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シリーズ・令和6年度調剤報酬改定からこれからの薬局づくりを考える           第9回「改定結果を踏まえたこれからの薬局作り」

2024.05.15

 

 報酬改定に向けてにぎわいを見せた数カ月でしたが、すでに「これからの薬局・薬剤師」そして次期改定に向けた議論が始まっています。
報酬改定はゴールではなく、次に向けたスタートでもあります。
今回は本改定に関する総括をしつつ、「これからの薬局づくり」という視点で押さえるべきポイントをいくつか挙げてみたいと思います。

【目次】

  1. 令和6年度改定は政策が強く反映された改定
  2. 外来業務における評価は天井を迎えた
  3. 「外来」から「在宅」への移行
  4. 地域支援体制加算の今後の方向性とは
  5. 環境の変化を理解し、これからの薬局作りを考える


1.令和6年度改定は政策が強く反映された改定

 改定を総括すると、「対物から対人」、「患者のための薬局ビジョン」など色々なキーワードが取り上げられた数年前に対し、その内容は「国の政策」に対する準備や行動が色濃く反映された改定だったといえます。感染症対応が求められる「連携強化加算」、医療DXに向けたインフラ整備となる「医療DX推進整備体制加算」、選定療養や医薬品供給問題に対する「特定薬剤管理指導加算3」などが該当します。インフラ整備に対する施設基準の取得が改定結果のカギを握るという非常に珍しい改定内容になりました。
平成30年以降、医薬分業の在り方に対し厳しい指摘を受けている中、今回の改定が求める「あるべき姿」に近づくような行動変容を促す内容になっているかというと疑問は残ります。ということは、次回改定に向けたこの2年。これまで以上に厳しい議論が進んでいくことが予想されます。

 

2.外来業務における評価は天井を迎えた

 改定項目は幅広くありましたが、新設された項目は多くはないです。
その多くが前述のとおり「国の施策」に対する評価であり、薬剤師業務自体を評価した報酬はごくわずかです。外来業務においては服薬フォローに対する「服薬情報等提供料2」と「調剤後薬剤管理指導料」の見直しにとどまります。調剤後薬剤管理指導料は慢性心不全の患者が対象に追加となりましたが、服薬フォローを行い、医療機関に報告するというフローは服薬情報等提供料と変わりないです。算定できる患者の対象拡大であり、新しい業務が追加となったというわけではないです。「服薬支援」「服薬フォロー」「減薬提案」に対する評価が既にある中で、算定対象の拡大はあっても、今後新設されるべき「新しい業務」は出尽くしており、いかに今の報酬の質を上げていくのかというのが今後のポイントになると考えられるのではないでしょうか。

 

3.「外来」から「在宅」への移行

 在宅医療に対する取り組みが重要となることに、もはや説明はいらないと思います。外来業務に対する評価が天井を迎えたと仮定すると、今後の評価は「在宅医療」を中心に展開されていきます。これまでプラス改定が続いていますが、昨今の社会保障に対する状況を整理すると、近い将来「マイナス改定」になる未来も見えてきます。そうなった際に、どのような業務を減算(マイナス)とし、どういった業務を評価(プラス)とするのかは予想がつくのではと思います。現在議論されている「調剤の一部外部委託」「医薬品の保険適用範囲の見直し」などは外来業務に対する報酬にも大きく変わってきます。高齢化率30%、35%はすぐそこまで来ています。薬局・薬剤師という資源を医療に適切に配分していくのか。その答えは「在宅薬学総合体制加算2」が示してくれていると思います。

 

4.地域支援体制加算の今後の方向性とは

 話題となった地域支援体制加算ですが、減算という事実を踏まえると次回改定で増点となる可能性は極めて低いと考えられます。本改定に対する厚生労働省の考えを聞く機会がほとんどない状況ですので、どのような認識なのかは予想するしかないですが、多くの疑念が届いていることは事実です。では、求める対人業務に対し取り組む必要がないのかというとそうではないです。特に外来を中心とする薬局にとって大きな評価です。調剤基本料の1本化も議論に出ています。では何をもって6万件以上ある薬局の機能を評価していくのか。それは現在の調剤報酬構造上は「地域支援体制加算」でしかないです。

 

5.環境の変化を理解し、これからの薬局作りを考える

 これからどうすればいいのか。
非常に混乱を生んだ改定のように感じますが、改定内容を一つ一つ整理していくと取り組むべき方向性は見えてきます。
外来業務は「服薬フォロー」を起点とした業務への重要性が増していきます
薬剤師に求められる活躍の場は、「外来」から「在宅」へと変化していきます。
報酬改定外の議論として、「規制改革」や「薬局・薬剤師の機能向上」に関する検討会も続いています。
求めているのは、業務の効率化と医療資源の再分配です。
これからどういう薬局を作っていかなければいけないのか。それはここ近年問われ続けていることの延長線上にあるといえるのではないでしょうか。

 

 

筆者:駒形公大(株式会社Kaeマネジメント 代表取締役 / 2025年戦略推進本部長)