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【押さえておきたい新薬情報】アルツハイマー型認知症治療薬
2024.06.04
2023年9月、抗アミロイドβ抗体薬のレケンビ®点滴静注〔一般名:レカネマブ(遺伝子組換え)〕が、米国に次いで承認されました。
アルツハイマー病(AD)の原因物質であるアミロイドβ(Aβ)を除去する、初めての根本的治療薬。先行したアデュカヌマブ(遺伝子組換え)は、承認が見送られ、継続審議中です。
認知症の約7割を占めるAD型認知症は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体阻害薬による「対症療法」が主です。
ADの発症機序として、APP(アミロイドβ前駆タンパク質)から2種類の酵素(β/γセクレターゼ)により切断されたAβ(42個のアミノ酸からなるペプチド)が、次第に重合して、神経細胞の外側に「老人斑」として沈着。それが引き金となり、タウタンパク質が過剰にリン酸化されて糸くずのような「神経原線維変化」を形成し神経細胞内に凝集します。このタウの異常な蓄積により神経細胞が破壊され脱落した結果、脳が萎縮して認知機能低下が現れます。この神経変性が10~20年かけて緩徐に進行し、ADを発症するというのがアミロイドカスケード仮説です。
2003年、「Aβを注射すれば、抗体を生じて老人斑が除去される」という発想のもとADワクチン「AN1792」が誕生しましたが、脳脊髄炎による副作用のため開発中止。
その後、ワクチンではなく、抗体そのものを創薬する方向に転換。バピネウズマブとソラネズマブが開発されましたが、対象となった「軽度から中等度のAD」に効果は認められません。その後の研究で神経毒性の本体は、Aβのモノマー(単量体)やオリゴマー(重合体)、凝集して不溶性になった老人斑(フィブリル)ではなく、その前段階である可溶性のプロトフィブリルが示唆されました。そこで、標的をプロトフィブリルに変更し、対象を「発症前駆段階の軽度認知障害(MCI)と軽度AD」に設定することで、有効性を証明できました。
作用機序は、Aβプロトフィブリルに結合した抗体を「目印」に免疫細胞(ミクログリア)が貪食し、Aβプラークを減少させると考えられます。
適用には、アミロイドPETによるアミロイド蓄積の確認か、脳脊髄液によるアミロイドβ低値の所見が必要になります。重大な副作用として、アミロイド関連画像異常(ARIA:アリア)と呼ばれる脳画像の異常所見があります。Aβは神経細胞のほか血管壁にも蓄積するため、Aβを除去すると脳内で浮腫(ARIA-E)や微小出血(ARIA-H)が起こる可能性があります。また、ARIAに伴う症状と考えられる頭痛、めまい、視覚障害などの副作用があります。
商品名 |
レケンビⓇ点滴静注200mg、500mg |
一般名 |
レカネマブ(遺伝子組換え) |
会社名 |
エーザイ株式会社 |
効能・効果 |
アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の |
用法・用量 |
通常、レカネマブ(遺伝子組換え)として10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する |
薬効分類名 |
ヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体 |
警告(要約) |
アミロイドPET、脳脊髄液(CSF)、MRIなど必要な検査及び管理が実施可能な医療施設。ARIAの説明と同意 |
相互作用 (併用注意) |
血液凝固阻止剤、血小板凝集抑制作用を有する薬剤 |
副作用 |
重大な副作用として、インフュージョンリアクション |
薬価 |
点滴静注200mg 45,777円/瓶 |
図 抗アミロイドβ抗体薬の作用機序
抗アミロイドβ抗体薬
(筆者)浜田康次
一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事