• 調剤
  • #改定情報
  • #薬局経営

シリーズ・令和6年度調剤報酬改定からこれからの薬局づくりを考える           第10回「在宅薬学総合体制加算2を理解する」

2024.05.27

 

 在宅業務に対して多く評価が新設された令和6年度改定ですが、その中でも注目されたのが「在宅薬学総合体制加算2」(50点)です。在宅患者調剤加算の後継として新設された報酬ですが、この加算に挑むべきかどうかという相談をよく受けます。今回は新設された在宅薬学総合体制加算2について解説をしていきます。

【目次】

  1. 在宅医療を3つのステージに分類し評価の細分化
  2. 在宅薬学総合体制加算2への挑戦
  3. 在宅薬学総合体制加算と地域連携薬局


1.在宅医療を3つのステージに分類し評価の細分化

 改定の特徴は在宅医療を「移行期」「療養期」「終末期」の3のステージに分類し、業務を見直したことです。在宅医療に取り組む体制を有している薬局は「在宅患者調剤加算」で評価されていましたが、在宅業務に取り組んでいる薬局を「在宅薬学総合体制加算1」、無菌製剤処理や小児在宅など高度な薬学的管理及び指導の体制を整備している薬局を「在宅薬学総合体制加算2」としています。退院直後や外来から在宅に移行する最初の訪問に対しては「在宅移行初期管理料」を新設。訪問服薬指導に伴う処方提案(医師の処方前)に関する業務を「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」で評価しています。

 その他、月8回訪問を可能とする患者対象の拡大、緊急訪問回数上限を4回から8回に増加(対象患者のみ)と幅広い見直しが行われています。

 

2.在宅薬学総合体制加算2への挑戦

 在宅薬学総合体制加算2(50点)の新設により、「この加算に取り組むべきか」という相談をよく受けます。在宅訪問に係る処方箋にのみ算定できる報酬ですが、従来の報酬より「+35点」という報酬は魅力的です。また地域支援体制加算の減算という背景もあります。加算の取得は薬局の評価ですので、是非挑戦して頂きたいというところですが、取得の是非については体制整備への投資も必要なことから、「投資と回収」という視点からの検討がポイントになります。

 届出を計画している薬局は旧「在宅患者調剤加算」(在宅薬学総合体制加算1)を届出している薬局が主だと思います。(加算1と加算2で異なる点は下のスライドを参照)

出典:令和6年度診療報酬改定(調剤)

 この中で投資が必要になるものは「高度管理医療機器販売業の許可」「医療用麻薬の備蓄・取扱」、「無菌室、クリーンベンチ又は安全キャビネットの整備」です。

 いずれも既に整備しているという薬局は迷うことなく届出をして頂くことになりますが、「在宅業務に取り組んでいる」という薬局すべてが整備済みかというとそうではないです。在宅薬学総合体制加算2は「高度な訪問体制を有している薬局の評価です。

 特に、「無菌製剤処理を実施できる体制」に必要な機器の購入には数万円から数十万円の投資(※) が必要となります。想定される算定回数と届出に必要なコストを算出し、回収可能な在宅件数を有しているのかが届出のポイントになります。

※機器の選定には疑義解釈の回答を参考にされたい。
出典:疑義照会(その4)

 

3.在宅薬学総合体制加算と地域連携薬局

 「患者のための薬局ビジョン」に向けて地域連携薬局が「地域支援体制加算の要件に入るのでは?」という噂をチラホラと耳にしました。結果として、そうなりませんでしたが、感が良い方ならお気づきのことでしょう。

出典:令和5年11月29日中央社会保険医療協議会

 地域支援体制加算(旧要件)と地域連携薬局を比較した際に、地域支援体制加算に不足する項目として「無菌製剤処理の実施体制」「高度管理医療機器の販売業の許可」が挙げられていました。改定により地域支援体制加算ではないですが「在宅薬学総合体制加算2」の要件として盛り込まれたことで、「地域支援体制加算+在宅薬学総合体制加算2=地域連携薬局」という構図が出来上がります。

 一方、地域支援体制加算にはOTC医薬品の備蓄販売が求められ、こちらは健康サポート薬局に近い構図となっています。患者のための薬局ビジョンは2025年以降活躍する薬局像を示したものと言えます。そのような視点で考えると、地域支援体制加算を届出る薬局は「在宅薬学総合体制加算2」の届出を目指し、国の求める薬局像に寄り添うということも今後を見据えた取り組みと言えるのではないでしょうか。

 

 

筆者:駒形公大(株式会社Kaeマネジメント 代表取締役 / 2025年戦略推進本部長)