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シリーズ・令和6年度調剤報酬改定からこれからの薬局づくりを考える           第12回「環境の変化を知り、これからの薬局を考える」

2024.06.28

 

  新報酬への対応に追われながらも、「持続可能な社会保障制度」に向けた環境の整備は進められていきます。2025年というターゲットの次は、高齢者数がピークを迎える2040年です。環境の変化を知ると、そこに向けて何が必要なのかが見えてきます。おのずと調剤報酬改定の方向性も見えてきます。

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【目次】

  1. 残された24年度改定対応を理解する
  2. 人口減少・超々高齢社会
  3. 体制評価からアウトカム評価へ
  4. 生き残るための薬局作りを考える

 


1.残された24年度改定対応を理解する

 6月から新報酬の算定が始まりましたが、これまで説明してきたように24年度改定は「6月」と「9月・10月」の2か所に大きなポイントが置かれています。6月は言うまでもなく「新報酬の始まり」です。9月は「地域支援体制加算」「医療DX推進体制整備加算」の経過措置終了の月です。地域支援体制加算の加算1・2を届け出ている薬局にとって、経過措置内に新実績要件をクリアできるかが、改定結果を大きく左右します。医療DX推進体制整備加算は多くの薬局にとってプラスとなる評価ですが、最も重要な「マイナ保険証利用率」が10月の算定から施設基準に盛り込まれています。具体的な目標値の発表は現在ありませんが、継続して算定を行うには利用促進に向けた取り組みを続ける必要があります。

 10月には医薬品選択に伴う「選定療養」制度が始まります。後発医薬品選択を推進するための施策ですが、先・後発医薬品の価格差が大きな品目で効果が予想される一方で、価格差が極めて小さな品目では選択のカギとなる「自己負担」がほとんど発生しないという課題を抱えています。現状の後発医薬品調剤体制加算は「金額ベース」ではなく、「数量ベース」の評価です。医療費抑制の効果は少ないですが、調剤数量が多い品目が先発医薬品へ逆行し調剤率の低下というリスクが見えてきます。

 

2.人口減少・超々高齢社会

 「調剤報酬の今後」「これからの薬局作り」を考えた際に、在宅医療への取り組みは必須です。それは想定される日本の未来からも発せられているメッセージです。日本の人口は2008年をピークに減少が続き、2050年には1億人を下回ると言われています。一方で高齢者数は2040年のピークまで増加します。超高齢化は高齢化率「21%」と定義されていますが、すでに日本の高齢化率は「29%」であり、定義するならば「超々高齢社会」です。2040年には「35%」まで増加すると推定されています。人口減少は外来患者数の減少にもつながります。厚労省資料では、日本の大半で2020年までに外来患者数がピークを迎えたと公表しています。一方で、高齢化に伴い「在宅医療」(訪問診療)を受ける患者数は増加していきます。外来患者とは逆に、大半の地域で2035年以降が在宅患者数のピークとしています。

 

出典:我が国の人口について|厚生労働省

出典:第16回 第8次医療計画等に関する検討会|厚生労働省

 近年の薬局・薬剤師に関する議論の中で「薬局・薬剤師数」に対し「過剰になる」という議論を耳にしたことがある方も多いと思います。一方で2040年に向けて「在宅医療・介護従事者が不足する」という話も聞いたことがあるかと思います。「過剰」と「不足」という対立の関係にある2つの議論ですが、その解決は薬局業務の「対物から対人」、言い換えると「外来から在宅」への転換と言えるのではないでしょうか。その方法は調剤報酬改定による誘導です。

 

3.体制評価からアウトカム評価へ

 「現在の医薬分業は、政策誘導をした結果の形式的な分業であって、多くの薬剤師・薬局において本来の機能を果たせておらず、医薬分業のメリットを患者も他の職種も実感できていない」。こちらは、平成30年の厚生労働省部会でまとめられた資料の一部です。「患者のための薬局ビジョン」に示す2025年が目前に迫っています。その間に、「健康サポート薬局」「薬局認定制度」「地域支援体制加算の新設」と様々な改革が行われてきましたが、その結果として先の厳しい指摘が見直されるような評価は得られたのでしょうか。令和7年からは改正医療法により「かかりつけ医機能」が始まります。いま真に問われていることは「機能」や「体制」ではなく、「何をしてきたのか」という結果、つまり「アウトカム」なのではないでしょうか。

 

出典:第1回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ|厚生労働省

 

4.生き残るための薬局作りを考える

 薬局運営の継続には「処方箋」が必要です。多くの薬局は門前医療機関に依存した運営状況となっています。医療機関の継続に未来は大きく左右されるという事実と向き合うことが大事です。企業として継続していくためには、「門前医療機関」に頼らない経営、多店舗展開が求められます。利益は「調剤報酬」の算定です。算定要件は明確に示されており、定められていないことは報酬化できません。1枚当たりの処方箋における利益(報酬)は「有限」です。調剤報酬は「社会保障制度の効率化・適正化」のために見直しが行われます。報酬の設定は国の求めるビジョンとも置き換えられます。調剤報酬は薬局運営のための報酬ではなく、社会保障制度上の仕組みです。「重複投薬」「漫然投与」「OTC類似薬の保険外し」「セルフメディケーションの推進」と現在問われている課題を再度思い浮かべていくと理想とする医療・薬局像が見えてきます。人口動態や財源の視点からも求められる未来は明白です。「変化を恐れる」のか、「変化に対応」するのか。持続的な薬局作りのカギなのではないでしょうか。

 

 

  EM  

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筆者:駒形公大(株式会社Kaeマネジメント 代表取締役 / 2025年戦略推進本部長)