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令和6年度報酬改定を踏まえた運営指導(旧実地指導)のポイント概要 本格化される指導に備えた準備項目とは?
2024.07.23
令和6年4月の障がい福祉サービス等報酬改定、処遇改善加算の計画書送付対応を終えたばかりですが、“運営指導”の準備をしていくことが必要になってきました。
今までは、“実地指導”と呼ばれていましたが、令和6年3月5日付け障発0305第2号で、厚生労働省から「指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について」の一部改正について事務連絡があり、“運営指導”と名称変更となりました。
また令和6年7月頃から運営指導を開始していきます。という行政からの通知も見られます。日々、ルールを守って運営していたとしても、3年に1度の報酬改定の変更点や事務連絡の内容を見落としていて、指導を受けるケースも考えられます。
今回は、指導に関する内容と令和6年度報酬改定後に注意しておくポイントをお伝えします。
【目次】
1.運営指導(旧実地指導)とは
運営指導の目的は、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、指定障がい福祉サービス事業者等に対し、対象サービス等の質の確保、並びに自立支援給付等の適正化を図ることを目的に運営指導を行われます。
事業所等の運営が健全かつ円滑に行われるよう、関係法令に基づき自立支援給付等対象サービス等の内容、及び自立支援給付費等に係る費用の請求に関する指導を行われます。
また業務管理体制の適正化を図ることを目的に、業務管理体制の整備・運用状況も確認されます。
運営指導は、おおむね3年に1度原則、実地で行われます。
ただし運営等に重大な問題があると認められる場合、例えば毎年1回は運営指導を行う等により、指導の重点化を図るものとされています。
運営指導は、大まかに下記のような流れで行われます。
1.(県)運営指導実施の通知送付
2.(事業者等)事前提出資料の提出
3. 運営指導
4.(県)結果送付(2 か月後目安)
5.(事業者等)改善報告書の提出(1か月後)
※ 運営指導後に受けた指摘で気づいた点等は、指導結果の通知を待たずに改善できるところは改善することが望ましいです。
運営指導当日の所要時間は、2時間~4時間です。当日の流れは下記のようになっています。 (一例)
1.名刺交換・挨拶
2.施設内状況確認 ・届出図面と現況が一致するか
(例:施設内見学、事務所見学等)
3.利用者の選択の参考となる資料は掲示されているか
(例:運営規程、重要事項説明書、利用契約書ひな形、各種マニュアル類等)
4.衛生管理は適切か
(例:手洗い場に石けん、ペーパータオル、消毒液の設置等)
5.非常災害対策はされているか
(例:非常設備(消火器等)の設置、非常災害対策計画の策定、避難経路の掲示等)
6.書類確認及び聞き取り
(例:セルフチェックシート等の事前提出資料に基づき、関係書類を確認等)
また関係書類等を基に説明を求め面談方式で行われます。なお、施設・設備や利用者等のサービス利用状況以外の実地でなくても確認できる内容については、情報セキュリティの確保を前提としてオンライン等を活用される場合もあります。
2.運営指導の方法と確認される項目とは
〇運営指導の方法
確認される文書は、原則として運営指導の前年度から直近の実績に係る書類とするとともに、利用者の記録等の確認は特に必要とする場合を除き、原則として3名以内とされています。
また事前又は当日に提出を求める資料の部数は1部とし、自治体が既に保有している文書は、再提出を求めず自治体内での共有を図ることを原則とされています。
さらにICTで書類を管理している障がい福祉サービス事業者等に対しては、適宜パソコン画面上で書類を確認する等、障がい福祉サービス事業者等に配慮した文書確認の方法についても留意されるものとされています。
また同一所在地や近隣の障がい福祉サービス事業者等に対しては、適宜事業者の状況等も勘案の上、できるだけ同日又は連続した日程で行われる可能性があります。
〇運営指導で確認される項目
「主眼事項及び着眼点等」に基づき、関係書類を閲覧し、面談方式で行われます。
「主眼事項及び着眼点等」における下線を付した項目(以下「標準確認項目」という。)以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとするとともに、「標準確認文書」で確認することが原則とされています。
※運営指導を進める中で不正が見込まれる等、詳細な確認が必要と判断する場合は、「標準確認項目」及び「標準確認文書」に限定せず、必要な文書を徴し確認するものとされています。
運営指導における確認される事項は下記のようなものです。
(1)個別支援計画(平 18 厚令 171 第 58 条ほか)
○ サービス管理責任者が計画を作成しているか
○ モニタリングを行い、記録を作成、保管しているか
○ 計画原案の内容について利用者又はその家族に説明し、同意を得ているか
など一連の流れを確認されます。
(2)人員配置基準等 (平 18 厚令 171 第 78 条、平 18 厚令 171 第 66 条ほか)
○ 管理者が、従業者及び業務の管理その他の管理を一元的に行っているか?名義のみの管理者ではないか
○ 多機能型において、複数のサービスを兼務している従業者は、就業時間の合計が1日に勤務すべき時間に達していたとしても、サービスごとに必要な職員数を配置しているか
(3)会計の区分(平 18 厚令 171 第 41 条)
〇事業所ごとに経理を区分するとともに、サービスごとに会計を区分しているか
〇就労支援等のサービスを実施している場合は、「就労支援の事業の会計処理の基準」に則り、適切に処理されているか
3.令和6年度報酬改定で注意するポイントとは
令和6年度報酬改定では、新たに義務化されたルールについて、未対応の場合は減算となる制度ができました。
その代表項目としては、“業務継続計画の策定等”、“身体拘束の禁止”、“虐待の防止”です。
これら代表項目の注意するポイントは、令和6年5月31日付けで、厚生労働省から「障害福祉分野における手続負担の軽減について(運営指導(実地指導)関連文書関係)」の事務連絡を参考に確認が必要です。
下記、注意するポイントを抜粋したものです。
(居宅介護の例)
26 業務継続計画の策定等 |
(1)指定居宅介護事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定居宅介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じているか。 |
(2)指定居宅介護事業者は、従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しているか。 |
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(3)指定居宅介護事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行っているか。 |
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29 身体拘束等の禁止 |
(1)指定居宅介護事業者は、指定居宅介護の提供に当たっては、利用者又は他の利用者の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(身体拘束等)を行っていないか。 |
(2)指定居宅介護事業者は、やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しているか。 |
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(3)指定居宅介護事業者は、身体拘束等の適正化を図るため、次に掲げる措置を講じているか。 |
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① 身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能。)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図っているか。 |
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② 身体拘束等の適正化のための指針を整備しているか。 |
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③ 従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施しているか。 |
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35 虐待の防止 |
指定居宅介護事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次に掲げる措置を講じているか。 |
① 当該指定居宅介護事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能。)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図っているか。 |
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② 当該指定居宅介護事業所において、従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施しているか。 |
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③ ①及び②に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置いているか。 |
運営指導に関する目的や流れ、確認される項目をいくつかの例をお伝えしました。
報酬改定により、運営基準や制度変更も行われている箇所もあるため、改めて報酬改定内容の確認、事務連絡、留意事項通知などもご確認いただく必要があります。
参考通知:
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筆者:日本クレアス税理士法人