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シリーズ・令和6年度調剤報酬改定からこれからの薬局づくりを考える          第11回「特定薬剤管理指導加算を理解する」

2024.06.18

 

 6月に入り新報酬がスタートしました。届出が必要な施設基準に関して各方面で準備に対する右往左往がありましたが、個別報酬は「どれだけ理解できているのか」が算定のカギとなります。本改定では新設報酬はさほど多くはなく、複雑なものではない印象を受けますが、いまだ曖昧さを含んでいるのが「特定薬剤管理指導加算」です。今回は新設された区分の説明も踏まえて解説をしてきます。

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【目次】

  1. 特定薬剤管理指導加算1の大きな見直し
  2. 新設「特定薬剤管理指導加算3」を整理する
  3. 疑義解釈通知に目を通し、算定要件を深堀する


1.特定薬剤管理指導加算1の大きな見直し

 新設された「特定薬剤管理指導加算3」へ注目が集まりますが、既存の「特定薬剤管理指導加算1」に対する算定要件見直しへの対応が求められます。改定前までは「当該薬剤が特に安全管理が必要な医薬品である旨を伝え、当該薬剤についてこれまでの指導内容等も踏まえ適切な指導を行った場合に算定する。」となっており、算定に対する「タイミング」については薬剤師に判断が委ねられていました。本改定では要件を「イ」「ロ」に分けて「タイミング」を明確化しています。

 出典:令和6年3月5日版 令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】p64

 

 「イ」(10点)は「新たに処方された患者に対して必要な指導を行った場合」とし、従来の報酬と同じ点数が設定されていますが、「新たに処方」と算定対象を限定しています。 「ロ」(5点)に関しては「用法又は容量の変更」「副作用の発現状況等に基づき」としており、指定された医薬品の2回目以降の調剤が算定対象となります。旧報酬と比べ大きな違いがないように感じますが、2回目以降の算定に対し「減点」「対象の限定」が入ることで算定件数が減少することが予想されます。すなわち前年と比較した際の減収に繋がります。

 

2.新設「特定薬剤管理指導加算3」を整理する

 新たに新設された「特定薬剤管理指導加算3」ですが、一つの報酬に3つの算定ケースが盛り込まれていることで混乱を招いています。

出典:令和6年3月5日版 令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】p65

 

 まず大分類として「イ」「ロ」があり、「ロ」は2つの要件に分けられます。特定薬剤管理指導加算1を「特に安全性の管理が必要な医薬品」(いわゆる「ハイリスク薬」)に対する加算とするならば、特定薬剤管理指導加算3は「重点的に丁寧な説明が必要な場合」に対する加算です。「イ」は医薬品リスク管理計画の策定が求められている医薬品に対し、資料を用いて患者に説明が求められています。(算定は初回のみ)。

 

医薬品リスク管理計画とは
個々の医薬品について安全性上の検討課題を特定し,使用成績調査,市販直後調査等による調査・情報収集や,医療関係者への追加の情報提供などの医薬品のリスクを低減するための取組を,医薬品ごとに文書化したもの。平成25年4月1日以降に製造販売承認申請される新医薬品とバイオ後続品からRMPの策定が求められている。

引用:独立行政法人医薬品医療機器総合機構 「医薬品リスク管理計画指針について」
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0002.html

 

医薬品リスク管理計画(RMP)の提出品目一覧については 医薬品医療機器総合機構HPへ
リンク:https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0001.html

 

 「ロ」は「調剤前に医薬品選択に係る情報の説明・指導」に対する報酬で「選定療養の対象となる患者」「医薬品供給問題により銘柄変更により調剤される患者」と2つの場面が異なる患者に対する説明・指導を対象としています。「選定療養の対象となる患者」に対する算定ですが、起点となる「選定療養」は10月から始まる新制度です。当初制度開始後の10月からの算定開始が想定されていましたが、6月3日付の業界紙報道では「ルール上は6月からの(算定も)妨げず」という厚生労働省への取材記事を掲載しています。しかしながら疑義解釈といった公式な発表ではないため、今後の情報収集が必要になってきます。(※)

※「疑義解釈を待つ」または「厚生局に確認をする」などを行った上で、算定開始をご判断ください。

 

3.疑義解釈通知に目を通し、算定要件を深堀する

 新設報酬は「算定タイミング」「算定ケース」「併算定」など様々な疑問が生じます。それらの一部は「疑義解釈」によって見解が発表されます。3月28日に公表された「疑義解釈その1」に特定薬剤管理指導加算に関する解釈が出ていますので確認し理解することが求められます。

  令和6年3月28日 疑義解釈その1
  https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001237675.pdf

 なお、疑義解釈ではありませんが、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)」の特定薬剤管理指導加算3に関する事項に「要件を満たす場合、特定薬剤管理指導加算1及び特定薬剤管理指導加算2を算定できる」(併算定可能)に関する記載も出ています。

  診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)
  https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001252056.pdf

 

 

筆者:駒形公大(株式会社Kaeマネジメント 代表取締役 / 2025年戦略推進本部長)