可能なため、電子カルテへ情報を手入力する必要もなくなります。
② 健診文書閲覧サービス
健診文書閲覧サービスは、健診結果を実施主体及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービスです。現在、オンライン資格確認において、特定健診の結果は閲覧可能となっていますが、今後は企業健診や人間ドックなどの結果についても順次閲覧が可能になる予定です。
③ 6情報閲覧サービス
6情報閲覧サービスは、厚労省がまず共有しようと考えた患者に係る6情報を全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービスです。ちなみに、6情報とは、傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査・処方を指します。これらの情報は医療機関において電子カルテへの登録と合わせて、情報が(医療情報管理)データベースに蓄積され、医療機関や患者自らが閲覧可能となる仕組みです。
導入手順の詳細や補助金の情報(病院向けにはすでに公表されていますが、クリニックはまだです。)については今後順次公開されていく予定となっています。以下のサイトより確認をお願いします。
5.電子カルテ情報の標準化
電子カルテ情報共有サービスを実現するためには、電子カルテ情報の標準化も大切ですが、いまだ紙カルテで運用している医療機関に対してのサポートも重要になります。電子カルテの普及率は厚労省の「電子カルテシステム等の普及状況の推移」によると、2020年時点で、病院で57.2%、診療所で49.9%となっています。特に200床未満の病院(48.8%)と診療所の普及が遅れていることが明らかとなっています。
そこで、政府は電子カルテの普及を進めるために、標準規格準拠の電子カルテのメリットを踏まえたコスト負担の軽減を検討しています。具体的には、①標準規格準拠(HL7 FHIR規格でのデータ・情報の交換ができる)への対応を各社の電子カルテの基本共通機能(標準パッケージ機能)として実装すること②標準規格の更新や拡充に応じて、電子カルテの基本共通機能をパッケージとして更新・機能拡張すること③標準規格準拠の電子カルテの導入で、当該電子カルテの基本共通機能が、随時、更新・機能拡張されることを踏まえ、当該機能への医療機関独自のカスタマイズを避けること、が必要としています。
6.HL7 FHIR
また、電子カルテに登録された情報を医療機関間で適切に共有するためには、既存の電子カルテシステムにおいて、情報共有プロトコールを組み込む必要があります。わが国には40社を超える電子カルテメーカーが存在し、それぞれが独自で開発してきたために、システム間での情報共有がこれまで困難とされてきました。
そこで政府は、国際的標準規格である「HL7 FHIR」という仕組みを採用することを決定しています。HL7とは、アメリカで設立された医療情報システム間における情報交換のための国際標準規約の作成、普及推進を行う非営利団体「HL7International」のことです。また、FHIRは「Fast healthcare Interoperability Resources」の略で、Web技術を用いて医療情報をやり取りできる医療情報交換の次世代フレームワークのことです。
まとめると、HL7という団体が、医療情報システムの間で情報交換するルールを作成し、それを全国の電子カルテシステムに搭載することで、共通のフォーマットで書き込み、保存、共有が可能となるわけです。HL7には、アメリカをはじめ世界の40か国が加盟しています。
7.まとめ
医療DXの工程表では、オンライン資格確認、電子処方箋の次に開始されるサービスとして「電子カルテ情報共有サービス」が位置付けられています。
令和6年度診療報酬改定では、医療DXが重点的に盛り込まれました。医療DX推進体制整備加算が新設され、その中で2025年9月までに「電子カルテ情報共有サービス」への参加が求められています。また、生活習慣病管理料における「療養計画書」について、電子カルテ情報共有サービスの患者サマリに登録することで省略することが可能としています。 電子カルテ情報共有サービスは、2025年4月より開始予定で、現在準備が進められています。今後、具体的な導入方法、補助金の情報が出てくる予定であり、病院向けには補助金の概要が示されています。
このような状況を受けて、今後は電子カルテメーカー選定において、ますます医療DX対応レベルが重要になっていくことが予想されます。
新しい電子カルテ選定のポイントは、
① 政府の医療DXへの対応レベル(いわゆるサポート)
② システム間連携
③ コスト
④ 操作性
⑤ 機能
となっていくのではないでしょうか。
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筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局