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令和6年度介護報酬改定における居宅介護支援の見直しポイントと             ケアマネジャーの諸課題の解決に向けて

2024.05.27

 

 令和6年度介護報酬改定における居宅介護支援の見直しのポイントと、ケアマネジャーの様々な課題解決に向けた今後の議論のゆくえについて解説したいと思います。

 

 まずは今回の報酬改定の振り返りになりますが、全体改定率1.59%(処遇改善0.98%、その他0.61%)において、居宅介護支援の基本報酬単位は+0.92%増となり、平均を上回る上げ幅ではあるものの、微増といえる水準です。多くの居宅介護支援のケアマネジャーが期待していた、処遇改善関連加算の創設が今回も実現されることはなく、プラス改定の一方で諸手をあげて喜べる中身ではありません。17の見直し項目となり、他サービスと比較しても決して多いわけではありませんが、居宅介護支援固有の見直し項目が11あったので、大きな変化が生じたサービス種別であると言えます。他サービスと共通の見直し項目は、「業務継続計画(BCP)未作成に対する減算の導入」「高齢者虐待防止の推進」「身体拘束等の適正化の推進」「テレワークの取扱いの明確化」等となります。

 

 居宅介護支援固有の11の見直し項目は下記となります。

① 特定事業所加算の見直し
② 市町村指定による介護予防支援の取扱い
③ オンラインモニタリグの導入
④ 入院時情報連携加算の見直し
⑤ 通院時情報連携加算の見直し
⑥ ターミナルケアマネジメント加算等の見直し
⑦ ケアプラン作成における主治医の明確化
⑧ 公正中立性確保のための取組の見直し
⑨ 介護支援専門員1人あたりの取扱い件数の見直し(報酬)
⑩ 介護支援専門員1人あたりの取扱い件数の見直し(基準)
⑪ 同一建物に居住する利用者へのケアマネジメント

 

     ① 特定事業所加算の見直し」は、全区分の単位数が14単位増となり、ヤングケアラー
      や、障害者などの他制度に関する研修への参加要件が追加される一方で、業務負担軽
      減の観点から、運営基準減算に係る要件が削除されました。

     ② 市町村指定による介護予防支援の取扱い」は、法改正に伴い、居宅介護支援が
      自治体の指定を受けて介護予防支援事業が実施可能となることから、介護予防支援費
      の単位数をプラスするとともに、いくつかの運用ルールの見直しが行われました。
      しかし、要支援者へのサービスの大多数を占める訪問介護と通所介護は、介護予防・
      日常生活支援総合事業となるため対象外であり、現場の混乱を生じる結果になってい
      ます。

     ③ オンラインモニタリングの導入」は、コロナ禍で有効活用されたオンラインに
      よるモニタリングの実施が可能となる要件となり、現場の効率化にとっては有難い見
      直しとなりました。

     ④ 入院時情報連携加算の見直し」は、入院当日の情報連携を行うことによる算定
      要件の見直しとあわせて、単位数がプラスとなりました。

     ⑤ 通院時情報連携加算の見直し」は、歯科医師への受診同行の際にも算定可能と
      なる要件に見直されました。

     ⑥ ターミナルケアマネジメント加算等の見直し」は、終末期における医療・介護
      の提供について、利用者・家族に方針を確認した上で対応する要件が追加されました。

     ⑦ ケアプラン作成における主治医の明確化」は、訪問リハビリテーション・通所リ
      ハビリテーションの利用に際する主治医等の意見を求める際、入院中の医療機関の医
      師を主治医等に含むこととなりました。

     ⑧ 公正中立性確保のための取組の見直し」は、前回改定で訪問介護・通所介護(
      地域密着型含む)・福祉用具貸与における各サービスの提供割合を利用者に説明し、
      同意を得ることが義務化されましたが、集合住宅等での利用以外では趣旨が分かりに
      くいことから、努力義務に見直されました。

     ⑨ 介護支援専門員1人あたりの取扱い件数の見直し(報酬)・⑩介護支援専門員
      1人あたりの取扱い件数の見直し(基準)」は、逓減制の更なる見直しであり、居宅
      介護支援費Ⅰ(ⅰ)の取扱い件数を『45未満』へと拡大し、居宅介護支援費Ⅱの取
      扱い件数をケアプランデータ連携システムの活用と事務員の配置によって『50未満』
      へと拡大されました。また、介護予防支援は3件で1のカウントへと見直されました。

     ⑪同一建物に居住する利用者へのケアマネジメント」は、同一建物減算を居宅介護支
      援にも導入されることになりました。

 

 居宅介護支援の基本報酬は微増の水準であり、処遇改善関連加算の創設が見送られる状況のなかで、ケアマネジャーの処遇改善を実現するためは、ケアマネジメントの質を確保した上での生産性向上が大きなポイントとなります。新たな加算算定を検討すると同時に、逓減制の見直しに伴うケアマネジャー1人あたりの取扱い件数を見直した上で、収入増を実現して、処遇改善の原資とすることが求められています。決して容易に実現できることではありませんが、次期改定までの3年間をかけて取り組んで行く必要があると思います。

 令和6年度介護報酬改定はスタートしたばかりですが、早速、新たな議論の動きが出てきています。4月16日に開催された「財政制度等審議会財政制度分科会(財政審)」において、次回の法改正におけるケアプランの利用者負担の導入について、財務省より、改めて提言が示されました。社会保障審議会介護保険部会における来年末までの議論で、このテーマは大きな論点になることは間違いありません。

 

 また、今年度より「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」が設置され、4つの検討事項が示されました。「①ケアマネジャーの業務の在り方について」は、主任ケアマネジャーの役割等の検討、およびシャドーワークとも言われる付帯業務と本来業務の整理等が検討されることになります。「②人材確保・定着に向けた方策について」は、処遇改善に関する支援策等の検討となります。「③法定研修の在り方について」は、更新研修の在り方や見直し等が検討されることになります。「④ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組みの促進」は、認知症や単身高齢者への対応力強化や、生産性向上の在り方等が検討されることになります。5月9日に開催された第2回検討会にはヒアリング団体として意見提言を行ってきました。

 

 このように居宅介護支援・ケアマネジャーの在り方に関する議論がこれから大きく動いていくことが予測されます。是非とも議論のゆくえに着目ください。

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著者:全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行