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2024年6月改定の影響

2024.08.29

2024年改定は、改定時期が通常の4月から6月に変更される異例の改定となりました。改定内容についても、生活習慣病管理料と特定疾患療養管理料の再編や、医療DXの評価、賃上げを評価するベースアップ評価料など、改定内容が広範に及んでいます。そこで、今回の改定についてクリニック経営への影響を考えていきます。

 

【目次】

  1. 生活習慣病管理料の影響
  2. 医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算の影響
  3. 初再診料・ベースアップ評価料の影響
  4. 処方箋料の影響
  5. 短期滞在手術基本料1の影響
  6. まとめ

 


1.生活習慣病管理料の影響

内科を中心に今改定でもっとも大きな影響をもたらしたのが、生活習慣病(脂質異常症、高血圧、糖尿病)患者の管理に係る点数変更です。政府は、生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点から、生活習慣病管理料について、従来の点数を継承する生活習慣病管理料(Ⅰ)と特定疾患療養管理料からの移行を促す生活習慣病管理料(Ⅱ)に再編を行い、算定要件及び評価が見直されました。特定疾患療養管理料については、対象患者から生活習慣病が除外されました。

生活習慣病管理料を算定するためには「療養計画書」の発行が必要になるため、書類作成を効率よく行うことが重要なポイントとなりました。また、生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)は包括範囲が異なることから使い分けについても、クリニックは頭を悩ませました。そういった一連の影響から、全体でマイナス5%程度の影響が出ているのではないかと考えます。

 

2.医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算の影響

医療情報・システム基盤整備体制充実加算については、オンライン資格確認等システムの導入が20234月に原則義務化されたことを受けて、これまでの体制整備に係る評価から、初診時等の診療情報・薬剤情報の取得・活用に係る評価へ変更されました。あわせて、名称も「医療情報取得加算」に見直されています。

また、新たに「医療DX推進体制整備加算」が新設され、①マイナ保険証の利用率、②電子処方箋、③電子カルテ情報共有サービス、を順次整備することを条件に、初診時に8点が算定できるようになりました。

いずれもDXを進めるための誘導点数として、算定することで点数アップが見込めることから多くのクリニックで算定が行われています。一方で、マイナ保険証の利用実績が10月に始まること、12月からは保険証の廃止が予定されており、評価の在り方が変更になります。

 

3.初再診料・ベースアップ評価料の影響

初再診料については、コロナ禍で外来診療における標準的な感染防止対策を日常的に講じることが必要となったこと、昨今の物価高の影響から職員の賃上げを実施する必要が出てきていることから、初診料が3点、再診料と外来診療料がそれぞれ2点引き上げられました。

また、外来医療、在宅医療を実施している医療機関において、勤務する看護職員、薬剤師その他の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価として、「外来在宅ベースアップ評価料」が新設されました。ベースアップ評価料については、対象スタッフをめぐり検討が行われ、専門的に医事業務を行うスタッフ以外はほとんど対象に含めることができるようになっており、なんとか現場スタッフの不公平感が生まれないような配慮が行われています。ただし、届出に対しては対象スタッフの給与等を計算して、賃上げの計画を提出する必要があるため、その作業を面倒と感じたクリニックは、見送ったところもありました。

クリニック経営への影響に対しては、上昇分をすべて賃金の引き上げに充てる必要があり、実質プラスマイナスゼロとなります。また、これまで見送っていたクリニックも、今度は他院との不公平感を解消するため、遅れて届出、算定するケースも出てきています。

 

4.処方箋料の影響

医療DXの推進(電子処方箋)により効率的な処方体系の整備が進められていることを受けて、一般名処方加算、後発医薬品使用体制加算、外来後発医薬品使用体制加算を引き上げ、それに伴い、薬剤情報提供料(10点→4点)及び処方箋料(一律マイナス8点)の点数が見直されています。

特に、一般名処方加算について、医薬品の供給不足が続いている状況を受けて、治療計画の見直し等に対応できる体制の整備並びに患者への説明及び院内掲示に係る要件を設けるとともに評価が引き上げられています。

処方箋料はほとんどの患者に影響するため、大きなマイナスとなっています。一般名処方加算のアップ分を考慮しても、5点(8点マイナス3点)の引き下げとなっています。

 

5.短期滞在手術基本料1の影響

短期滞在手術等基本料1については、対象手術等の外来での実施状況を踏まえ、適切な評価を行う観点から見直しが行われています。短期滞在手術基本料1について、「イ 主として入院で実施されている手術」と「ロ それ以外」にわけて、ロに該当する手術を行っている場合は、50%のダウンとなり、大幅な引き下げとなっています。そのため、今後は包括から出来高に変更を検討するケースが出てくる可能性もあります。

 

6.まとめ

2024年度診療報酬改定における主な変更点およびクリニック経営の影響は以下の通りとなります。

 

変更点

影響

診療科

生活習慣病管理料

・従来の点数継承する生活習慣病管理料(Ⅰ)と特定疾患療養管理料からの移行を促す生活習慣病管理料(Ⅱ)に再編、算定要件及び評価を見直し

・特定疾患療養管理料は、対象患者から生活習慣病が除外、特処も10点引下げ

・算定には「療養計画書」の発行が必要に、負担増。

・生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)は包括範囲が異なることから使い分けが必要

・全体でマイナス5%程度の影響が出ているのではないか

内科

医療情報取得加算

医療DX推進体制整備加算

・体制評価から情報活用評価へ

・マイナ保険証の利用率、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを順次整備することを条件に、初診時に8

12月からは保険証の廃止が予定されており評価変更に

・マイナ保険証の利用実績が10月から開始

 

全体

初再診料

ベースアップ評価料

・初診料3点、再診料2点引上げ

・外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は初診6点、再診2点引上げ

上昇分をすべて賃金の引上げに充てる必要があり、実質プラスマイナスゼロ

全体

処方箋料等

・一般名処方加算、後発医薬品使用体制加算、外来後発医薬品使用体制加算を引上げ

・薬剤情報提供料(10→4点)、処方箋料(一律マイナス8点)

一般名処方加算のアップ分を考慮しても、5点(8点マイナス3点)の引下げ

全体

短期滞在手術基本料1

「イ主として入院で実施されている手術」と「ロそれ以外」にわけて評価を見直し

ロに該当する手術を行っている場合は50%ダウン。

内視鏡、眼科等

 

 

  EM  

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筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局