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【押さえておきたい新薬情報】経皮吸収型コリンエステラーゼ阻害薬(アリドネ®パッチ)

2024.08.08

 

この記事は…
大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

 

2023年4月、アルツハイマー型認知症(AD)治療薬の経皮吸収型製剤、アリドネ®パッチ(一般名:ドネペジル)が発売されました。軽度及び中等度ADに適応のある貼付剤として、リバスタッチ®/イクセロン®パッチ(一般名:リバスチグミン)がありますが、高度ADに対しては、初の貼付剤になります。なお、経口薬(一般名:ドネペジル塩酸塩)が持つ「レビー小体型認知症」の適応はありません。経口薬と貼付薬で有効成分が異なるのは、ドネペジル塩酸塩の経皮吸収性が劣るため、体内の活性本体であるドネペジルに変更したためです。

アリドネ®パッチは、服薬困難や寝たきりの患者にも有用で、食事や併用薬との服用タイミングを考慮するなどの制約がありません。また、投与状況を視認できるので、介護者による服薬管理が容易になります。経口薬は、コリン作動性の胃腸障害を軽減するため、有効用量ではない3mgから開始しますが、貼付薬は血中薬物濃度の上昇が緩やかなため、軽度及び中等度 AD では、ローディングドーズを必要とせず、経口5mgに相当する27.5mgから開始できます。高度ADの場合には、27.5mgで4週間以上経過後に、55mg(経口10mgに相当)に漸増します。下痢、食欲不振などの消化器症状は1~3%未満と、経口薬と同程度に発現します。製剤は、27.5mg(8.1×8.1cm)、55mg(8.9×13.4cm)で、鎮痛消炎剤のモーラス®テープ(7×10cm)、同L(10×14cm)よりやや小さめのサイズです。適用部位の皮膚症状は、そう痒感(24.9%)、紅斑(24.3%)、接触皮膚炎(12.6%)と高頻度に発現します。連日の貼付・除去により皮膚角質層が剥離し、血中濃度が増加するおそれがあります。このため貼付部位を毎回変更し、同一部位への貼付は、7日以上間隔をあけます。光線過敏症の防止のため、衣服で隠れる部位を選び、剥がした後も貼付部位への直射日光を3週間は避けます。他のコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル塩酸塩、リバスチグミン、ガランタミン)とは併用できません。また、ADによる影響や意識障害、めまい、眠気等などの副作用があるので、自動車の運転等はしないよう指導します。

商品名

アリドネパッチ27.5mg、55mg

一般名

ドネペジル

会社名

帝國製薬株式会社/興和株式会社

効能・効果

アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制

用法・用量

通常、軽度~中等度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、1日1回27.5mgを貼付する。高度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、27.5mgで4週間以上経過後、55mgに増量する。なお、症状により1日1回27.5mgに減量できる

貼付部位

本剤は背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替える

相互作用

主に薬物代謝酵素CYP3A4及び一部CYP2D6で代謝され、コリン作用性薬などとの併用注意がある

薬剤貼付後の注意

貼付24時間後も成分が残存しているため、接着面を内側にして折りたたみ廃棄する。製剤を扱った後は、薬剤を除去するため、手を洗うこと。手洗い前に目に触れないこと

副作用

適用部位そう痒感、適用部位紅斑、接触皮膚炎、下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐など

薬価

27.5mg1枚289.80円、55mg1枚441.40円

使用に際しては、必ず添付文書をお読み下さい。

 

       

 

アルツハイマー型認知症の治療薬

商品名(一般名)

分類

M
C
I

軽度

中等度

高度

D
L
B

剤形、
(貼付剤の面積)

アリセプト
(ドネペジル塩酸塩)

 AChE阻害薬

 

D錠、錠、ドライシロップ、内服ゼリー

アリドネ
(ドネペジル)

 

 

パッチ剤
(63cm2、115cm2

レミニール(ガランタミン臭化水素酸塩)

 

 

 

錠、OD錠、内用液

リバスタッチ/イクセロン(リバスチグミン)

 

 

 

パッチ剤(2.5cm2、5cm2
7.5cm2、10cm2

メマリー
(メマンチン塩酸塩)

NMDA

受容体阻害薬

 

 

 

錠、OD錠
ドライシロップ

レケンビ〔レカネマブ(遺伝子組換え)〕

抗アミロイドβ抗体薬

 

 

 

点滴静注

MCI(軽度認知障害)  DLB(レビー小体型認知症)

 


(筆者)浜田康次 

一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事